- 糸井
- 全体的にかわいい。かわいいですね。
ただの中学生も、
梅佳代さんが、うんだやつも(笑)。
- 梅
- かわいいのばっかりになっちゃった。
パッと撮ったら。
- 糸井
- でも、報道写真だよ、やっぱりねぇ。
ああ、いいなぁ‥‥。
- 梅
- かわいいんです、なんか、みんな。
かわいいって、
すごくパワーあるじゃないですか。
- 糸井
- うん。あるある。
- SWITCH新井さん
- 以前の対談で、糸井さんが梅さんに、
「梅さんには愛があるけど、
情がないね」とおっしゃっていて。
- 梅
- あははは!(笑)
- SWITCH新井さん
- でも、今回の写真を見ると、
情がうまれたような気がするんです。
- 梅
- すっごいおもしろい!
- 糸井
- ああ‥‥たしかに。情が出た。
- 梅
- それは、自分でも思います。
- 糸井
- あ、そう?
- 梅
- うん、まだ写真をはじめたころの
18歳のわたしと比べたら、ぜんぜん。
今37歳なんですけど、
20年も経てば、
そりゃそうだっていうか、
そうじゃなかったら、
逆にちょっとコワイじゃないですか。
- 糸井
- 思うに、被写体に対して
「いいな、おもしろいな、かわいいな」
という感情はあっても、
以前は、もう少し粗末に扱ってたのよ。
- 梅
- なんて言うか、
「パーン!」って感じはあったと思う。
- 糸井
- そうそう。
- 梅
- よくぞわかりましたね、そのこと。
- 糸井
- 今は、手のひらにのせて、こう‥‥
壊れやすいメレンゲみたいなものを
大切に思う気持ちが出てきてる。
扱い方が変わってるんだと思います。
- 梅
- 目が細まってきたというか‥‥。
- 糸井
- そうだね、うん(笑)。
- 梅
- オトナになるにつれて。
- 糸井
- 若いころの写真を見ると、
冷たいっていうのとは違うんだけど、
撮ってるほうも撮られているほうも
子どもだから、「乱暴」だよね。
- 梅
- そういうことです。
鬼だったわけじゃないんだけど‥‥
そういうことです。
- 糸井
- それ、自分でもわかってたんだ。
- 梅
- 子ども同士ってことは、
かなり自分でも思っていたと思います。
でも、もうわたし、子どもじゃないし。
- 糸井
- 子どもじゃないよね。
- 梅
- あんな写真はもう一生撮れないんです、
オトナになったから。
だから、それは、自分でも思ってます。
- 糸井
- 撮れないよねぇ、きっと。
- 梅
- うん。
- 糸井
- なんかもう、
ブツブツ「ぶった切ってる」もんねえ。
- 梅
- ぶった切っても、よかったんです。
- SWITCH新井さん
- それが
梅さんの写真のおもしろさであり、
残酷さでもあった。
- 梅
- 残酷さしかおもしろくないと思ってた、
あのころ。
- 糸井
- へえ‥‥。
- 梅
- 自分でおもしろくないと思った写真は、
別に発表とかしないから、
まわりの人に
「え、いい写真なのに」って言われても、
「フン」みたいな気持ちだった。
- 糸井
- 今なら、世の中のかわいいもの好きが
認めますよ、きっと。
「梅佳代、かわいいじゃない!」って。
- 梅
- ははは。
- SWITCH新井さん
- 国民的な写真家になったんじゃない?
- 梅
- え、ヤバい!
- 糸井
- ははは(笑)
- 梅
- ヤバいヤバい、そんなの。
また国民的写真家の人に見られたら!
- 糸井
- 梅佳代が、
荒木(経惟)さんの『さっちん』が
好きだっていうのも、よくわかる。
荒木さんは『さっちん』のときには、
かわいいのと、ぶった切るのと、
両方を持ってて、
どっちでもない何かがあったと思う。
- 梅
- ああ、そうかも。
- 糸井
- あのとき荒木さんは、
それなりに歳を取ってたはずだけど、
そのあとも荒木さんは、
「ぶった切る」成分を残しながら、
ずっと、やってきてますよね。
- 梅
- うん。
- SWITCH新井さん
- 荒木さんの「残酷な部分」というのは、
(奥さまの)陽子さんに対しても、
ある部分で、持っていたと思うんです。
で、そこに、すごいエネルギーがある。
- 糸井
- 梅佳代は、子どもじゃなくなったんだ。
- 梅
- それはそれでいいっていう感じです。
- 糸井
- 情が出てきちゃったから、
撮らないで終わりにしちゃったりとか、
そういうこともあるんだろうな。
- 梅
- でも、またいつか、ぶった切る時代に
入っていくこともあるかもしれないけど。
<続きます>
2019-01-12-SAT
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