- SWITCH新井さん
- 日常からテーマや好きなものを見つけて撮る、
という写真のスタイルが、
梅さんと糸井さんに共通すると思うんです。
- 糸井
- いや、カメラマンじゃないですし、
ぼくの写真スタイルってないですよ(笑)。
そもそも写真、キライだったんです。
- 梅
- へぇ?
- 糸井
- ほら、昔、大勢で旅行に行ったりすると、
カメラを持ってるやつが、
いつでも黙って遅れて来るんです。
それにいつも腹が立ってたんです!(笑)
- 梅
- そうなんや(笑)。
- 糸井
- みんなでテンポよく行動してんのに、
大げさなポーズで、
遠くの山かなんか撮ってんのが‥‥。
- 梅
- あはは(笑)。
- 糸井
- とくに、オートフォーカスが出る以前は、
時間がかかるんです、1枚撮るのに。
- 梅
- マニュアルでピントとか合わせるから。
- 糸井
- それで、カメラがキライだったんです。
敵意さえあったと思う(笑)。
- 梅
- へぇー。
- 糸井
- だから、うちに犬が来て以後ですよね。
自分でも撮るようになったのは。
ちょっと残念なのは、
ブイヨンが来て間もないころの写真が、
ぜんぜんないんですよ。1年くらい。
- SWITCH新井さん
- まだ写真をやってなかったから。
- 糸井
- でも今はブイコという新しい犬が来て、
毎日、山ほど撮ってます。
ブイヨンのときの「ぜんぜんない」と、
ブイコの「山ほどある」のちがいって、
その間に、写真のこと、
キライじゃなくなったからでしょうね。
- SWITCH新井さん
- どうして嫌じゃなくなったんですか。
- 糸井
- やっぱり‥‥死んじゃったとしても、
「写真があることで生きてる」から。
おじいちゃんの写真集だってさ、
あれ見返したら、
じいちゃん、生きてるじゃない。
- 梅
- うん。
- 糸井
- それって、すごいことだなぁ‥‥って。
いっぱい撮っといてよかったと思う。
要らない写真って、あまりないんです。
ダメな写真も含めてね。
- SWITCH新井さん
- それは、かけがえのない日常が、
そこに記録されているから、でしょうか。
- 糸井
- 人類史の一部分だから、大袈裟に言えば。
どんな些細なものでも、できごとでも、
すべては神のもとにあった‥‥
みたいな感じが、してくるんですよね。
- 梅
- 糸井さんが写真が嫌いだったって、
おもしろいですね。
- 糸井
- あと、「いい写真」と言われる写真を、
あんまり信用してなかった。
- 梅
- それはわかります。
- 糸井
- 写真の雑誌に載ってる、
えらい先生が選んだ「いい写真」とか、
祭りで水撒いて子どもがワァみたいな、
そういうのを「いい」とは思えなくて。
- 梅
- うん、うん。
- 糸井
- なんて言ったらいいのかな、
「ほーら、いい写真でしょう?」って
押し付けられてる気がして。
- SWITCH新井さん
- ご自分の思う「いい写真」と、
権威ある人が選んだ「いい写真」との
ギャップ‥‥ですか?
- 糸井
- いい写真って、いい写真に向かって、
シャッター押してる感じがするのかな。
- SWITCH新井さん
- 褒められたい気持ちが、出過ぎてる?
- 糸井
- 役者の演技でも、
「いい演技」に向かって演技をすると、
「これがいいんだろう?」になって、
結果、いい演技に見えないんですよね。
- 梅
- なるほどー。
- SWITCH新井さん
- カメラマンって、
いわゆる決定的瞬間を撮りたがるけど、
梅さんの写真って、
別に決定的瞬間ではないというか‥‥。
- 糸井
- そこからちょっとずれてるよね(笑)。
- 梅
- ああー。
- SWITCH新井さん
- 梅さんの最新作、見てみましょうか。
- 糸井
- うん、見たい見たい。
- 梅
- 能登に帰ったときに撮った写真で、
大したものじゃなくって、
ちょっと、恥ずかしいんですけど。
- 糸井
- 大したもの感のないのが、
梅佳代さんのいいところだからね。
- 梅
- 地元で、ちょっと撮っただけです。
中学生、顔がかわいいかったから。
- 糸井
- 女の子みたいな顔してる男の子だ。
- 梅
- ほんとだー。女の子に見えるね。
- SWITCH新井さん
- これ、地元の柳田村、ですよね。
- 梅
- そう。
野球部が、10人で練習やってた。
人数が少ないから、
誰かがちょっとでも怪我したら、
試合出れんくなるみたいな感じ。
- 糸井
- いいねえ。
- 梅
- これとかも。
- 糸井
- ああ、うんうん。かわいいねぇ。
- 梅
- こっち、わたしのうんだやつ。
- 糸井
- ああ、かわいい。うんだやつも。
<続きます>
2019-01-11-FRI
2019-01-11-FRI