2006.11.17, Fri

星野源さん

星野 じつはぼく、タムくんには
まだ一回しか会ったことがないんですよ。
ほぼ日 え、そうなんですか。
じゃあ、イベントのときに
プロモーションビデオのことを
お願いしたときだけ?
星野 そうなんですよ。
だから、作品についての
細かいディスカッションみたいなことは
じつはほとんどしていないんですよね。
でも、なんていうんですかね、
タムくんの、勘のするどさみたいなことなのかな。
タムくんが『インストバンド』を聴いて、
「だいたいできた」って言ったときに
大丈夫だっていう思いがあったんです。
ほぼ日 そういう意味でもやっぱり、
星野さんとタムくんには
なにか通じるものがあるんでしょうね。
星野 最近、ぼくらは映画のサントラの仕事を
やらせてもらっているんですが、
曲をつくる時に、一番最初に映像を見て
そこからの何時間かっていうのが、
アイディアの生まれるポイントなんです。
見たあとで時間を空けてしまうと
チャンスを逃しちゃうというか、
離しちゃうんですよね、イメージを。
ほぼ日 もととなる作品に触れた直後の
何時間かが勝負なんですね。
星野 だからたぶん、タムくんに
最初に「インストバンド」の曲を聴いてもらったとき、
「つかんだ」「こういうイメージでいこう」
っていうのが、曲を聴いた時点で
あったんだと思うんですよ。
ほぼ日 うーん‥‥なるほど。
タムくんももちろんすごいですけど、
言葉を交わさずにそこまでがわかる
星野さんもすごいですね。
星野 あと、やっぱり、タムくんだから
ああいうやり方ができたんだと思うんです。
よく、「作品と人は関係ない」っていう
言われ方をすることがありますよね。
たとえば凄く性格の悪いミュージシャンが居て、
でもその人の作る曲はよく出来ているんです。
しかもよく売れる。すると、
「音楽がよければ、人がダメでもいいじゃない」
みたいなことをいう人が出て来るんですよね
でもぼくはそんなことはない気がしているんです。
けっきょく最後は、「人」なんじゃないかなと。
その人の人格と作品が離れているものは
魅力的じゃないなと思ってしまうんですよね。
タムくんはそこがすごく近いような気がしていて。
タムくんの人となりが作品に出ているというか。
すごく、信用できる、
というと言い方が足りないかな。
タムくんのマンガは安心して読めるし、
そのタムくんの人と才能みたいなものに
毎回、驚かされるというか。


『マムアン』より
ほぼ日 なるほど。
星野 タムくんと会ったときのイベントで、
ひとつ忘れられないことがあったんですよ。
そのイベントで、
タムくんの本やDVDを買ってくれた人に
タムくんがサインをしていたんですけど、
そのときに彼はこう言ってたんですね。
「日本人にサインを求められるなんて
 すごく幸せ。自分の絵を欲しいって
 言ってくれる人がいるんだったら
 いくらでも描くよ!」って。
「こんな幸せなことはないよ」
って言ってたんですよ。
それってすごいことだなぁと思って。
ほぼ日 そういうタムくんの姿勢は、
タムくんの作品ととっても近い気がしますね。
星野 そうなんですよ。
作品をよくするために
その作品に対して深く考えるっていう人は
すごく多いと思うんですよ。
でも、タムくんはそれとはちょっと違っていて、
「作品をよくするために」というよりも
いい作品を描くということにプラスして、
音楽をやったり、人と会ったり、
違うことをすることによって
自分のおもしろさを拡大していくという感じなんです。
そういう「自分づくり」みたいなことを
ふつうにやっている人って
あんまりいないんじゃないかな。
ほぼ日 そういうひとつひとつの「自分づくり」が
作品につながっていくというのは
素敵なことですね。
星野 はい、そう思います。
もちろん、タムくんがそこまで計画をたてて
そういう方法をとっているわけでは
ないと思うんですけれども。
ほぼ日 自然にやっていらっしゃるんでしょうね。
星野 自然にやっているのがすごいですよね。
ほぼ日 なるほど。
星野 すいません、個人的な印象を
ずいぶんしゃべっちゃいましたけど。
ほぼ日 いえいえ、どうもありがとうございました。
このあと、タムくんに取材する予定ですので
なにかタムくんにメッセージがあれば、
最後にひと言、お願いします。
星野 Wiiを買うかどうか訊いておいてください。
ほぼ日 (笑)
星野 あと、タムくんがぼくらのDVDを見て
すごく気に入ってくれたみたいで、
会ったときに、
「ぼくをSAKEROCKに入れて」って
言ってくれたんですよ(笑)。
ぜひ、今度一緒にやりましょうと
伝えておいてください(笑)。
ほぼ日 いいですね!
一緒に演奏しているのを見てみたいです。
どうもありがとうございました。
星野 ありがとうございました。

(星野源さんへのインタビューはこれでおわりです。
 次回はタムくんへのインタビューをお届けします。
 どうぞ、お楽しみに!)
もどる
© wisut ponnimit / HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN