笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第27回 「ベタ」って、大事です。

鶴瓶 笑いがわからない人のほうが、
おもしろいですよ。
糸井 ちがうところでは、
その人も、
ちゃんと笑ったりするんですよね。
鶴瓶 それで、また、
不思議なところで、笑うんです。

それから、
ベタなことというのは、よく、
「今日の会場は全体がベタな雰囲気やった」
とかいうやないですか。

でも、そこを敢えて笑わさなあかんベタを、
「まぁ、それじゃあ、やろうか」
と、最近は、思えるようになったんです。
糸井 あぁ、なるほど。
鶴瓶 いままでは、
もう、それが絶対イヤだったんです。
でも、ベタって、ものすごい大事です。

こんなこと言うて笑わすのイヤやと思うから、
これまでは、避けてきたわけですよ。

だけど、敢えて、
自分がベタなところをなぞり、
まぁこれはみんなが笑うねんから、
それはもう、
そっちのほうがええねんいうことを、
ようやく、いまは、思える時期ですね。

ベタは、強いですよ。
糸井 ここでみんなが求めてるし、
自分もそんな気持ちになっていいよね、と。
鶴瓶 そうです。
ベタを、ものすごい言えるのは、
タモリさんですね。

タモリさんって、
あんなシュールな人ですよ。
いろんなこともわかってんねんけど、
毎回、「笑っていいとも!」が終わったあとに、
「えー、それでは、新春特別夏休み企画!
 特別ゲスト、福山雅治です!」
って言うてはるのよ。

で、客がギャー言う。

「ちがいますよ?
 おかしいじゃないですか。
 新春特別夏休みゲストって。
 こんなん信じてたら、
 オレオレ詐欺にかかりますよ」

そう言わはって。
だけど、みんな、ワーッてよろこぶんです。
「ありませんよ」って言われても。
それ、もう二年三年ぐらい言うてはりますよ。

それが、すごい!
そのベタが、その場にはいちばんいいんです。
本人は、わかってるのね。

もう百も承知でやってるんですよ。
別に自分がいいたいとかじゃなくて……
あんなシュールな人が、ベタを三年間、
これがいいゆうて、ずーっとやりつづけられる。
ごっつい人ですよ、あの人。

ベタを勇気をもって言える。

ぼくらが横にいてるの知ってますよ、
また言わはるな、と。だけど言う。
そばにいてる人に、おまえらも一緒の仲間だぞ、
ということで言わはるんです。
「また言うてはる」じゃないんです。
そういうすごさなんですよ。

ぼくとかさんまは、
それは絶対、言えないですね。

言えないことで、
ええかっこしてるわけじゃないんですよ。
だけど、おんなじことをなぞるいうことは、
できないたちなんですよ。
まだぼくはヒヨコですね。

だけどタモリさんは、
あないなおんなじところに、
球を、ずっと投げつづけて……。
あの人のことは、そばでいつも見ていて、
この人、すごいなぁって、
もうほんとにそう思いますわ。
  (つづきます)


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2005-01-06-THU

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