笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第15回 ふりかえると、人間ってなんや?

鶴瓶 ぼく、いま、名前、
変えようかな思てるんです。

さっき、ちょうど、
店を予約したんですよ。

何度も行ってる店ですから、
笑福亭鶴瓶やと
わかってもらってると思ってたんやけど、
「もう一度、お名前おねがいします」と言う。

「笑福亭鶴瓶です」と言うたら、
「ショクフク? ショクフク?」て。
俺、どんな人間やねん、
「ショクフク」て……。

「ショクフクテ」と言うてはったけど、
わかってはれへんかったですよ。

「カツゼツ悪いから、学校いこかな思って」
とうちのマネージャーにきくと
「キャッチフレーズ、
 つけはったらどうですか?」と言うて。

でも、
「笑っていいとも木曜日でおなじみの、
 笑福亭鶴瓶です!」
……そんなん、イヤやんか。

最低やろ?
それでわかれへんかったらどうすんねん。
糸井 「まぁ、ピーコさんね?」とか言われて。
鶴瓶 それ、いやや。悔しいわ……。

今日もタモリさんに言われたけど、
俺、この世界に
向いてへんのちゃうかなと思って。
糸井 (笑)え?
鶴瓶 今日の『いいとも』なんかでも、
おもしろい話やということは、
すごいわかってるから、
しゃべってんねんけど、
核が伝わってない。
糸井 (笑)
鶴瓶 お客さんは、
笑ろてくれてんねんけど、
それをタモリさんが見つけて、

「あなた、何を言ってるかわからない。
 自分でたのしんじゃってるよ」と。

そういうことが多々あって、
主語と述語と修飾語が、
もうばらばらなんでしょうね。
糸井 早い話が、
何を言ってるかわからない人?(笑)
でも、今まで、芸人として持ってきた──。
鶴瓶 そう。三十年。三十二年か。
糸井 すごいよね……。
何を言ってるかわかんないけど、
やってきたって……(笑)。
それって、
チンパンジーの絵が、三十何年間、
売れ続けたみたいなことじゃないですか。
鶴瓶 うれしいような。
糸井 ぼくも、自分の仕事では、
似たようなことを思いますからね。
鶴瓶 そうでしょう?

まわりが、
ふりかえったら、人ってなんやねん?

世間に訊いてみなはれ。
「糸井重里って、何ですか?」と。
世間でずっとインタビューしたら、
まあ大半は……埋蔵金でしょうね。
糸井 そうなんだろうね。
鶴瓶 まぁ、コピーライターも
出てくるだろうけど、
穴を掘る人というのが出てくると思う。

なんや、一生訴え続けても、
自分がこうだと思うことは、
全体には伝わらないですよ。
糸井 うん。
鶴瓶さんもぼくも、
夢だとか大志だとかいう核がないんじゃないの?
鶴瓶 そうなんですよ。
これ言うたろって、
そのつど、もう実現してそうなものを
言うてるだけですからね。
それでうまいこと、
逃れてきたっていうのはあります。


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2004-12-24-FRI

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