TBS徳川埋蔵金ライブに向けて。
ヘルメットをかぶった
経済番組をご一緒に。

第14回 怒涛の予習篇(その2)

よっしゃ、予習篇その2です。
前回見てきたような流れに沿ってつづけていきます。
「超能力」から「穴」へと番組の比重が移るなかで、
掘る姿勢、意気込みも変化してきたようで。

「ようするに、ぼくらは、結論を見たいんですよ。
正直な話、黄金が出てくるとか出てこないは
問題じゃない。掘っていったら大きな箱があって、
開けてみたら『ご苦労さん』と書かれた
手紙が入っていたということでもいいんです。
とにかくこれだけの洞窟やら何やらは
いったい何なんだ、という結論が知りたいんです。
チームは番組をつくるためという以上に、
その結論を見たいんだと思うんですよ。だから
それに行き着くためには、ある程度じゃみんなが
固有名詞を捨てちゃってるところがありますね。
『赤城山埋蔵金発掘プロジェクトチーム』という
チームの名前はあるけれど、それぞれの個人の名前は、
ある瞬間には、なくなっちゃうんです(d)」



「パチンコでがんがん金つっこんで
フィーバーを待つ人みたいなもんで、
1万円もつっこんだら、もうやめられないんだよね。
博打で負けてるときにそっくり。ただ、
テンパイはするんだよ、しょっちゅう。
テンパイはするわリーチはかかるわで、
どんどんつっこむ金はふえていく。
パチンコなら、もう3万円くらいは
つっこんでる感じだよね。そのうえ、
これを応援してくれる人たちまで出てくるわけだよ。
テレビを見てますよ、頑張ってくださいって。
そうなると、このつっこんだ賭け金は
何倍、何百倍にもしてかえしてみせたいと
思うようになっていくんだよね。
『あんなもの出るわけない』
と言われている時には、それに対する
『よーし、目にもの見せてやろうじゃないか』
みたいなのがあったけど、
今はそんな強気なものじゃなく、
今ここでやめると、これまでの作業や、
発見してきた木組みや穴がむだになっちゃうよ
っていう気持ちですね(d)」




[5回目発掘]

こうしてはじめられた第5回発掘(92年2月開始)では、
すっかりおなじみになったユンボで
穴は黙々と掘りすすめられていきました。
ところが発掘3日目に降雪により作業が中止される。
一時中断の中、現場脇のプレハブ小屋で
埋蔵金情報を整理する会議が行われます。

よっしゃ、ここから相当重要っすよ。よくきいてね。
「幕末に、外国の圧力と反幕府勢力が迫る中で,
徳川幕府は膨大な軍用金を、
奪われないようにあるいは将来のために隠した」
これが埋蔵金伝説の大もとなのですが、
この徳川埋蔵金伝説、とひとくちに言っても、
赤城山内だけで、いくつもあるんです。
つまり、埋蔵候補地は無数に存在している。

当初のこのプロジェクトでは、
それらの伝説のうちのひとつである、
水野智義家に脈々と流れる伝承をもとに、
その付近を発掘していたのですが、
水野家に伝わる「物証」を細かに検証していくと、
主に2つの疑問が浮かび上がってきました。

疑問1 
「隠したしるし」として水野家に伝わる 
「黄金の家康像」は紛失され、
写真が残っているのみである。
しかも、もしこの像が実在したとしても、
なぜ埋めた側は見つかる手がかりを残すのか?
(→純金とされたこの「黄金の家康像」は、
  のちに銅製で、しかも、発掘地とは
  異なる場所で出土したと判明する)

疑問2
「実は埋蔵作業がされたであろう」
という推理の源であった開墾作業の記録資料が、
あまりにも詳細に記されすぎている。つまり、
いかにも埋蔵金だと思われるように作られすぎている。
本気で200兆の軍用金を隠す事業だったならば、
そのような記録にはしないのではないか?

つまり、これらは、
「この穴はダミーなのではないか?」
という方向の疑いです。こう考えて、
またもや転換点が訪れるんすね。
そうして、謎解き歴史伝奇ロマンから
もう一歩進んだ地点に到達するのだった。
当時darlingはこんなことを喋ってるよ。

「赤城山に埋蔵されているのはただの宝じゃないんだよね。
これは軍用金なんだ。幕府再興のため、
新政府を転覆させて新政権を樹立させるために
隠された御用金なんだ。ぼくたちはそのことを
少し甘く見すぎていたのかもしれない。
埋蔵金を埋蔵した人たちは大変な決意をして、
大変な目的のために御用金を隠したわけですよ。
埋蔵金のいちばん重要なコンセプトは、
それが軍用金である、ということです。
つまり、パズルを解いて答えを出した人に
それを差し上げますっていうクイズじゃないわけですよ。
正直言って、ぼくらはクイズを解くように
埋蔵金を探していたと思う。机の上でクイズを解けば、
いちばん知恵のあるやつが掘り当てるものだと
思っていた部分がありました(d)」
 
つまり、より深く本気になった。
スタッフ全員が埋蔵金を埋めた奴の
立場に近づこうとしてるんだ。 



「軍用金、つまり戦争に使うお金ですよね。
ぼくらはつい個人のレベルでものを見ちゃうけど、
国家が国家の目的のために隠したものだと考えれば、
相当のことができたはずなんです。
乱暴な言い方だけど、
10人や20人が工事で死んじゃったって
かまわないわけですよ。たとえば江戸城の石垣を見ても、
あれだけ大きな石をそろえて積み上げるっていうのは
大変な作業です。でも、国家の仕事となれば、
簡単じゃないかもしれないけれど、
やってしまうわけでしょう。江戸城の石垣に比べれば、
赤城山のトンネルは仕事が粗い。
誰かに見せるわけじゃないし、緊急の仕事
だったからということもあるのでしょうけれど。
それに、佐渡の金山を見てもわかるんですが、
当時の人たちは相当の技術を持っていたんです。
こんな50メートルのあたりで序の口だっていうのが、
佐渡の金山を見るとわかりますよね(d)」

つまり、謎解きに夢中になればなるほど、
間違ったものしか見えてこないのではないか?
という考えが進んでいったわけだね。
そこで、埋蔵金プロジェクトチームには
どういう道が残されていたのか?
 
「目の前にある穴だけが信じられる事実なんです。
これまでに根拠とされてきた家康像だとか
銅版だとか、地図だ記号だというものが
気持ちよく否定されたことで、
謎解きに頼る発掘が、
惑わされるもとだということが確信できて、
とてもよかったと思います(d)」

つまり、目の前の事実に戻るっちゅうとこっすね。
職人っぽくなってきた。darlingは、同じ時期に、
こんなこともつぶやいてる。

「ぼくらは伝説を当てにしてない部分があるんです。
僕らが今やってるのは、
現実に出てきた穴の行方を追うこと。
力仕事で掘って出たものだけを信じる、
ということでしょうか(d)」

ナレーションで入る「世界初の土木番組!」は、
もう本気なんだろう。大工の人って知的だし、
変な偏見から抜けてていいんだろうね。

そんで続けていったら、また、
その現場にはものが出る出る、物証の宝庫。
針金が巻きつけられた木、丸太、壁、穴。
しかし、かき出して泥水が穴の底に
流出する上に、雪も降ってきた。
疲労も限界っていうことで、発掘作業を
中断せざるを得なくなったのでした。

「今回はこれまで以上に
大きな収穫があったと思います。
第一に、われわれを含む発掘者以外の者が
地下に入っていたことがはっきりしました。
そしてそれらのものを穴に隠すという周到な作業、
縦穴の深さと大きさを考えると、この場所に
国家を転覆させるくらいの大仕事がしてあったと
結論づけてかまわないと思います(d)」

中締めとして終了した。もちろんスタッフ全員、
「次こそはやってやる!」と思っていたんでしょう。
埋めた側への友情みたいなのも、あったかもしれないね。
「お前らもよくやった。俺らもやるぜ」みたいな。



[6回目発掘]

第6回発掘は、92年7月にはじめられました。
ぼくは当時、中学3年っつうところです。
クラリネットを吹き終える前あたりっすね。
8月の吹奏楽コンクール終了&引退→ご隠居、
という感じの頃。
けっこうむきになって練習してたけど、
3年間、ブラスバンドでは芽が出なかったなあ。
コンクール前には、けっこうむきになって
練習したのにな。悔しかった。
いつももらってたのは、努力賞ってやつ。とほほ。
吹奏楽業界関係者があまりもらいたくない賞、努力賞。
金銀銅の次の、ブービー賞なのよ。
予選なのによお。砕けた夏だった。

そんないっぽうで、埋蔵金スタッフはその夏、
もう一度赤城に集結してたんっすね。
動機も方針も十分な夏だったんだ、埋蔵金は。
ターゲットを4か所にしぼり、新型機械の
「テレスコピック・クラムシェル」
(詳細は謎だけど、たぶんすごそうだね、名前からして)
も導入して、準備万端。そしたらまた出たんだ。
すっげえおっきいトンネルが。これが
赤城山埋蔵金プロジェクト史上最高の穴、
名づけて「素晴らしい穴」の登場であった。

あ、この「素晴らしい穴」というのは穴の名称です。
darlingがこうやって命名した穴は
ずいぶんたくさんあります。他には

「見事な穴」
「石坂さんが俺を殺そうとした穴」

といったものがあり、すべて正式名称。
「石坂さんが俺を殺そうとした穴」は、
タレントの石坂浩二氏がツルハシで天井を崩し、
darlingの頭に土が落とすという
事件がもとに名づけられたんだって。
事件後darlimngは、
「石坂さん、俺を殺そうとしたな!」
「個人の記念のために命名したわけではない」
とわめき、無理やりに正式名称として
認めさせたそうです、うーむ。

まあ、ともかく、地底に
最大で高さ5メートルものトンネルが出現したのですが、
しかし、またも時間切れがやってきたんだね。
darlingはこのようにコメントしている。

「いいなあ。これ。
今、地下50メートル以上のあたりにいます。
このトンネルはわれわれが掘ったものではありません。
詰まっている粘土状の土を取り除いていったら、
このようなトンネルになってしまったのです。
これでいよいよ金塊なり法馬金が
あるかと思ったのですが、もちろんそんなに
甘いものではありませんでした。今回はここまでで
タイムアップとなってしまいましたが、
この先に続く横穴には、
これまでにない感触を持っています」



[7回目発掘]

第7回発掘は92年11月下旬、こりゃまたすごいよ。
題名は『最終決戦』。最終『兵器』も登場した。
世界に2基しかない高精度の空中探査システムっす。
カナダ・シントレックス社製。ヘリコプターに搭載し、
地下100メートル以上の地層から、
様々な鉱脈や資源を発見するという、最先端の機械だ。
しかも、世界で2基だ。ここと、あと一つだけだよ。
そこまでするんだぞ、盛り上がってきたねえ
(俺、こんなことばっか言ってるな)。

「埋蔵金があるかないかは別にして、
このトンネル群を掘った当時の人たちがここに投入した
労力と精神力とを考えると、たとえば
ぼくらがこの穴を掘り出した苦労なんて、
ほんのわずかなものなんですよ。
今は機械も使えるし、発掘の現場は
こんなに広々としてるけど、これは本来は
洞窟の状態だったわけでしょう。これがもう、
悪戯じゃ掘れないものだっていうことは、
ほんのわずかとはいえ、
僕らの労力や精神力というものを振りかえれば
わかってくるんです。そうすると、
この穴を掘った人たちの膨大な労力と精神力の重さに
見合ったものが、天秤の向こう側にないと、
この仕事はつりあわないんですよ
ぼくらはこの発掘を、
やめようと思えばやめられるんです。
ぼくらの労力と精神力は、
テレビを見ている人たちの
『ああ、おもしろかった』という言葉があれば
つりあいますからね。けれども、
テレビの企画でもなく、鉱山があるわけでもなく、
こんなところで穴を掘った人たちが、
かつていたわけです。
その彼らの『仕事量』につりあう分銅は
何かと考えたら、ぼくには、
『あるとしか言えない』んですよね」

そんな気合いの初日、作業一日目の夕方に、
何と赤土の奥からは、人によって削られたかのような
石垣が出土しました。
「あった!」
「ついに出ちまった!」
そこでとりあえず作業を終了させる。

「いやあ、あの時は、『絶対』という言葉を誰も
口に出さなかったけど、身体中から
『絶対』という文字が内出血して、浮き出てたよね。
もう高揚感というか、
それまでの疲れが一緒になったたかぶりというか、
全部それが内出血状態でしたね。
あの日はさっさと作業を終えて、ホテルに帰って、
飯も食わずに汚れた服のまんまでベッドの上に
どすんと横になって『はあ……』ってひとりで
ため息をついてたなあ。で、事務所のやつと
打ち合わせがあることを思い出して
電話とかしたんだけど、その時につい、
『出そうなんだよ』って言いたくなるんだよ。
でも、何というか、ひとことでも話すと
内出血しているところからたまっているものが
噴き出しちゃうような気がして、
結局喋れなかった。
もう、たまらない一夜でしたね(d)」

で、翌日。作業が再開されました。
でも見つからなかったんですね、残念ながら。
大きな穴の横とかいろいろ探しても、ない。
その後、空中探査もいい波を示したが、
ものは、でてこない……。


[8回目以後]

ぼくが高校行ってた頃の第8回、第9回発掘ともに、
同様の結果でして、そして、現在に至ります。
ぼくももういつのまにか22歳になってたよ。
以下は、darlingが第8回目発掘を前に
おしゃべりしてたものです。

「ぼくは夢を信じるほうなんです。
寝て見る夢ね。
沈没する前にネズミが逃げ出すっていう
話があるでしょう。あれと同じように、
『ぼくは知らないけど、
 ぼくの身体は知っている』という
期待があるんです。
無意識が知ってることってありそうで。
だから夢で何かが判断できたらいいなあ、と。
そういうことでこの発掘を何とかここまで
持ってきた『自分の運の良さ』みたいなことは
信じていますね。まあ、たくさん失敗もしましたし、
不運なこともありましたよ、もちろん。
でも、失敗や不運は成長させてくれるからね。
成功はその人のステージを変えるけれど。
でも、失敗をしていない、
不運な目に遭っていないと、その舞台で
思いっきり自分を出すことはできませんから」


こんな経緯で今回につながってると考えて、
あとは現在行われている内容を追っていけば、
一応大晦日に向けての予習は大丈夫だ、
という具合になってると思います。
あわただしかったけど、予習篇はここまでっす。
なぜなら、もっともっと伝えることがあるから、です。


(つづく)

1999-12-15-WED

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