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こんなタオルを探してたんだ!
赤ちゃんからお年寄りまで満足する、
「やさしいタオル」とは

「ガーゼ+パイル」のタオルが
あんまり見かけられない理由があった!


ほぼにちわ。タオルチームのモギモギコです。
 革命的に<やさしいタオル>をほぼ日で作ろう!
 というこのプロジェクト、
 ご報告も第4回目になりました。
 いまも、工場では、<やさしいタオル>が、
 一枚一枚、産声をあげているはずです。
 
 前回のご報告では、このタオル作りに
 大きな力を貸してくださった人物、
 ドクター・コットンとの出会いのこと、
 そして、私たちがタオルづくりに
 本気! になった経緯について
 お話しさせていただきました。
 今回は、いよいよ実現に向けてのお話です。
 “片面がガーゼ、片面がパイル”で
 しかも上質! のタオルは、実現に向かうのか?



ドクター・コットンが最初に私たちに
タオルについてのメールをくださってから、
季節はひとめぐりしていました。
ひょっとして、もう、メールをくださったことすら
お忘れかもしれないなと
おずおずと(小心者なのです、わたくし)
電話をさしあげたところ、
ドクター・コットンはお電話の向こうから
元気な声を響かせてくださいました。
連絡、気長に待っていたんですよ、と。

そして(そこからが早かった!)その翌日には、
魚籃坂の「明るいビル」にある糸井事務所まで
さまざまなタオルのサンプルと、
糸の見本などをもってはせ参じてくださいました。

ここで、私たちは、ドクター・コットンに、
私たちの作りたいタオルの条件をお話ししました。

●肌触りがよいこと。
●吸湿性がよいこと。
●使ってるうちに古びないこと。
●洗いやすいこと。
●乾きやすいこと。


そして、革命的に<やさしい>肌ざわりにするため
片面にガーゼを使いたい、
ということも、提案として言い添えました。

ドクター・コットンは、「ああ!」と、
一瞬明るい表情でうなずきました。
そして、落ち着いた声で、
こんなふうに話しはじめました。

「“ガーゼ&パイル”ですよね。
 もちろん、できますよ。
 僕も大賛成です。
 実は、以前、ガーゼ&パイルの
 枕カバーを作ったことがあるんです。
 内側をパイルにして、
 外側をガーゼにしたんです。
 これは、アトピーの方のリクエストで
 作ったもので、
 直接肌に触れる部分をガーゼにすれば、
 刺激も和らげられるし、
 パイルがほどよいクッションにもなる。
 すごく肌に優しいと、評判になったんです」


頼もしい答えでした。
さらに彼は続けます。

「ガーゼ&コットンは、ほんとにいいですよ。
 デザインにも幅が出ますしね。
 表と裏で、違うデザインもできるでしょう?
 しかもガーゼ面は、ふつうの織物と一緒ですから、
 パイルに比べて、シャープなデザインが可能ですよ。
 ただですね‥‥うーむ」


どうしたんですか、ドクター・コットン。
心配そうな顔をしていますよ。

「たしかに、ガーゼタオルって、いいんです。
 <やさしい>し、デザインの幅も広い。
 でも、これ、タオル屋さんがあまり
 作りたがらない商品なんですよ」

 
ええ? なぜですか!
だって品質も良くてデザインの幅も広いなら
もっと、作られていいはずなのに‥‥
でもたしかに、
そんなに売ってるところを見ないです。
百貨店のタオル売り場でも
1種類あればいいほうでした。

「作るのにたいへん手間がかかる
 というのが第一の理由です。
 片面ガーゼで、片面パイルのタオルは、
 パイルとガーゼを別々につくりつつ、
 同時に織っていくんです。
 ガーゼとパイルは
 一続きの構造になっているのではなくて、
 2枚の布が、3センチほどの間隔で、
 糸でとめられているんですね。
 つまり、二重構造になっているんです。
 『二重織り』というわけです。
 ‥‥ガーゼ&パイルの織り方を
 ちゃんと説明しましょうか」


ガーゼタオルの織られ方:

ドクター・コットンにもらった見本の、
とまっている糸の一部を切って、解体してみました。
(これは<やさしいタオル>ではありません。
 同じ構造をもったタオルのサンプルです。)


「普通に両面がパイル地のものをつくるときには、
 一列パイルをつくるために、
 1.パイル面の横糸を通す
 2.パイルを形成する
 3.留める
 と、織機が3回動きます。
 ガーゼの場合は、パイルをつくってさらに、
 裏面のガーゼもつくるので、
 4.ガーゼ面の横糸を通す
 5.表裏面を同時に留める
 と、さらに2回、織機が動くのです。

単純にいうと、約1.6倍の時間がかかります。
 すごく手間ひまがかかる贅沢な織り方なんです


な、なるほど。
それは、作るのが、たいへんそうですね。
たいへんだから、タオルやさんは
あまり作りたがらないんですね?

「それも、たしかにあります。
 でも、もっと残念な、第二の理由があるんですよ。
 たとえ作ることができても、
 正当な価格で売ることが、できないんです。
 贅沢な作りのタオルなのに、
 それだけの価格を設定しにくいんです」


ど、どうしてですか!
いいものには、それなりの価格でいいではないですか。
クルマだって、メルセデス・ベンツだって、ジャガーだって
しっかりとそれなりの価格で売れているでしょう。

「そうですよね。だから、残念ながら、なんです。
 タオルってね、
 ちょっと歴史的な慣習に縛られているんです」


歴史的な慣習?

「タオルは、昔、どんなものでも、
 ほぼ同質の糸を使って作られていました。
 <20番単糸>というものです。
 なので、タオルの価値というのは、
 『重さ』に比例していたんですよ。
 重ければ重いほど価値のある
 タオルということになっていたんです。
 原料(糸)を、たくさん使っているわけだから。
 その昔の慣習が、いまも残っているんです。
 どんなに軽くていい糸を使おうと、
 どんな色を使おうと、デザインがよかろうと、
 最終的に価値を判断するのは、
 どれだけ糸を使ったか、ということなんですよ。
 もちろん少しずつ
 状況は変ってきていますが‥‥」


そうでしたか‥‥たしかに片面がガーゼだと、
パイルをつくるよりも糸は使わないですよね。

「そうなんですよ。片面をガーゼにすると、
 すべてパイルで作るのに比べて
 約40%ほど糸が少なくてすみます。
 同じ大きさのバスタオルでも、それだけ軽い。
 そうすると、そのぶん安く扱われてしまうんです。
 だから、ガーゼ&パイルのタオルが、
 素晴らしい特長を持っているにもかかわらず、
 作られない、ということになるんです。
 あるいは、価格を安くおさえるために、
 あんまり高い糸を使わない
 という方法もあることはあるんでしょうが」


重さだけで値段が決められてしまうのですかぁ?!
人間だって体重だけで評価されたりはしませんよ。
重けりゃいいってもんじゃない!
純金じゃないんだから!

‥‥ちょっと興奮してしまいました。
でもね、ドクター・コットン、
そのことは心配しないでください。
そういうことから自由な「ほぼ日」なら
「手間をかけて作った、高い品質のもの」
を、納得できる価格で
販売することができるはずです。
それに「軽さ」って、私たち、とても大事な
「いいところ」だと思っています。

軽くてふんわりからだにまとうタオル。
素敵でしょう?
持ち運ぶのにだって、便利です。

でも、そう言いながらも、
私たちにはすこしだけ、
別の不安もありました。
40%ほど少ない量の糸で織られたタオルに、
あの「ふかふか感」って
期待できるんでしょうか?
ひょっとして、軽いけど薄くてぺっちゃんこ?

糸が少ないことで、
「洗いやすく」「乾きやすい」ものに
なるだろうということは、想像できます。
それは、とってもいいことだと思います。
でも「ふかふか」じゃないのは、困ります。

「もちろん、片面ガーゼということで、
 いわゆるモッコモコの
 タオルにはならないですよ。
 限界はある。
 両面パイルのタオルが実現できるふかふかさとは、
 ちがうものになるはずですから。
 でも、糸の質、糸の紡ぎ方、
 パイルをつくるための糸と横糸に工夫をすれば、
 もこもこじゃなくても、
 リッチなふかふか感は、実現できるんですよ」


ん!! リッチなふかふか感も、あきらめなくていい?!
どうやらドクター・コットンの自信満々の表情には
なにか技術的な裏付けがあるようです。
よくわかりませんが、その技術を投入してください!
そして、かっこよくて質のよいタオル、
一緒に作ってください!ください!ください!(エコー)

「モギさん、焦っちゃだめですよ。
 それには、まず、
 コットンのことをきちんと考えましょう。
 基本に戻りましょう。
 どんなにデザインに凝ったところで、
 コットンの質が悪ければそれは
 『かっこよく見えるけど質の悪いタオル』
 でしかありません。ましてや
 『便利だけど質の悪いタオル』にも
 したくはないですよね」


そうでした!
タオルを作っているものは、糸。
糸を作っているものは、コットン(綿)です。
そうして私たちは、ようやく、タオルの原点である
「コットン」に立ち返ることになったのでした。
ドクター・コットンの原点は、やっぱりコットンでした〜。



というところで、今回のご報告はおしまいです。


次回、6月17日の更新では、
<やさしいタオル>に使うコットンについて
より深く、お話しさせていただきますね。
まさに、ドクター・コットンの
得意分野に突入していきますよ!
「やさしいタオル」の販売は、
7月9日(水)より開始予定です。

2003-06-13-FRI

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