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鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」

第1181回

ほぼ日編集部様

1月17日のニュースから

土曜日の昼下がり、
今日は先ほどから東京は粉雪、
といっても白いゴミのようにしか見えない
まばらな雪がふらふらと空中に舞っている。
寒そう!
数日間留守にしていた間に溜まった新聞の整理、
イラクへ行くための準備、
大学生のレポートの採点・・・・
まあ、やることはいっぱいあって
時間が足りなさそうだぞ、これは。
いかんばい。

今日の朝刊を読んでいまして、
朝日新聞と毎日新聞で
同じニュースを取り上げながらこうも違うのか、
という事例を見つけましたので、
それを皆さんにもご紹介。
どちらがいい、悪いというのではなく、
新聞社それぞれの判断があるんだ
ということを知っていただきたくてですね・・・・・
見出しはどっちもベタ記事扱い。
先ず朝日新聞。

「野村沙知代さん巡る名誉毀損訴訟
 浅香さんに110万円支払い命令」


これは一時週刊誌やテレビで
大騒ぎになっていた例の
「サッチー・ミッチー騒動」
にからむ裁判の帰結だ。
朝日の記事によると、野村さんが
「経歴詐称の公職選挙法違反があると
 広告されて名誉を傷つけられた」
などとして女優の浅香光代さんに
1億1千万円の損害賠償を求めたもので、
その判決が16日、東京地裁で出た。
判決では・・・・
記事では裁判長も女性であることが
わかるようになっており、
綿引万里子裁判長が
「野村さんが留学していないと考えたことには
 相応の根拠はあった」
と判断しながらも、
これとは別のプライバシーを
女性週刊誌に書かせた点は名誉毀損にあたるとして
浅香さんに110万円の支払いを命じたんだそうだ。
記事ではこうなっている。

「判決は、野村さんのプライバシーについて
 書かれた匿名の手紙を
 週刊誌に渡した浅香さんの行為を問題視。
 手紙には野村さんを侮辱する表現が含まれ、
 記事になることも十分認識していたと判断し、
 名誉毀損の成立を認めた」

ここで問題になっているのは
野村さんのプライバシーに関する匿名の手紙だ。
そこには野村さんの名誉を毀損するような
内容があったと判断されたんでしょうが、
朝日新聞は敢えてでしょうね、
そこには触れていませんね。
110万円の支払いを命ずるような
かなり深刻な内容だったと推測されますが、
記事からは全く推測もできません。
当時のことを覚えている人や
当時の女性週刊誌を持っている人には、
それがどんなものだったかは分かるんでしょうが、
朝日新聞はここでその内容を書けば
またプライバシーを公開して
新たな名誉毀損を発生させるから、
と判断したんでしょうね。
もう一回言いますが、
ここは朝日新聞が敢えてそういう判断をして
踏み込まなかったんでしょう。
しかし、事実を伝える新聞の役割としては、
肝心のことを書いてない訳ですから、
不十分だとも言えます。
例えば、10年後この新聞記事を資料として
10年前にはどういうことが
名誉毀損にあたると判断されていたのか、
調べようとしたらこの記事からは
一番のツボのところがぼんやりとして
理解できないことになります。
その意味では新聞が歴史的な
資料の意味もあることを考えると、
不十分な記事だということになります。
歴史的な資料というだけでなく、
やはり同じような名誉毀損事件で
被害者にあたる人がこの裁判を知ろうとしても
この記事からではやはりあまり参考にはなりませんね。
朝日新聞は新聞のプライバシー保護のことを
重点において記事を作成したんだいうことです。

さあ、そこで毎日新聞ですが、
こちらは経歴詐称とか、
アメリカ留学のことにはいっさい触れていなくて
いきなりこの裁判の核心部分にズバリと触れて
こう書いています。

「タレントの野村沙知代さんが、
 『終戦後、米兵相手の売春をしていたかのように
  週刊誌に書かれ、名誉を傷つけられた』
 として、取材を受けた女優の浅香光代さんに
 1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟で、
 東京地裁は16日、110万円の支払いを命じた。
 綿引万里子裁判長は
 『売春婦をしていたとされる
  差出人不明の手紙を記者に見せて、
  野村さんの社会的評価を低下させた』
 と名誉毀損を認めた」

毎日の記事は極めて短いものだが、
肝心の何が名誉毀損にあたるかという点は
簡潔に記載している。
これで、ああ、そうなのか、
野村さんが名誉毀損と感じた所は、
「米兵相手の売春婦」
という言葉だったことが分かる。
そりゃあ、確かに誰でも
こんなことを書かれたら堪らんですわねえ。
ここで一つ大事なことは
これが事実であったかどうかは
問題になっていないことですよ。
普通名誉毀損事件では報道されたものが事実であって、
且つ公共の利益に資するものであった場合は
賠償責任を問われないという認識だと思います。
が、刑法ではたとえそれが事実であっても、
その事実を
「公然摘示して」
名誉を貶める意図があった場合は
刑法の名誉毀損罪に問われるんですばい。
これは民法上も同じ判断なんだと思います。
匿名の手紙でこれを公然と週刊誌に載せれば
野村さんの名誉が傷つくという認識が
浅香さん側にあった、
これは賠償責任に値するということなんでしょうね。
ここで毎日新聞の記者は
野村さんのプライバシーを記事上で
また侵すかもしれないというような
逡巡はなかったんでしょうか?
それも考慮に入れながらも、
しかし、ここはポイントだから外せないという
判断をしたんでしょうか??
こればかりは両紙の記者に聞いてみないと
分かりまっせんが・・・
さあ、それにしてもあのとき大騒ぎをしていた
週刊誌やワイドショーの方は
どうしたんでしょうかねえ・・・・

そろそろ学生のレポート採点に戻ります。
ではいい日曜日を!!!

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2004-01-18-SUN

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