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上大岡トメの、タネがいっぱい。
トメのタネ その4 自分の足をひっぱるのは、必ず自分。

── トメさんは、もともと
イラストがお好きだったんですか?
トメ ものごころついたときから、
絵を描いていましたね。
陸奥A子さん、上原きみこさん、
吉野朔実さんの漫画が大好きで、
漫画家になりたかったんです。
漫画家にはなりたかったけど、
結局それは本気じゃなかった。
あきらめちゃった。

── トメさんは、立派で
とてもステキなかたなんですけれども
『キッパリ!』や『しろのあお』を読むと
すごくダメな人の気持ちをわかってくれている
という気がするんです。
トメ だって自分がダメなんだもん。
ほんとに挫折のくり返しです、私の人生。

だいたい、20代の前半までは
なんでも人のせいにしてきましたから。

漫画家になりたいと言いながらも、
「学校が忙しい」とかなんとか
自分に都合のいい言いわけをしちゃって
結局、投稿したのは2回だけだし。
大学を建築学科にしたのも、
ほんとうは設計事務所に
行きたかったからなんですが、
設計事務所って、ハードワークで、
とにかく自分の力が試される環境でしょ。
怖じ気づいたんですよ。
腰が引けちゃってるんです。
だから結局、設計事務所には行かず、
現場から遠い建築会社に就職したんです。
現場から遠いぶん、なまぬるく
机上の仕事が大半を占め、
仕事のおもしろみは少ない。

自分で選んだのに、不平不満を言ってみる。
「ここの会社は男女で待遇がちがう」
「上司が悪い」
「この部分のシステムがいけない」
じゃあ、あんたはどうなの?
選んだのは、あんたじゃない?

そういうふうにして、
20代前半をすごしていました。

それから、イラストの仕事を
はじめるようになった。
イラストは自分でやっていく仕事だから、
そのときになってはじめて
「ああ私は上司になんてことを言ったんだろう」
と、わかったんです。
仕事をするということが、
いったいどういうことなのか。
── 人のせいにしていたのが
自分で起業してから、変わりはじめた。
それは、自分で勝負し出した、
ということですよね。
トメ イラストの仕事って
自分から売り込んでいくしかないから。

私は、もともと人見知りをするタイプで
人に話しかけられるとビクッとするほうです。
人の集まりには、怖くて入れないし。
でも、そんなこと言ってたら
こんな仕事はできません。
── 人や状況に頼ってしまうのは
もしかしたら若いときの
特徴ではないかと思うのですが。
トメ そうか、若いからかな?
私たちは、年も近いし、
こういう仕事をはじめた時期も
同じくらいですよね。
当時はきっと、おなじ大海原に放り出されて、
ゴボゴボゴボゴボって溺れていたんだよね。
── そうですね、おなじ時代に。
醜くもがいている自分は
かわいいけど、目もあてられないですね。
トメ あっちでゴボゴボ!
── こっちでゴボゴボゴボ!
そんな人たちが、いっぱいいました。
トメ

あっ、誰かが足引っ張った、ゴボゴボ!
ああそれは、
自分の手だった、ゴボゴボゴボゴボ!!!

── ハハハハ。
トメ 『キッパリ!』を書いていたときというのは、
出版業界ではほんとに無名状態でした。
本というのは、なにかですごい結果を
出した人が書くものでしょう。
「すごいお金持ちになったからそのノウハウを」とか
「ドーバー海峡を泳いで渡ったから」とか。
── タレントさんが随筆を書いたり。
トメ そうそう。
名前や実績のある人が
本を出すものだと思っていたし、
本屋さんで読者のかたが
私の本を手にとっているということが
ぜんぜんイメージできなくって
すごい悩んだんだけど、
誰にも相談できなかった。
そんなとき、「ほぼ日」の
天童荒太さんのコンテンツ
を読んだんです。
あの連載で
「自分がおもしろければいい」と
いうようなことが書いてあったんです。
‥‥これだ!と思ってね。
『キッパリ!』を書いて
自分が変わればいいじゃん、
ほかの人が読んでどう思おうがいいじゃん。
別に売れるともぜんぜん思ってなかったから
とりあえず本の形になったら
次の営業に行けるさ!って
ただそれだけで作った。

ほんっっっとに、天童さんに助けられました。
そこから、『キッパリ!』を
「あ、これ可笑しい!!」なんて
自分で笑いながら書けるようになりました。
── それがいま、108万部。
少なくとも自分で最高だと
思っている本なんだから、
それを持って堂々と人に会いに行けますよね。
トメ それからね、ズーニーさんにも
助けられた!
文章を書く前に、ズーニーさんの本を
何度も何度も読み返してねぇ‥‥。
大将 じゃ、そろそろデザートね。
タケノコのおすしです。

トメ あっ! タケノコ。
大将の、おいしいんだよ。
大将 地もののタケノコです。
── タケノコの下に敷いてあるのは?
大将 かつお節です。
かつお節が、
タケノコの水分を吸うようになってます。
それがないとごはんのほうに
水分が行ってしまって
バラバラになってしまうので。

── ごはんがピンク色ですけれども。
大将 (やや得意気に)山ぶどうで色をつけました。
ちいとは(ちょっとは)色気がないと。
トメ おいしい。ぜんぜんあくがない。
大将 これがうちの、
野菜のにぎりのはじまりです。
お客さんにいただいたタケノコをつかって
にぎったんですよ。
ただでもらったから
ただで出すしかなくて。
フキやダイコン、
フルーツ系ではイチジクや柿も握ります。
── 想像つかないなあ。
トメ 下はごはんだもんね。


(次回につづく!)

2005-04-27-WED
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