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ほぼ日事件簿・こんなことでした

第2回(1月22日・日曜の暮らし)
「清水ミチコ・ベスト版・ジァンジァンラストライブ」


ほぼ日読者をナマで見たのだ!

清水ミチコさんのライブ、笑ってきました。
darling宛ての招待状。
しかし、darlingはどーしても都合がつかない。
チャンス!
「ならばワタクシめが」と志願兵モードのスタッフ金澤が
アーバンな休日の午後を楽しむべく渋谷の街へ。

なんでも、渋谷ジァンジァン(ライブハウス)は
4月で閉館されるらしいです。
チラシを見ると、1月〜3月いっぱいまで、
渋谷ジァンジァンになじみ深い人たちの、
お別れ公演でスケジュールがぎっしり。
3月には矢野顕子さんのライブもある。

で、清水ミチコさんのライブ中に、
事件はおこったんですねぇ。
2時間以上のステージのなかで、
そのとき清水ミチコさんがやっていたのは、
「太宰治の『斜陽』をいろんな人が
 その人なりの表現をすると、どうなるか?」というネタ。
「朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
 『あ。』
 と幽かな叫び声をお挙げになった。」という
『斜陽』の書き出しを、いろんな人の声マネで
朗読するわけです。マネる人によって文章がかわります。
その人ならではのズレが味わいだ。

何人かの朗読の後、清水ミチコさんがお客さんに、
「今日来てくれた人のなかで“ほぼ日”読んでる人って
 いるかな? ちょっと手挙げて、はい!」
って聞いたのよ。
え、なに? なんなんだ?
ワタクシ、瞬間、緊張しました。
薄暗い客席に200人くらいのお客さんがいただろうか。
ワタクシ被告人席にいる感じね。

また、こういうときって手挙げにくいじゃないっすか。
「質問ある人」、シーン、ってパターンだよ。
オレも手挙げられなかったし。
そしたら、あちこちでサササッと、手が伸びたんだよ!
4、5人じゃないんですよ。
しかも、手の挙げ方が堂々としてたっちゅーか。
ワタクシには客席の1/3に見えた。
それちょっと採点甘くないかって?
よし、厳しく見積もっても1/4の人は手挙げてたぞ。
まだ甘いって? まーいいじゃないか。
無罪。やったー。

そういう前フリの後、清水さんは、
「おいら。」による「斜陽」を朗読してくれた。
「おいら。」調の「斜陽」。
えー、このネタ、半分以上の客さんは“???”だった。
そりゃそーよ、だって3/4の人は
「おいら。」知らないんだから。
清水さんは、それやりたかったんですね。勇気だ。

しっかし、公共の場所で初めてナマのほぼ日読者を見て、
かなり興奮したよー。だって、同じ会場のすぐそこの席に
座ってる人がほぼ日読んでくれてるんだよ。

で、ライブが終わってから、
マネージャーのヤノッチさんにお礼言って
帰ろうとしたのよ。そしたら、
「ちょっとひとことどうぞ」って楽屋に通してくれた。
ただならぬ気配。
(あの)大瀧詠一仙人(様)だ!
私は楽屋の端っこに立つ。耳は高感度。
スライド写真を使ったネタの、スライドの順番が
どうのこうのと、清水さんと会話されている。
私には「ダメ出し」をしているように聞こえた。
すごい! なにがすごいんだかわからないが、すごい図。
しかも、記念撮影をしようと、ヤノッチさんが
カメラを構えたとき、流れで一緒に写ってしまった。
なにをやっているんだ、オレ。

大瀧詠一さんが楽屋から去ってから、
「あんなに手挙げる人がいるとは思いませんでしたよ」と
清水さんに言うと、ライブのアンケート用紙に
“ほぼ日で知った”という人がけっこういるのよ、と
教えてくださった。清水さんにも、お客さんにも、
ほぼ日は、すこしはお役に立てているようだ。

楽屋口から表通りに出たところて、
大瀧さんがサインに応じていた。これもすごい図。
サイン、オッケーなのか!?
きっと清水さんのライブに来たお客さんだろう。
十数年間の隠居生活で匿名性を獲得したと、
どこかに書いてあったのを思い出し、
私は大瀧さんの歩いていく姿をじっと見ていた。
渋谷の街をゆく人は、だれも気づかない。
すぐに人々にまぎれて見失ってしまった。
仙人伝説、この目で見たり。

私はジァンジァンの出口付近で、
ナチュラル風をよそおってタバコを吸っていた。
出口からお客さんがどんどん出てきていた。
さっき手を挙げてくれた人がいただけでうれしいのに、
もっとごほうびが欲しくなっていた。
「だれか自分に気づかないかな〜。
 ここにいるよ、ほぼ日だよぉ」。
バカだなぁ、オレ。

当然、反応はない。
そうくるか、ならばと、19時からのライブのために
ジァンジァンの前で開場待ちする人の列の横を
2往復もしてしまった。
この列に並んでる人の1/4はほぼ日読者にちがいない。
お、目があったな。あの人、読者だ、きっと。
しかし、力強いアイコンタクトではなかった。
もしかしたら妙なオヤジだと思われただけかも。
私の負けだ。

しかし、こういうことしちゃう気持ちってなんなんだ?
これって、思春期にさ、学校の帰り道とかに遠回りして、
わざわざ好きな娘の家の前を通ったりしたときの
気持ちに似てるよね。
夕方っていう時間帯も似てるな。

いかがでしたか。
ほぼ日事件簿というより、暮らしのひとコマでしたね。
清水ミチコさんの勇気に乾杯。
ヤノッチさん、よろしかったら写真ください。
手を挙げてくれた人たち、ありがとう。

(完)

2000-01-25-TUE

TORIGOOE
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