湯村輝彦×糸井重里  ごぶさた、ペンギン!  『さよならペンギン』復刻記念 なつかしはずかし30年振り対談 湯村輝彦×糸井重里  ごぶさた、ペンギン!  『さよならペンギン』復刻記念 なつかしはずかし30年振り対談
#9 こういうことばっかり言ってるんだよ。 #9 こういうことばっかり言ってるんだよ。
糸井 せっかくですから、最後にもう一度、
『さよならペンギン』の話に戻しますけど。
湯村 ウン。
糸井 はっきりしたことはわからないんですけど、
どうやらこの絵本は、
当時、そんなに売れなかったはずなのに、
影響された人がかなり、いる。
湯村 ね(笑)。
糸井 謎ですよね。
湯村 謎だねぇ。
糸井 今回の復刻のきっかけでもあるんだけど、
荒井良二さんが
「読んでぶっ飛んだ。
 ものすごく影響を受けた」
って言ってくれてたり。
湯村 そうらしいねぇ。
糸井 そう。
さくらももこさんなんかも、
湯村さんとやった『ペンギンごはん』の
熱心な読者だったりね。
湯村 あ、ほんとに。
糸井 なんか、そんなふうになるとは、
まったく思ってませんでしたけど、
あのころの湯村さんとの仕事は
いまごろになって感謝されるんですよ。
湯村 ねぇ(笑)。
糸井 『さよならペンギン』が復刻されるって
聞いたとき、ちょっとは、
うれしい気持ち、ありました?
湯村 もちろん。
糸井 そう(笑)。
ああ、それを聞いて、
なんだか、こっちもうれしいなぁ。
湯村 『ペンギンごはん』のほうは
けっこう目立った仕事だったというか、
何回かかたちを変えて出たけど、
『さよならペンギン』のほうは、
なにもなかったからね。
糸井 30年振りだって。
湯村 ねぇ。
(当時のプロフィール写真を見ながら)
なかなか、いい写真だね、これは(笑)。
糸井 恥ずかしい(笑)。
湯村 なんていうか、自然な写真だ。
糸井 そう(笑)?
湯村 せっかくだから、
最中(もなか)、食べてよ。
糸井 あ、いただきます。
湯村 ここのね、わりとね。
糸井 おいしいですよね。
湯村 虎屋のネ。
糸井 弥栄ですね。
湯村 今日は、ほんと、どうしようかと思っててさ。
いちおう、なんか、
息苦しくなっちゃうといけないから、
ビールとかワインなんかも用意してたんだけど、
お茶だけでこれだけしゃべれたから。
糸井 ていうか、湯村さんって、
じつはしゃべり好きですよね。
湯村 いやいやいや、寡黙、寡黙。
糸井 いやいや。
湯村 今日は思い切ってしゃべったからサ。
オレはもう、くたびれたよ。
1年分ぐらいしゃべっちゃった感じ。
糸井 またまた(笑)。
湯村 明日からどうしようかな?
糸井 (まわりのスタッフに)
こういうことばっかり言ってるんだよ。
一同 (笑)
湯村 まぁ、ずいぶん心配したけど、
ビールとワインの勢いを借りずに
こんなにしゃべれてよかった。
糸井 湯村さんは飲んでもよかったのに。
湯村 糸井は昔から飲まなかったけどネ。
糸井 うん。
湯村 だから、オレと糸井の大きな違いは、
酒を飲まないってことと、
あと、黒人音楽。
糸井 (笑)
湯村 もし、糸井が飲んだくれで、
黒人音楽が好きだったら、
たぶん、いまの糸井はいなくて、
もうちょっとオレのそばにいてさ。
糸井 ここで、なんかやってたかも。
湯村 そうなったらそうなったで、
なんかあって、離れたかもしれない。
だから、やっぱり、
嫌いなものとか、違いって、あっていいよね。
糸井 そうですね。なんなんでしょうね。
なにかにペタッとくっつくってことは、
けっきょく、ぼくは、
どこへ行ってもなかったですね。
それは湯村さんとの付き合いのなかで、
自分で発見したことかもしれない。
湯村 なるほどね。
糸井 あの、ほんとに、あのころ、
ぼくは湯村さんに憧れて、尊敬してて、
いっしょに仕事をしていても、
なんだろう‥‥なんだろうなぁ‥‥。
若いときに、あんなふうにずっと会ってて、
30年会わなくなるっていうのも不思議ですね。
‥‥水くさいと思ってますかね?
湯村 ‥‥オレ?
糸井 「糸井は水くさいなぁ」って。
湯村 オレはそんなこと、まったくない。
糸井 (笑)
湯村 もともとオレは人にあんまり会わないからさ。
人に会うと、ドキドキするんだよ、オレ。
糸井 それ、ほんとですよね(笑)。
湯村 ほんとだよ。疲れちゃうんだよ。
糸井はよくいろんな人に会って、
すごいなぁと思うけど、
オレは、やっぱりそうじゃないからね。
もういまはオレ、
猫と話してるのが一番しあわせで。
糸井 ははははは。
湯村 もう死ぬまでそれでいいやと思って。
今日は特別の日だから
こんなにしゃべったけどさ。
糸井 今日はしゃべりまくりましたね。
湯村 もう3年分くらいしゃべったよ。
糸井 増えてる(笑)。
湯村 明日から、もうほとんどしゃべんないよ。
糸井 寡黙な老人として余生を。
湯村 そう(笑)。
和室に座って頭の影だけを障子に。
糸井 ははははは。
いやー、でも、やっと慣れてきたかな。
湯村 ウン。最後にネ。
糸井 湯村さんのエロの仕事、考えますよ。
宿題にさせてください。
湯村 うん。ありがとう。
いやー、しかし、ぐったりしちゃったよ。
これで、今日は、よく眠れる。
糸井 (笑)
2011-04-11-MON