ほぼ日手帳成功物語。
ある意味で世界一の手帳をつくるバカたち。

 

第四回
darling長い人生の知恵炸裂の巻〜その2


ほぼにちは。あややです。
「ほぼ日手帳成功物語」本日は第四回です。

一時は雲行きが怪しくなり、
どうなるかと思われた「ほぼ日手帳」も
無事に素材と大きさが決まり一安心。
今度こそ、「できたっ、できたっ」
とみんなで喜んでいるとき、シェフ武井がぽつり。
「ところで、外側はそれでいいんだと思うんだけど、
 中身の印刷の問題とかもあったよね?
 それはだいじょうぶなの?」
あわあわあわあわわっ。
そうでした〜〜っ!!
そうだ、手帳の中身を“印刷”するということにも
問題があったんだ!!
わーん、喜びもつかの間、
またまた鼠穴の3Fは静まりかえり、
金魚の水音だけが響くのでありました・・・
(本日はここからのつづきです。)


●手帳作りって、そんなに大変なの!?

そもそも西田店長の調査結果で明らかになった
手帳の印刷面に関する問題点とはこういうことでした。

「手帳の印刷は、本や雑誌などの他の印刷物に比べて
 時間がかかる」
さらに、
「手帳はレイアウトを1ページずつ変えると
 印刷するのにやたらと時間がかかる」

手帳は各メーカーとも製作時期が重なるため、
どの印刷所もその時期は手帳の印刷でいっぱいになり、
通常より印刷に時間がかかってしまう
ということらしいのです。
まあ、要するに「印刷所が混む」ということです。
そういう事情があって、
もしも“1ページごと異なるレイアウト”
なんてことになると、とてもじゃないけど
予定している時期に発売できなくなってしまう
ということらしいのです。

そんな、困っちゃうわ!
いち早く発売したいと思っているんですもの。

それに対してdarling。
「印刷所がその時期いっぱいだっていうなら
 その時期にぶつからないように
 ほかの手帳メーカーよりも早く
 印刷できるように準備すればいいんじゃないの?」

はっ!
・・・そうでした、よね。
お盆の道路渋滞だって、2、3日前に出発したり、
夜中に出発して時間をずらしたりして、
渋滞を避けたりしてるんでした。
それと理屈は全く同じで、
混雑することがわかっているんだったら、
その時期をあらかじめ避ければいいんですよね。

さらにdarling。
「それにさー、レイアウトのことだって、
 いくら手帳だからって
 カレンダー部分のレイアウトは同じでいいわけだから、
 そんなに手帳だけ特別に大変なんてことが
 あるわけないよ」

そうです、そうです。
日付は365日違うけれど、
そのフォーマットというかレイアウトは
基本的に同じなんだった〜〜。

さらにさらにdarlingは
問題解決を促すべく続けます。
「文庫本だって製作に1ヶ月かからないんだよ。
 技術的には手帳だって文庫本作るのと
 同じ要領のはずだから、
 手帳にだけそんなに時間がかかるわけないよ。
 だってさ、よく考えてみてよ。
 週刊誌なんて毎週出てるし、新聞なんて毎日だよ!?
 その週刊誌だって新聞だって、
 ちゃーんと然るべき日に印刷されて
 刊行されてるんだからさ。
 それ考えたら手帳だってできるはずだよ」

たしかに、その通りです!
「ほぼ日」からも、
これまで数々の本が生まれていて、
出版社のみなさんが本を作っていく過程を
わたくし(あやや)も遠くの方から見ていますが、
たとえば、『インターネット的』にしても、
今、編集部が作っている
『がんばれ自炊くん!』の単行本にしても、
全体の製作時間はとても長くとっているようですが、
印刷だけに何ヶ月も費やしているとは思えません。
そのことを思い出してみれば、
たしかに手帳だって
本を作るのと同じくらいの時間でできるはず。
あわてて考えると、すぐ壁に当たっちゃったように
感じるものなんですね。

●“白紙のメモ帳”あったらいいよね

懸案事項だった数々の問題も無事解決してきました。
いろんなものを収納できるビニール袋を作ると
コストがかかるという問題は、
手帳カバーに大きな何でも入る
“ジーパンのポケット的な袋”をつけるということで
解決したし、
手帳製作に関わる業者さんは
印刷屋さんと、
手帳のカバーを作ってくれる業者さんと、
ふたつに絞られました。
一時はいろんな業者さんに作ってもらった各パーツを
ほぼ日スタッフみんなで
“家内制手工業”のように、
泊まり込みして組み立てることまで覚悟しましたが、
どうやらその心配もなくなりました。
名前を“野麦峠あやや”に変えることまで
考えたけれど、ほんとによかったわー。

さてさて、今度こそ、ほんとに、
「ほぼ日手帳」製作への第1歩を踏み出せそうです。
いつものように私たちほぼ日スタッフも
これで手帳を作れると一安心していたのですが、
一方でわたくし(あやや)には何となく不安がありました。
というのも、
いつもdarlingがスタッフに言うことなのですが、
「うまく事が運んでいるときほど、危ないんだよ」
という言葉が頭の中にあったからです。
そう考えてみると、
「たしかに、問題もクリアして
 さあ、これからってところだけど、
 でも何か足りないんだよなあ」
というモヤモヤとした“何か”が
頭の中にひっかかっていました。
う、うーん・・・
でもその“何か”っていったい何だろう?
わからないなあ・・・

そ、そのとき、木工用ボンドガールが叫びました。
「そうだっ、いいこと思いついた!」
その叫びに一瞬、凍りつく一同。
木工用ボンドガール先輩はとても個性的な発想の方です。
たとえば、
「手帳の色は何にする?」
という話をしているときも
「私は“玉虫色”か“かえる色”!」
とおっしゃったりして。
ある種、人間の想像力をはるかに超えたところから
アイデアが飛び出してくる先輩なんです。
そんなわけで、今回も木工用先輩の一言で、
「なな、何を言い出すの!?」
という空気が鼠穴3F全体に流れました。
そんな空気を察知してか、
木工用ボンドガール先輩は
いつになく控え目につぶやきます。

「白紙だけのメモ帳がもう1冊ついていたら・・・
 よくない?」

うおおおむむむっ!?
この木工用ボンドガール先輩のアイデアを聞いた
他の先輩たちの表情にも
「それ、いいかも!!」
と言いたいを気持ちがでていました。
たしかに今回の「ほぼ日手帳」は
カレンダーのページ以外も
読んで面白いものや、
この手帳を手にした人がうれしいと思うような情報を
たくさん載せようということがあって
“余白”みたいなもののスペースは、
ほとんど考えていなかったんです。
さらにその“メモ帳案”を後押しするように、
「そうなんだよっ!!」
とdarlingが力強くうなずき、
何やらカバンの中に手を突っ込んで、
ガサガサしはじめました。
そして、再び愛用の文庫本サイズのメモ帳を
手に取りながら、
darlingによる“経験者は語る”がはじまりました。

「これ(メモ帳)、ほんとに便利なんだよなあ。
 だってさー、家にいて、急に散歩したくなったり、
 コーヒー飲みたくなって
 ふらっと出歩くこととかあるじゃない?
 そういうときって、何気なく歩いているから、
 街にあるいろんな物に目がとまったりするんだよ。
 そんでそれ見ながら頭の中にいろんなイメージとか
 アイデアが浮かんだりしてさ。
 そういうのって、後で家に戻ってから
 メモしておこうとか思っても絶対忘れちゃうから、
 その場で書き込んでおかないとダメなんだよお」

これ、誰でも日常生活の中で経験していることです。
通勤・通学の電車の中とか、
待ち合わせしているときに友達を待っているときとか、
家でボーっとしているときとか、
そういう何でもないときって、
他愛もないことを考えたり、
ちょっとしたアイデアが浮かんだりします。
そういうわざわざ人に言うほどのことではないんだけど、
“閃きのような思いつき”、よしなし事を
気軽にメモしておける場所があったらいい!


●“手帳&メモ帳”2つとも作ろう!

そんなことを思いながら私たちが行き着いた結論は、

「いっそのこと文庫本サイズで
 手帳とメモ帳両方作ってしまおう!」

ということでした。
カバーは一つだけど、
全く同じ大きさの手帳とメモ帳を、
ある日は手帳、ある日はメモ帳、
といった具合にその日の都合や気分によって
使う人の自由な裁量で使いこなす。
人によっては、“手帳は電子手帳”と
決めている人もいるかもしれないし、
そういう人は手帳は家に置いておいて、
メモ帳の方を持ち歩いてくれればいいんです。
あとふだんは「ほぼ日手帳」を持ち歩いている人も
週末はメモ帳を持ってお出かけしてもいいし、
とにかくいくつかの“引き出し”がある中から、
どれを使うかはその人の自由で
選んでいただけたらなあと思ったんです。
メモ帳と代用できる手帳って
いままで見たことなかったし、
私も「欲しい!!!!」です。


●これが「ほぼ日手帳」の骨格だっ

一時はどうなるかと思われた「ほぼ日手帳」も、
“問題は工夫で何とかなるものさっ”で
darlingの長年の知恵が大炸裂して、
数々の問題も無事クリアしました。

決まったことをもう1度おさらいしてみると、

・大きさは「文庫本サイズ」で、
 ジーパンのポケットにも入って
 持ち歩きしやすい。
・カバーはナイロン素材で
 手軽に持ち歩けて、
 少しくらい乱暴に扱ってもだいじょうぶ。
 しかもうっすら光沢があっておしゃれ。
・いろんなものを
 はさみ込むためのポケットは
 カバーに
 ジーパンのポケット的なポケットを
 1個つける。
・メモ帳と手帳が2冊全く同サイズで
 好きなときに交換自由!

よっし!!
これで手帳のカバーのことも大きさも決まったし、
いよいよ次は具体的なデザインです。
「“ほぼ日手帳”がどんなふうなのか
 早く見たーい」
とウズウズしていた皆さま、
長らくお待たせいたしましたっ。
お次は、アッキイ画伯も登場して
ぬわーんと一気に「ほぼ日手帳」の“デザイン画”を
お見せしちゃいます!!
ぜひぜひ楽しみにしててくださいませ。

(つづく)

2001-08-16-THU
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