第29回 どうしてカツラはバレるのか。
うちのツマがね、
「あの人カツラ」って
一瞬のうちに見破るんだよ。
糸井 ああ、そう。
いっしょに歩いてたりするとさ、
「あ、カツラ」って。
そんなにかっていうくらい見つけちゃう。
糸井 いや、うちの奥さんもヅラ(カツラ)好きですよ。
もーのすごく好きですよ。
だいたい、女の人は、好きだよね。
糸井 うん。全体にね。人のヅラが。
それでね、このあいだ、
カツラに関して発見をしたって言うんだよ。
糸井 ほう。
まず、安いカツラというのは、
私は、もちろんすぐにわかるんだと。
でも、ものすごく高い、手の込んだ、
人毛を使ったりしてる高級カツラも
見分けることができる。
なぜ、私は、高いカツラでもわかるんだろう?
と考えてみたらしいんだ。
糸井 ああ、いい話だね。
そこで発見したことは、
「カツラは寝ない」
ってナゾのようなことを言う。
糸井 「カツラは寝ない」。
うん。
カツラの人は寝るんだけど
「カツラは寝ない」んだよ。
ふつうはね、つけたまま寝るんだ。
ていうか、そりゃ自分の毛だからさ。
糸井 うん(笑)。
カツラは高ければ高いほど、
つけたまんまは寝ない。
蒸れるとか、うっとうしいとか、
そういう理由もあるかもしれないけど、
やっぱり、せっかく高いカツラだからさ。
かぶったまま寝たら、毛が抜けちゃったりして
いたんじゃうじゃないか。
それで、大事にしすぎてるんだって言うんだよ。
糸井 つまり、頭髪としてキレイすぎるんだね。
そう。だからわかっちゃう。
だからその、必ずしも、
ぐちゃぐちゃにする必要はないんだけど、
どこかにこうさ、寝ぐせとかさ、ホツレとか、
一種のノイズのようなものが混じらないと。
そういうビミョーなものを
人の目は「自然なもの」としてとらえてるんだから。
糸井 そうだね。
つまり毛が
「言うことをききすぎてる」
ともいってましたね。
カツラ研究家は‥‥。
糸井 あのさ、「髪を黒く染めてる人」っていうのも、
どういうわけかすぐにわかっちゃうよね。
あれもやっぱり、完成され過ぎてるからだよね。
うん、そうそう、全部、一様に染めちゃうから。
きっと、人の髪の毛って、真っ黒に見えても
1本1本見ていくと微妙に違ってるんだね。
糸井 うん。ばらつきがあるんだろうね。
これは養老(孟司)さんの言い方だけど、
自然界には、同じものはふたつとないんだよ。
自然のものって、必ずバラつきがあるんだ。
カツラって、その原則に反してるから、
バレちゃうんだね。
見分けちゃうんだ、プロはね。
糸井 そうだね。
だから、高いカツラを買って大事にするよりは、
安いカツラを買って、毎日つけてるほうが
バレない、ということかな。
いや。それ、オレも訊いてみたんだ。
安いカツラを買って、毎晩それをつけて寝たら
自然に見えるのか? って。そしたら、
「安いカツラは最初から毛が死んでるからダメだ」
って言うんだ。
一同 (笑)
糸井 なるほどね(笑)
「毛が死んでいる」ってのもね。
一同 (笑)
(次回、とうとう最終回)

2008-06-04-WED


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN