TARO MONEY最初の寄付は、
『明日の神話』を運ぶ木箱と
修復のための細い筆230本になりました。

岡本太郎さんは絵を売らない人でしたので、
この『明日の神話』も、
財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団から
最終的に引き受けるところへ
無償で差し上げることになるのだそうです。
しかし、ご存知のとおり、
『明日の神話』は巨大な絵ですので、
修復にも運搬にも保存にも、
そのたびにたいへんな費用がかかります。
その例をいくつか、ここで挙げてみます。

補彩用筆 ¥799,800(¥1,333×600本)
実体顕微鏡 ¥1,593,500
人工太陽灯 ¥2,409,750(¥803,250×3灯)
背面補強用アクリル板 ¥5,577,000(材料のみ)
背面補強用鉄骨 ¥2,070,848(材料のみ)
倉庫保管費用 ¥2,400,000/年(概算・保険料別)

などなどなど‥‥まだまだたくさんあります。

「『明日の神話』再生プロジェクト」は、
岡本敏子さんの、
「岡本太郎記念現代芸術振興財団が
 つぶれても実現する」
という覚悟ではじまりました。
壁画が最終的に設置されるまで
すべての過程を実現していくために
たくさんのみなさんといっしょに応援できれば、
ということが、TARO MONEYの
そもそものはじまりでした。

2005年6月から、1年というスピードで
壁画の修復を敢行したのは、
絵画修復家の吉村絵美留さんです。


この方です。

『明日の神話』再生プロジェクトのページにも
掲載されているように、
あのダイナミックな『明日の神話』公開は、
息を呑むほどに緻密で繊細な修復作業の、
一日一日の積み上げで実現しました。

例えば、岡本太郎さんの筆の勢いを再現するために、
吉村さんは赤外線カメラを使って
筆致や彩色の順番など分析し、
その結果をもとに
石膏のようなもので岡本太郎さんの筆の跡をつくり、
細い筆で、細かく彩色していきました。

あんなに大きな絵が、細い筆で隅々修復されました。


バラバラになった
数千ピースのかけらを組んでいくことからはじまり、
最後の仕上げに至るまで、
その作業は、ほんとうにバラエティに富んでいました。





公開の日、誰よりうれしそうな顔をしていたのは、
もしかしたら、吉村さんだったかもしれません。




吉村さんが、『明日の神話』を修復するために
特別に「どうしても揃えてほしい」と
おっしゃった器具がありました。
それは、ふだんは医療用に使われる「実体顕微鏡」と
太陽光を再現することのできる「人工太陽灯」でした。

「実体顕微鏡」は、細かな付着物を取り除いたり、
細部の復元に必要でした。
そして「人工太陽灯」は、
壁画の色を正しく見極めるために必要でした。
色がもっとも正しく美しく見えるといわれる
「午前11時の太陽光」をもった人工照明は、
水銀灯のあかりしかない作業場で
『明日の神話』の色を正確につかむためには、
なくてはならない機材でした。

ふたつとも、とても高価なものでしたが、
吉村さんと
『明日の神話』再生プロジェクト
ゼネラルプロデューサーの平野さんは、
これらを迷うことなく購入し、
修復のピッチを決して緩めることはしませんでした。
(修復に使用した用具の一部は、いまのところは、
 吉村さんが立て替えている状態だそうです)
そして、『明日の神話』の修復は
岡本敏子さんが願っていたとおりに
完成に至りました。
実体顕微鏡を使って修復は行なわれました。


人工太陽灯は、点灯すると熱がとても高くなり、
修復の仕上げの期間は、暑さとの闘いだったそうです。


TARO MONEYは、第2次販売が、
ご購入いただいたみなさまのお手もとにほぼわたり、
お金も集まってきています。
次の寄付は、修復家・吉村絵美留さんの
目となって活躍した、
この「実体顕微鏡」と「人工太陽灯」の
合計400万円に
充てさせていただきたいと思います。

7月7日、『明日の神話』除幕のその瞬間、
マジシャンの前田知洋さんが
ちょうど吉村さんのとなりにいらしたそうです。
そこで「ちょっと手を撮っていいですか?」と
声を掛けられて、
吉村さんの手の写真を撮影されました。
(前田さんは、ご職業柄、
 いろんな方々の手の写真を
 コレクションなさっているんだそうです)

みなさん、これが、
『明日の神話』を1年かけて修復なさった、
吉村さんの手です。

photo by tomohiro maeda

いま販売中の第3次TARO MONEYの寄付は、
「お嫁入りまで数年かかったとしても、
 倉庫のお金は
 TARO MONEYが出します」
と言えるようになれればと思っています。

2006-07-13-THU


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