■11月28日■
Tシャツ鼎談第5回
自分と未来を、信じてる。



糸井 若い子でも「本を読むのが好き」な人って、
伊賀くんみたいに、
やっぱりいるんですよね。
伊賀 そうっすね。
趣味や仕事は違うのに、
「本好き」なだけで
繋がってるところもあったり。
1年に1回ぐらいしか会わないのに、
安部公房をいきなりもらうとか(笑)。
糸井
秋山
ワハハハハハ!
伊賀 「これはお前、絶対好きだよな、マジ」
とか言われて(笑)。
秋山 読んで感想を
言ったりするんですか?
伊賀 夜に遊びに行ったときなんかに、
「あれはヤバイよ」って言いあう。
遊びに行って、話は本のことばっかり。
「あーれは、ほんとにすごい」って。
糸井 なんだか、1冊ずつの本の重さが、
昔の子たちよりも大きいようなかんじだね。
いっぱい本を読んでるんじゃなくって、
1コを「ちゃんと」読んでるような
気がするんです。
そのほうが、本としては幸せな読まれ方ですよ。
永ちゃんの本をつくったときに、
「俺は本なんて、一生に1冊しか読まないよ」
って言っているヤツがその本を読んでた、
というエピソードがあって、
それがものすごくうれしかった。
伊賀 ‥‥ちなみに、僕は
20冊ぐらい買いましたよ、『成りあがり』は。
すいません、50、いってなくて。
糸井 わー、ほんと?
うれしいです。
伊賀 僕、『MOTHER』も
並んで買ったんですよ。
糸井 ほんとに?
ありがとね(笑)。
伊賀 小5ぐらいのときですよ、あの赤い箱を。
今日それを、ぜひ言わないと、と
思って来たんです。
糸井 『MOTHER』って、本みたいでしょう?
伊賀 そうですね。
糸井 『MOTHER』を5年生かぁ。
うれしいなぁ。
秋山 ふふふ。
ほかは、どんな本が好き?
伊賀 宮沢賢治とか、すごい好きです。
あとは、夏目漱石。
夏目漱石は『坊ちゃん』が超好きですね。
あと、『ライ麦畑でつかまえて』が、
すんごい好きなんですよ。
糸井 ライ麦一派なんだ(笑)。
昔の子みたいだね、なんか。
秋山 なんか、古いな。
糸井 古着、古着だ。
思えば、『MOTHER』のテイストも
古着だしなぁ。
言ってみれば、岡本太郎も、そうだ。
大(おお)古着だよ。
伊賀 偉大な大古着を、
いっぱいいっぱい、
たのしませてもらってる。
秋山 けっこう俺たちの世代が
見すごしてきた空白を埋めている気がするな!
いまも古着を買うことが多いんですか?
伊賀 ほとんど7割ぐらいが古着ですね。
新品って、なじまないから苦手なんです。
ジーパンとかも、
いま、外ではこれを履いてるんですけど、
家に帰ったら、
次の日用のジーパンに
履き替えて寝るんですよ。
糸井 あ、わかる。俺も、
家で履いて、まず、鍛えます。
秋山 寝るときに?
伊賀 僕は寝るときも
ジーパンとTシャツなんです。
糸井 俺は、それはしてないけどね(笑)。
伊賀 ジーパンを買ってくると、
とりあえず一緒に風呂とか入ったりして。
それで、乾かして、寝るときずっと着てて。
足に合ってきたなって思ったら
外に履いて出るんですよ。
秋山 はぁぁ。
伊賀 Tシャツも、そういうかんじなんです。
ジャケットは新品で着たりするんですけど。
基本的に、肌に慣れ親しんだ
コンディションのものが好きです。
糸井 家に帰って、
なるべく長い時間履いてないと、
なじまないんだよね。
苦労すんのよ、けっこう(笑)。
伊賀 本とかも、読み込んで、読み込んで
たのしむほうですね。
糸井 ところで、岡本太郎って、
自分のつくった壁画とかを、
壊されてもぜんぜん平気だって
聞いたことがあるんだけど。
伊賀 その話、すごい好きなんです。
つくったらもうどうでもいい、と
思っているんですよね。
すごい青臭いこと言うと、
自分と未来を信じてるかんじがして、
すごい、いいなと思います。
糸井 俺自身も、自分のつくったものに対して、
一度つくってしまえば
あとはどうでもいいって、考えるほうなんです。
でも、
「『MOTHER』やってたんです」
とか、言われるんですよね、
伊賀くんみたいな人に(笑)。
自分はどうでもいいと思ってても、
人の心には残ってるから。
伊賀 はい。
糸井 自分の家には『MOTHER』のソフトや
関連のグッズなんてひとつもない。
レコードや本も、
探してやっとあったりする程度です。
だけど、いいものをつくると
人が大事に持っててくれるんですね。

(つづきます!)

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