オリジナル・ラヴの田島貴男といえば、
泣く子も黙る、サウンドのクオリティと歌唱力。
そんな「こわいものなし」にみえる田島さんが、
TAROの文庫本をボロボロになるまで
読み込んでいるという噂を聞きました。
以前ケーキづくりが趣味だったという田島さんに、
岡本太郎記念館の庭にあるカフェ
a Piece of Cake
お話をうかがうことにしましたよ。


第7回
権威をなしにした、歌のすばらしさをやりきれたら。


田島 いくら才能があっても
歌ってると、ばれるんですよ。
例えば、自分の気持ちが高まっている歌は、
みんなに伝わるし、一歩置いてる歌というのは、
一歩置いてる歌どまり。
── それは、お客さんの反応で
わかるものなんですか?
田島 ライブでは、ほんとによくわかる。
いいとき悪いとき、ありますよ。
そういう面ではね、
矢沢さんはすごいな、歌手だなあ、って思います。
武道館で、「時間よ止まれ」とか
「チャイナタウン」を聴くと
毎回グッと来るんですよ。
同業者として、ほんとにびっくりしますよ。
── ライブというのは、毎回満点というわけには、
なかなかいかないもので、
0点のときもあれば、500点のときもある。
そこで、録音してCDというひとつのパックで
100点を極めようとする音楽づくりもある。
田島 あ、でもぼくは、じつを言うと、得意なのは
ライブなんですよ。
できればCDつくりたくないっていうくらい(笑)。
ライブで新しい曲をやんなきゃいけないから
アルバムつくるっていうかんじです。
── わー、それは、みんなぜひ
オリジナル・ラヴのライブに
行くべきですね。
田島 そうですよ!
みんな、
なんでライブに来てくんないかなあ!!
── ハハハハ!
田島 ライブはおもしろいですよ、やっていて。
だめだったときも、もちろんあるんですけど、
それも一個一個よくわかるし。
歌って、かなりメンタルなものなんですよ。
「アッ! 客がうけてない。
 うける歌を歌わなきゃ、っていう歌」を
歌ってたりとかね!
── (笑)歌いながらわかるんですか?
田島 最近は、そうですね。
いつもみてくれるかたは、
わかっていただけていると思いますけど、
ぜひライブに来てくださいよ。
歌、ぜんぜん違いますから。
CDは、あんまり得意じゃないんです。
ッハハハハ!
── もしかしてそれは、
CDをつくるのが好きだからじゃないでしょうか?
田島 うーん、好きですけどね。
というか、嫌いなくらい、大っ嫌いなくらい好き、
というか(笑)。そんなかんじです。
また曲つくんのかよ、俺!
ざけんなよ、
でも、つ〜くってやるぜ!
最高の曲を!
って。
── いいですねぇ。
田島 アルバム6枚目くらいから、そんな感じですよ、
ずーっと(笑)。
── いやあ、ほんとに意外です。
田島 そんなことないですかね、みんな。
岡本太郎さんだって、そうでしょう。
岡本太郎さんも矢沢さんも
がんばってるイメージが、ちゃんとある。
そこに共感するのかなぁ。
── がんばってるんだ、っていうことが
見えない構造になっているんですかね、いまは。
田島 がんばってるのってかっこわるいし、
みっともないからね。
がんばってるってことを
「売り」にしちゃだめだけど、
「そんなにがんばらなくっていいよ」
なんてことは、ぜったい言っちゃいけない。
ほんとに。
もちろん、ときと場合によると思うんだけど、
「あきらめが肝心」とか
「がんばりすぎない」とか、
そういう言葉を得るには
そこまでに自分が
どれだけがんばったかが大事です。
ふつうにしているテンションで
「がんばんなくてもいいよ」と
最初から言われるとしたらね、
闘いを最初から
よけるだけ
って気がするな。
そこでがんばって、たいへんな思いをしちゃって、
ずーっとやっていくと、
いつのまにか実力と言われる力が
ついてくるんじゃないかなあ、という気がする。
そうやって、やっと僕みたいな者も、
世の中に出てミュージシャンと
呼ばれるようになるのかな。
20代の自分って、はたして
ミュージシャンとかアーティストって
呼べたのかなって思います。
── 田島さんはいま、37歳ですよね。
そのあたりのことが開けてきたのは、
30歳越えてからですか?
田島 自分がライブをやっていて
やっと「ほんといいライブだったな」と
思えるようになったのは、
33‥‥とか4とか5とか。
── つい最近ですね。
田島 そう。20代のころはね、
まったく
わかりませんでした。
── 最近は、他の方のプロデュースをなさったり。
田島 はい、すこしだけね。
── しつこいようですが、田島さんは、
プロデューサーとして活躍なさって、
音楽業界に君臨して、
そういうかんじの大御所に
なられていくのかと思ってました(笑)。
田島 なーんでですか(笑)。
音楽業界に君臨したかないですよ。
それはね、音楽をリタイヤするということです。
僕は、お客さんの前で、
最高の出し物をやれてる状況にあるのが理想です。
矢沢さんとか、ほんとにうらやましいですよ。
50歳すぎて、あーんなこと、やってんだから。
ほんっっとに、奇跡的だし、あれが
ミュージシャンの夢なんじゃないでしょうか。
武道館いっぱいにして、
肉体的にも精神的にも
あんなコンサートやってるなんて。
やっぱり、半端じゃないんですね。
おかしな人だと思うんですけどね。
── はい。
田島 矢沢さんはライブを、
おそらく30代のころと、
おんなじテンションのものを
やっていると思うんですよ。
同じように歌ってる。
ポール・マッカートニーも
60歳越えてるだろうに、
東京ドームで3日間つづけて、
2時間ちょっとのステージをやる。
ほとんど立ちっぱなしだよね。
いや、もう、すごいよ!
そこに泣きましたね、僕は。
すごい人の特徴って、
みんなそんなかんじするんですよ。
喜納昌吉(きな・しょうきち)さんもそうだ。
3年くらい前にライブをみにいったんですけど、
枯れてるってかんじはぜんっぜん、ない。
もう、
獣みたいな歌なんですよ。
ハハハハ!
なんだ、この人は!
ヘヴィメタルみたいなサンシンでね。
岡本太郎さんだって、そうだったでしょ。
あの人たちがやったくらいの、
「夢」をつくりだす力を、
どんだけ俺らが
持てんのか
、って気がします。
── 敏子さんも小説を書いてますし。
田島 かぁーっこいいと思いますよ。
エッチなやつでしょ?
そこはすごいよ。
── 一瞬一瞬で燃え尽きて。
田島 うん。アルバム1枚つくると、
頭まっしろになりますからね。
次に曲書くときは、
完全に書き方を忘れてます。
ほーんと、ゼロになる。
「作曲って、なんだっけ?」と。
── ほんとですか?
田島 CDをつくる最初の1ヶ月2ヶ月というのは、
作曲のしかたを思い出す作業です(笑)。
ひどいときには、
音楽の聴き方もわかんなくなっちゃう。
── 「音楽って、なにがいいんだっけ?」
田島 「ま、とりあえず、
 ビートルズとかを聴いてみるか。
 あ、そうだったね、そうだったね」(笑)
── そこまで1回1回に
つぎ込むってことですね。
田島 ええ。1回1回、
忘れるくらいにまで、虚脱する。
── 毎回毎回、たいへんだってことですね。
田島 それをね、
50歳までやるんだ、
ってことです。
── それが一流ですね‥‥。
権威をもたない、一流。
田島 そうだね。つまり、
ばかにされないことや、
権威に固執した仕事

をしているのか、それとも
そうじゃないところで
表現
しているのか。
そこに自分を賭けてやってるか。
そういうことで違ってくるんだと思います。
だから、岡本太郎さんはバカにされるんですよ。
でも僕らは、そこに打たれるわけです。
だって、「えらいです」みたいな人の歌なんて、
聴きたくないですよね?
「権威」とか「よく知ってる」とかをなしにした
歌のすばらしさをやりきれたらいいなと
ずっと思ってる。
岡本太郎さんは、そんなふうなことをすべて
おおっぴらに言ってる人なんですね。


★田島貴男さんの遺伝子の巻・おわりです。
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2004-01-06-TUE

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