第6回 なにかあったら千円
松本零士さんのマンガに
『男おいどん』というのがありましたよね。
ありました、ありました。
パンツに「サルマタケ」という
キノコが生えてくるやつ。
あれは、おもしろかったなぁ。
松本零士さんは
『銀河鉄道999』で有名ですけど‥‥。
松本零士といえば『男おいどん』ですよ!
(笑)ですよねぇ!
あれ、好きなんです。
『銀河鉄道999』は、
オレ、読まなかったですからね。
男の、むさくるしい部屋に
きれいな女の人があらわれる‥‥。
それが、はかなくてよかったんですよ。
そうそう。
その
「きれいな女の人成分」が
のちの『銀河鉄道999』に
移行していったんでしょうね。

ぼくは、『男おいどん』を
「これは、オレだ」
と思いながら、読んでいたんです。
ぼくも、そうです。
食うものがないから
新聞紙をやぶいて食べたり、
キャベツが1玉あれば1日中食えるとか、
そういう生活でしたよね?
キャベツは‥‥
極上の酒のつまみです。
(笑)
塩とコショウで食べる。

こないだ
『酒とつまみ』という
ものすごいマイナーな雑誌の
「安いつまみ」という特集で
キャベツを氷水につけといて、
塩とコショウをふるというのを
紹介したんですけど、
みんな、「けっこううまい」と言っていて。
(笑)

タモリさん、
当時、大学はちゃんと出たんですか?
いや、中退です。
ということは、
プータローですよね?
ぼくも、そうでした。

50円玉を
セメダインで、下宿の窓際に
はりつけちゃうんです。

そうすると、
50円玉はそこにあるけど、
セメダインでついているから、
そのカネは、使えない。
でも、ほんとに必死になったら
窓枠の木がハズれてもいいから、
それを取って、使えるんですね。

その50円玉が当時の最後のボタンでした。
へぇー。
「あの50円がある」という安心感を持って、
毎日、貧乏していたんですけど。
誰かが、
「東京にいくときに、おふくろが
 千円札を内ポケットにぬいこんだ」
といっていて。
(笑)
出しておいたら
使っちゃうから、ぬいこんじゃうという。
(笑)わかりますねぇ。
わかります、わかります。
その後、
『北の国から』で、
息子が東京にいくときに
田中邦衛が、トラックの運転手に
2万円を渡していますけど、
あれには、やっぱり時代の差を感じましたよね。
ぜんぜんちがいますね。
オレたちのころは
「なにかあったら千円」でしたよね。
(笑)うん。
明日に、続きます
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2007-01-01-MON

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN