翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

第六十四回配信 もしものコーナー
ゴア編Part6 その2


前回に引き続きお付き合いください、
もしも、アル・ゴアが日記をつけていたら‥‥

■5月30日(火)
映画『不都合な真実』の興行成績の速報値がでた。
トータルでは22位でしかなかったけど、
1館あたりの興行収入(週末3日間)がなんと$70,585。
これは、
・今年に入っての最高記録
・メモリアルディの週末に公開された映画の歴代1位
・ドキュメンタリー映画の歴代1位
ですよ。

たった4館で公開して話題をつくる戦略、成功したね。

■6月2日(金)
映画の宣伝のために、
最近よくTVのニュース番組やトークショーに出演する。
そこで必ずきかれるのは、
「2008年の大統領選挙には出馬しますか?」という質問。

これには明確に、出馬する気持ちはないと答えている。

実は、2000年の選挙で私が何を間違ったのか
最近やっと分かったんだよね。

政策的には双方が中道にみえていた2000年の選挙では
有権者にわかりやすい争点がなかった。
その中で私は、有権者にはいつまでたっても争点が
見えないだろうという見通しを
立てることが出来なかった。

だから、
「賢明な有権者のみなさん、
 私の政策のほうが有効だって
 賢明なんだからおわかりですよね。
 根拠はこの数字とあの数字とその数字と‥‥」
というトーンで、一生懸命差別化しようとしていた。
ただ、アメリカの有権者は、
私が期待したほど賢明でなかった。
数字を並べられて、みんな退屈しただけだったんだよ。

一方、ブッシュは
「数字とか難しいことは置いといて、
 私はあなたと同じ価値観をもっていますよ」
と話した。

価値観を共有することって、
どんなに頭が悪くてもできるんだよね!
例えば進化論を否定して、
インテリジェント・デザイン説なんてごまかしを
学校で教えようなんて主張は、まさにこれ。

というわけで、
一般投票では、私の得票数がおおかったが、
頭の悪い人たちにたいして
「頭悪くても大丈夫ですよ」という
メッセージで伝えたブッシュが、
皮肉なことに頭の悪さを肯定したがゆえに
実力以上に票を獲得して選挙には勝った。

‥‥ということに思い至ったんで、
潜在的大統領候補という
立場をとらないことにしたんだ。
これで、あんまり賢明でない人たちにむかって、
“賢明な有権者の皆様”っていわないで済むからね。

私が地球温暖化についての講演をはじめたのは
70年代、議員になりたての頃だ。
それから数えるともう1000回以上この問題について
講演している。
映画『不都合な真実』もその講演を
そのまま映画化しただけなんだけど、
大衆は賢明であるという前提をとっぱらったからこそ
説得力をもつものになっている。

映画=講演の冒頭ではまず、
「私は元・次期合衆国大統領でした」
と自虐ネタで笑かす。
で、会場が沸いたところで
「ここは、笑うとこじゃないと思うんですけどね」
で、また笑わせて客を掴んだりしてる。

これ実は、
“頭の悪いアメリカのみなさん、
 これからみなさんが退屈しないようにお話しますから
 賢い俺様のだいじな話を聞いてください”
というスタンスを宣言してるんだよね。

その上で、ブッシュの
「価値観」という“バカでもOK主義”に
対抗するために倫理観という概念を
映画の最後には提示している。

価値観と倫理観とどう違うんだよ?
ってとこなんだけど、
「未来の自分そして将来の世代のために
 今正しいことをしよう。
 地球温暖化の未曾有の危機をを回避するために
 今すぐ行動しよう」というのが倫理観だ。

講演を繰り返しての実感でもあるんだけど、
頭の悪い人だって
「未来のために行動しようよ、いいことをしようよ」
というと
気分が良くなるんで、話が通じるんだよね。
というわけで、アメリカ大統領を諦めたことで
やっとアメリカの大衆に通じる話が
出来るようになったんだから皮肉なもんだね。

『不都合な真実』の映画評では、
「(環境問題に全く関心を示さなかった)
 アメリカが
 やっとゴアに追いついた!」
とか書かれてるけど
実態は、私がアメリカに合わせる方法を学んだんだよ。

アル・ゴア2.0も楽じゃないよ。

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2006-06-22-THU

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