翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

第六十三回配信 もしものコーナー
ゴア編Part6 その1


ものすごく久しぶりに戻ってきました、
もしものコーナー。

もしも、アル・ゴア(2000年の大統領選挙で
大統領になり損ねた人です、覚えてますか?)が
日記をつけていたら‥‥

■4月10日(月)
私の顔のアップが表紙になった
雑誌『WIRED』が発売になる。
特集は「アル・ゴアの甦り」。
甦りじゃないっつーの!
ある意味お前らに殺されたんだよ、私は。

だいたいだな、2000年の大統領選挙の最中、
「ゴアがインターネットを発明した(微妙だけどね)」
なんて記事を掲載しやがったのがこいつらですよ。
で、『WIRED』の記事なんかまともに読みやしない
ブッシュ支持者にその言葉尻だけを捉えられて、
私は“傲慢な嘘つき”ってことにされてしまった。

「インターネットの商業利用を可能にするための立法に
 私は尽力した」
って本当は発言しただけなのに、
どっから“発明”って出てきたんだよ?
ネットにしか興味のない負け犬オタクどもが!
お前ら雑誌屋は揚げ足取りだけやってりゃ
商売になるけど、
こっちには地球の運命がかかってたんだよ!
ボケ雑誌が!

‥‥という不愉快な思い出が甦り、
表紙の写真がめちゃめちゃ怖い顔になっちゃった。
まあ、私の映画と本“AnInconvenientTruth”
(以下『不都合な真実』)の宣伝が必要だから、
今回は取材さしてやったけどさ。

それからもうひとつ、
高級ファッション雑誌ヴァニティ・フェア5月号の
表紙にもなった。
4月26日のアースデイにあわせた“環境特別号”で
ジャングル風の濃緑の背景に、
ジュリア・ロバーツ、ジョージ・クルーニー、
ロバート・F・ケネディ,Jr.と私の4人が登場。
ロバートって、
環境保護法律家として活躍してるんだけど、
若いときにドラッグで有罪判決くらって
罰として800時間ハドソン川浄化の
奉仕活動をやらされたらしい。
そのときに環境保護団体に雇われて
今や一線の環境活動家。人生わかんないものだよ。

ヴァニティ・フェアには私のエッセイも載ってるけど、
内容は『不都合な真実』の映画と
本でいってることそのまま。
温暖化の影響で北極の氷が既に融けはじめていて
氷ごと流されて溺れ死ぬ北極グマが増えているとか、
ハリケーン・カトリナは温暖化の影響が
現実のものになった最初の一例に過ぎないとか‥‥
そんな話だ。

むしろ重要なのは、
ブリティッシュ・ペトロリアムCEO
ジョン・ブラウン卿に、
それぞれ共和党の
シュワルツネッガー(カリフォルニア州知事)と
パタキ(ニューヨーク州知事)までが、
温化対策に積極的に取り組んでいる側として
登場していること。

やっとのことで、アメリカでの温暖化対策について
不要と思うか?/重要と思うか?
の対立が、
保守か/リベラルか、とか、
共和党か/民主党か
じゃなくて
バカか?/まともか?
の対立になってきた感じだね。

■5月21日(日)
映画祭で私の映画の宣伝をするために、
カンヌにやってきた。
15歳の夏休みにサルトルだのカミュだの
実存主義哲学の勉強をするために
やってきて以来のカンヌだ。
今日だけで23件もインタビューを受けたけど、
フランス語で話すのはちょっと疲れるね。
でも、アメリカで流れているカンヌ映画祭の
ニュースは、
『Xメンファイナル・ディシジョン』
の話題くらいらしい。
カンヌ映画祭の華やかなイメージと裏腹に
コンペで勝つのは地味な映画が
多いからしかたないけどね。

■5月24日(水)
映画『不都合な真実』が今日公開になった。
普通映画は金曜日に公開になるのに、
あえて水曜日公開。
水曜日公開って、『スターウォーズ』とかの
超人気・超大作の公開パターンなんだよね。
しかも、年間でもっとも興行成績が期待される映画が
公開されるメモリアル・デイの連休にからめての公開だ。
ちなみに今年のメモリアル・デイの大作は
『Xメンファイナル・ディシジョン』3690館で公開。
私の映画は、ニューヨークと
ロサンゼルス2館ずつの計4館。

これにはいろいろ理由がある。
水曜日公開の理由は、正直言って宣伝費がないこと。
そもそも何千館も一度に押さえるような
超大作じゃないからTVCMの予算も限られてる。
仕方ないから、マスコミ関係者が多いNYとLAで
水曜日に先行公開して劇場でみてもらって、
週末までに記事にしてもらって
話題をつくろうって寸法さ。

逆に、メモリアルデイの週末に公開したのは、
実はエンタテイメント大作の事情と一緒だ。
2004年の『シュレック2』、
2005年の『スター・ウォーズ エピソード3』
なんかをみても分かるように、
この連休に映画業界は
その年、興行的に一番期待している作品を
ぶつけてくる。
なぜ夏休み前のこの週末かというと、
DVD発売に関係がある。
以前は業界ルールとして
「映画封切日からDVD発売日まで
 6ヶ月、間を空けなければいけない」
というのがあった。
つまり、5月末のこの週末の6ヵ月後は11月末。
クリスマス商戦にDVD発売を間に合わせるのに
ぎりぎりのタイミングが
この5月末の連休だったってこと。

ただ、最近DVD発売日は
どんどん前倒しになっていて、
封切り後4ヶ月くらいになっている。
とにかくそういう業界ルールのもとで
『不都合な真実』もこの週末に封切られた。
つまり、5月末の4ヵ月後は10月末。
11月頭の議会の中間選挙の
投票日直前に発売できるわけだ!

どうせ共和党は争点隠しで、
ゲイカップルの結婚禁止のための憲法改正とか、
ただの弱いものいじめを
持ち出したりしてくるだろうけど、
温暖化対策をしないってのは、
自分で自分をいじめることだからね。
そろそろアメリカ人もそれに気づいて欲しいよ。

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2006-06-21-WED

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