翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第四十五回配信 アメリカのテロボケ率 その1


信じがたいことですが、
ブッシュ政権は高支持率をつづけています。

5月21〜23日の調査で47%
50%をさすがに割っているものの、
おぞましい写真やビデオが大量に流出した
アブグレイブの囚人虐待スキャンダルを経て、
この数字です。

彼の父親である41代大統領ジョージ・H・W・ブッシュの
政権同時期つまり任期4年目の5月の支持率が40%。
湾岸戦争の圧勝で稼いだ支持率を、
経済の不振が見事に食いつぶしたのが
この時期のH・W・ブッシュでした。

この頃と今日現在を比べてみましょう。
イラク戦争の圧勝とはみせかけだけで、
米軍の犠牲者は日々増えています。
仕方なくイラクへの政権移譲を形式的に成立させることで
軍事・外交上の失敗を取り繕おうとしているところ。
経済については雇用が回復しつつあるとはいえ、
2002年に減少した分には遠く及んでいません。
また原油高が経済を直撃していますので、
インフレ懸念すらでてきました。
こう比べると、今日現在のブッシュ大統領の支持率は
政権同時期の彼の父親と同じ40%でもいいようなもの。
47%は高すぎます。

すずきちだけでなく世界中の人が
ブッシュ大統領の支持率の高止まりを
心の底から不思議に感じているんじゃないかと思いますが、
今回はこの謎について考えてみたいと思います。

アメリカの大統領の支持率は、
直訳すると業務承認率(JOB APPROVAL RATE)。
「ジョージWブッシュが大統領としての職を
 遂行しているやり方を承認しますか、不承認ですか?」
という質問に「承認する」と答えた人の割合です。
選択肢は「承認する」「不承認」「意見なし」の三つのみ。

日本の内閣支持率は、
"何かやってくれそう"なんて漠然とした期待とか、
メディアを通して見え隠れする首相の人となりに対する
好き/嫌いの感情で左右される部分も大きいですが、
質問文を素直に読む限り米大統領の業務承認率は、
大統領の業務遂行だけについて承認しているかどうか、
の数字といえます。

だからこそ47%は驚異的です。
アブグレイブ刑務所の囚人虐待のニュースでは、
4月半ばにスキャンダルが表面化して以来1ヶ月以上、
連日これでもかというほど、
イラクの囚人たちの裸のお尻が
テレビや新聞で報道され続けました。
イラク人のお尻ばっかり毎日みせつけられるような
世の中になってしまったのに、
アメリカ人は何を承認しているのか?
お尻が好きなんでしょうか?

ひとつ考えられるのは、ブッシュ大統領の支持率には
「9-11ハンデ」があるのではないかということです。

2001年9月7〜10日の調査で
支持51%不支持39%だったブッシュの支持率は、
テロ直後14〜15日の調査で
支持86%不支持10%へと変化しました。

ただ、ここで注目すべきは「意見なし」と
答えた人の変化です。
9-11直前は10%いたのが9-11直後は4%になっています。
その差6%。

9-11の大変な衝撃は、アメリカ国民をひとつにしました。
きわめて単純に、政治について何の意見もなかったのに、
「テロ対策らしきことなら、
戦争だろうがなんだろうが、なにをやってもいい。
大量破壊兵器だろうがなんだろうが
戦争の理由も問わない。
アメリカ国内外を問わず、
人権侵害だって多少は目をつぶる」とばかりに
ブッシュ支持に回った人が6%いたと仮定して、
この6%をアメリカ人の"テロボケ率"と考えてみましょう。
政権や米軍が、どんな失敗や不正を働いても
9-11の衝撃を思い起こして、
テロとの戦いのためならいいじゃないかと、
なんでもありにしちゃうのがテロボケです。

支持率の読み方としては、
発表された支持率から6%引いた数字が
このテロボケ心理調整後のリアル支持率
と考えてみることにするのです。
6%なら、父親ブッシュが政権4年目5月に記録した40%を
子ブッシュ政権同時期の適正値と仮定しても、
実際の調査結果47%との差7%とほぼ合致します。

テロボケ率6%、
意外と正確な数字なんじゃないでしょうか。

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2004-06-24-THU

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