翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第四十三回配信 脛かじり息子の脛の傷


古賀潤一郎議員さんの学歴詐称が話題になっています。

ペッパーダイン大学という、
結構ちゃんとした大学に通って、
ある程度は単位もとっていたようですが、
どこの大学だとか、どれくらい通ったかなんてことは
一切お構いなしに「卒業」を騙ったということが
問題にされたようですね。
また、ペッパーダイン大学が、
007のピアース・ブロスナンや
メル・ギブソンの自宅が立ち並ぶ超高級住宅地
カリフォルニア州のマリブにある
お金持ち子弟向けの大学であったことも、
脛かじり息子がアメリカで遊んでたような印象を強め、
事態を一層悪くしているようです。

でも、古賀議員はこの大学に数年間通って、
そこそこ単位もとっていたようですし、
彼の学歴はほかの国会議員さんたちと比べて
本当のところいかほどのものなのでしょうか?

アメリカの人口は日本の倍以上ある一方、
アメリカの大概の大学は日本の大学よりも
規模が小さいですから、
聞いたことがないような大学でもかなりレベルは高い
と考えることができます。
ですから人口比だけでいっても
アメリカの入学難易度ランキングを日本のそれに
置き換える場合には順位が1/2か、それ以上であると
考えるのが妥当です。
雑誌US NEWSがだしている
2004年版のアメリカの大学入学難易度ランキングによると、
国公立・私立をあわせた全米ランキングで
ペパーダイン大学は難易度51位。
"最も難易度の高い大学"として分類されています。
このランキングの最上位には
ハーバード、プリンストン、イェール、MITなど、
お馴染みの有名大学が並びますが、
これらと同じグループに一応入っています。
この数字を2で割るとだいたい25位以内。
単純に難易度ランキングだけで日本の大学にあてはめると、
立命館・成蹊・成城くらいのイメージです。

高校卒業レベルの学生の能力は
日本もアメリカも同じくらいだろうという前提で
こういう比較が成り立つわけですが、
研究教育機関としての大学の質を
相対的な入学難易度だけで類推するのには、
実は大変な無理があるのです。
テキサス大学オースティン校は
同じランキングで53位ですが、この大学では、
2003年のノーベル賞文学賞受賞者J.M.クッツェーが
Ph.Dを取得しています。
さらに少し落ちる56位のパーデュー大学も
ノーベル賞受賞者を出しています。

古賀議員のペッパーダイン大学は
ノーベル賞受賞者こそまだいないようですが、
それでもジンバブエから同大学に留学した
クリストファー・チェトサンガは
ノーベル賞候補といわれています。

ひるがえってみると、
今回の選挙での古賀議員の対立候補 山崎拓と、
古賀議員の学歴詐称を「泥棒のはじまり」とよんだ
福田官房長官の出身校早稲田、ついでに小泉首相の慶応、
いずれの大学もノーベル賞には今まで縁がありません。
このスキャンダルを報道しているジャーナリストの学歴も
おおむね似たようなものでしょう。

大学のレベルの国際比較のひとつのものさしとして
ノーベル賞を基準にしてみましたが、
トップレベルのアメリカの大学には、
才能はもちろん、志の面においても世界を変えるような
人材が集まって切磋琢磨しているのです。
古賀潤一郎議員は、
本人の当時の志がどれくらいだったかはともかく、
そんな世界標準の知的環境下で
それなりに単位をそろえたのですから、
胸を張って「ペッパーダイン大学中退」と届け出ていれば
よかったのにと思います。

ただ、彼は今回の騒動で国会議員として
経歴に致命的な欠陥があることを、
自分で白状してしまいました。学歴詐称ではありません。

釈明の過程で、
「グリーンカード申請の手続きをしていた弁護士が
 卒業証書をあずかった」
と説明していましたが、
これが本当ならどこの大学を卒業したなぞ関係なく
日本の国会議員をつとめる資はないと思います。

グリーンカードとは米国の永住権ですが、
市民権ではありませんから国籍は移動しません。
ただ、これを取得するとアメリカ合衆国政府に対して
義務がいろいろと発生します。
ひとつは納税の義務であり、
さらに18-25歳の男性の場合は徴兵登録の義務があります。
これは、米軍が徴兵制に移行した際に、
召集されるべき人材の名簿リストに
名前を登録しておく仕組みです。

古賀潤一郎は1958年生。
彼がペッパーダインに在籍していたとされる
1978-82年当時、年齢は20〜24歳。
つまり、グリーンカードをこのとき取得していたのなら
米軍への徴兵登録をしていた可能性があります。
少なくともその義務がありました。
また、結局グリーンカードを取得していなかったにしても、
そのような義務は当然承知して申請していたはずです。
アメリカで徴兵が実施されたのは73年が最後ですが、
82年ならば米国における徴兵制度が
今よりよほど実感のある時期だったでしょう。

日本国籍を持つ人が
アメリカ人との結婚以外の理由でグリーンカードを
申請する場合の理由はさまざまです。
多くはビジネス上の必要にかられてのものでしょう。
だいたい、アメリカで成功する日本人というのは、
いい意味での日本人としての誇りみたいなものを
維持しているからこそ成功したという人が多いですし、
グリーンカード保持自体が日本人として恥ずべきこと
であるとは決して思いません。

ただ、これが日本の国会議員となると話は全く違います。
外国の軍隊に徴兵されるかもしれないということを承知で
外国の永住権を取得(しようと)した男・・・
その事実を恥ずかしげもなく、公表する男・・・

古賀潤一郎がグリーンカードを取得し、
徴兵名簿に登録していればアメリカ人もどきです。
グリーンカード取得に失敗していればアメリカ人くずれ。
日本の国会議員として、リーダーシップを発揮するには
いずれにせよ激しく不適格です。

今回の古賀潤一郎スキャンダルは、
世界的なレベルに遠く及ばない大学で学んだ
政府閣僚とジャーナリストたちが寄ってたかって、
アメリカ人もどき/くずれのくせに
衆議院議員になってしまった男の学歴を批判している・・・
というのが実態なんだと思います。

なんつーか、げっそりしますよね、こういうの。

鈴木すずきちさんへ激励や感想などは、
メールの表題に「鈴木すずきちさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-02-05-THU

BACK
戻る