翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第四十一回配信 
スプリングスティーンの絶対音感 その1


先日、ロサンゼルス ドジャースタジアムで行われた
ブルース・スプリングスティーンと
Eストリート・バンドのライブへ行ってきました。

彼は今年で54歳になるはずですが、
ロックのライブ・パフォーマーとしては、
依然として絶対的に一番の地位を保ち続けています。
すずきちはスプリングスティーンのライブを
2000年にカリフォルニアの
アローヘッド・アナハイム・ポンドでも
みてるのですけれど、
ふたつのライブを比較すると、
スプリングスティーン自身とEストリートバンド
そして観客の三者の関係が変化してゆくさまに
まさにアメリカが変化している様子が
観察できたような気がします。

2000年のツアーは、
オリジナルアルバムの発売とは無関係に行われた
"ザ・ボス"ことスプリングスティーンと
Eストリートバンドとのリユニオン・ツアーで、
選曲は過去のアルバムの集大成でした。

80年代終わり以降、Eストリートバンドと分かれて
ソロ名義のアルバムを発表してきたものの、
90年代以降のスプリングスティーンには、
試行錯誤を続けている印象が消えませんでした。
大半のファンの素直な思いとしては、
Eストリートバンドと活動した
70年代から80年代半ばの期間に
レコーディング・アーティストとしても
ライブ・パフォーマーとしても
スプリングスティーンの音楽は
既に完成してしまっていたのです。
ですから15年間ほどの空白の後、
再びEストリートバンドと組んだツアーが
常軌を逸して盛り上がるのも当然でした。

すずきち自身の身の上話をすれば、
85年『ボーン・イン・ザUSA』ツアーの
初来日のときはチケットが取れず涙をのみ、
88年のアムネスティ・インターナショナルの
東京ドームでのチャリティコンサートが
スプリングスティーンをライブでみた最初でした。
ただその頃はまだ日本のロックの観客が
成熟しておらず、かけあいもままなりませんでした。
"マイ・ホームタウン"を演奏してボスが
"This is your home town〜♪"と歌い、
観客に"MY〜♪ home town〜♪"と歌わせようという
趣向を試みたものの、
観客がオウム返しに
"YOUR home town 〜♪"としか歌わず、
東京ドームに換算して一杯分の困惑が広がったという
瞬間もあったのです。これまた別の意味で涙。
その後97年に東京でコンサートがあったものの、
ギター一本のアコースティック・ライブ。
地味でした。
東京国際フォーラムの開館記念コンサートだったのですが、
建物の動線の悪さとか(おかげで最初の曲を聴き逃した)、
都の施設だったはずなのに車椅子席が妙に少なかったり、
館内の案内が絶望的に不備で多くの観客が
閉演後5分間ほど難民状態で館内をさまよったり、
なんてことばかりを覚えています。

ですから、2000年のアナハイムでのコンサートは、
すずきちが観客の盛り上がりを含めて
スプリングスティーン本来のライブを体験した最初でした。

開演前からブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥス!という
観客の雄叫びが、普段はアイスホッケー・アリーナである
アローヘッド・アナハイム・ポンドで散々飛びかいます。
すずきちの席は3階でしたが、
真横に近い感じで角度のないところからステージを眺める
感覚的にはかなり近い席。
Eストリートバンドとボスとの再会がテーマの
リユニオン・ツアーをみるには理想的な位置でした。

ライブがはじまると、とにかく会場が大合唱。
特に傑作アルバム3作
『明日なき暴走』『闇に吠える街』『ザ・リバー』
からの曲は
みんなとり憑かれたように歌います。
アップテンポのロックンロール
"表通りに飛び出して"にいたっては、
オリジナルよりも微妙に遅い演奏なのでどうしたのかな、
と思ったら観客が歌うのを見越して
ちょっとゆっくり目に、緩く演奏していたようです。
DVDとCDの
『ライブ・イン・ニューヨーク・シティ』(2001)
でもかなり大きなレベルで観客の歌声が入っていて、
スプリングスティーン&Eストリートバンド&観客 
のライブになってしまっていますが、
アナハイムもまさにあんな感じでした。
観客の歌声の必死さがCDを聴いただけでも伝わるように、
ブルースの曲はほとんどの観客にとって
人生の一部のようになってしまっているのです。

それにしても、
アメリカ人が自主的にここまで一致団結するなんて、
スプリングスティーンのライブで
"涙のサンダーロード"を合唱するときくらいだよなぁ、
とこのときは思ったものでした。

一緒に歌ってたんですけどね。

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2003-08-10-WED

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