翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第三十五回配信 スタジアムに行こう!


アメリカでのスポーツ観戦は楽しいですが、
とにかくお金がかかります。
どうやら、どんなスポーツであっても
アメリカの、スタジアムやアリーナで観戦するスポーツには
共通するビジネスモデルがあって、
お金がまわる仕組みになっているようなのです。

今日は「たった一日イトイ経済新聞」とのことなので、
すずきちのロサンゼルス近辺のスタジアムでの経験をもとに
観客の立場からみたスポーツ観戦ビジネスを
すこしご紹介したいと思います。
(以下、面倒なのでアリーナもスタジアムも
 両方まとめて"スタジアム"と呼びます。)

1:名前でもうける
観客を呼んで試合をする前から
スタジアムのビジネスははじまっています。
スポーツニュースなんかで、
企業名や商品名がついているスタジアムを頻繁に
見聞きすることがあると思いますが、
スタジアムの経営会社が、
スタジアムに名前をつける権利を20年間とかの期間
大企業にライセンスしているケースが多いのです。
高額なところでいうと、
NFLヒューストン・テキサンズのホーム、
「レリアント・スタジアム」の名前は
レリアント・エナジー社が1000万ドル(12億円)で購入。
NBAアトランタ・ホークスと
NHLアトランタ・スラッシャーズのホーム、
「フィリップス・アリーナ」の名前は
フィリップス・エレクトロニクス社が
930万ドル(11億円)で購入。
また、コカ・コーラ社はMLBヒューストン・アストロズの
ホームに自社のフレッシュジュースの商標を冠して
「ミニット・メイド・パーク」と名づけるのに
600万ドル(7億2千万円)支払ったそうです。
日本でもお馴染みと思われる例としては、
ロサンゼルスのNBAレイカーズ、NBAクリッパーズ
そしてNHLキングスのホームである
「ステイプルズ・センター」があります。
これも事務用品小売の大手チェーンである
ステイプルズ社が580万ドル(約7億円)で
購入したものです。
 
2:駐車場でもうける。
実際にスタジアムに出かけたときに
最初に利用するのが駐車場です。
アメリカのスタジアムはクルマでしかアクセスできない
設計のところが多く普通は巨大な駐車場を備えています。
駐車料金はスタジアムや立地によりますが
$8〜$15(960円〜1800円)くらい。高いです。
高いだけでなく、スタジアムの入口に近い便利な区画に
シーズンチケットを持っているファン限定で
駐車スペースを用意したり
この手のイベント パーキングというのも
色々とノウハウの必要なサービスのようです。
スタジアムの駐車場でとくに驚いたのは、
大学アメリカンフットボールの最高峰のひとつである
ロウズボウルを元日に観戦にいったときでした。
パサデナにあるロウズボウルは、
NFLのホームになっていないため、
スタジアムの収容人数こそ10万人近いのですが、
古い建設のため普通の駐車場が十分にありません。
そこでロウズボウル・トーナメントのような
大きなイベントの場合には、
スタジアムに隣接するゴルフ場のフェアウエイを
駐車場として利用していたのです。
さすがにグリーンとバンカーにだけは、
申し訳程度の囲いをしていましたが、
フェアウエイを遠慮なくクルマが埋め尽くして壮観でした。
このときも駐車料金は$15(1800円)。
集まったクルマが仮に1.5万台としても
この日一日の売上は22.5万ドル(2700万円)。
集客力のあるイベントが恒常的に開催できる
普通のスタジアムならば、巨大な駐車場を常設しても
それだけでかなりのビジネスになりますね。

3: チケットでもうける。
ステイプルズ・センターで観戦する
レイカーズのチケットは、各種チケット販売サービスの
チケットマスターで買うと
1枚$10〜$1750(1200円〜21万円)。
安い席は下を見るとめまいがするほどの急傾斜に
段々に据え付けられた天井近くの3階席。
一方で、飛行機のファーストクラスみたいに
専用ラウンジがついて優雅に観戦できる高級席もあります。
安い席はなにも考えなくても設置出来てしまいますが、
誰もが納得するような付加価値を感じる席って、
明確な意図を持って設計しないと出来ないですよね。
ちなみにNBAでも弱小クリッパーズのチケットは、
まったく同じホームで試合しているにも関わらず
チケットマスターでの値段は
$10〜$600(1200円〜72000円)。
きちんと付加価値を感じることの出来る席が
設置されているという前提があって、
その上でそれぞれのチームのスポーツ観戦自体の価値に
値段がつく仕組みになっているわけです。

ワールドカップのときに4試合パッケージ152万円の
高額チケットが話題になりましたが、
レイカーズのチケットだと試合によっては、
1枚$5200(624000円)という値段をつける
チケットブローカーもいます。
(シーズンチケットではなく、1試合1席の値段です。)
こういうのを考えると、日本のスポーツ観戦ビジネスも
まだ付加価値を追加する余地があるのかなという気がします。

4:飲食店やグッズ販売でもうける。
スタジアム内の飲食店には、
マクドナルドやスターバックスみたいな
ファーストフードチェーンが普通はいっています。
しかしこれも工夫のしどころで、
ロサンゼルスのドジャースタジアムには、
ドジャードッグという名物ホットドッグがあります。
これが結構な人気らしく、
昨年、ドジャードッグの店がスタジアムを飛び出して
ユニバーサル・スタジオのある観光スポット
ユニバーサル・シティにフランチャイズを出店しました。
MLBロサンゼルス・ドジャーズのグッズなんかも
売っていてなかなか楽しいお店です。

またファーストフードやスナックが充実しているだけでなく、
スタジアム内のバフェレストランで
食事をしながらスポーツ観戦するという贅沢が
文化として完全に根付いています。
NHLアナハイム・マイティダックスのアナハイム・ポンド、
MLBアナハイム・エンジェルズのエジソン・フィールド、
これらに比べると古い設計のドジャースタジアムにも
それぞれレストランが併設されていて、
ディナーを楽しみながら試合を観戦することができます。
ドジャーズ戦をレストラン席で観ると
チケット代が確か1枚$400(48000円)以上したはずです。

5: その他のイベントでもうける。
ステイプルズ・センターは
オープンが1999年と新しいこともあり、
ボーズの最新鋭の音響システムを採用しています。
おかげで試合観戦時のアナウンスや各種BGMが
一番安い席でも非常にクリアに聞こえて臨場感抜群です。
もちろんこの音響装置と音響設計はコンサートにも有効で、
すでにローリング・ストーンズ、
ブルース・スプリングスティーン、
ポール・マッカートニーなどがコンサートを行いました。
ロサンゼルスでこの手の巨大コンサートを行うときは、
ステイプルズ・センター以外の会場は
考えにくくなっています。

6: 広告でもうける。
これも基本ですが、ドーナツ屋さんがスポンサーになって
スタジアムの1区画の観客全員にドーナツをあげたり、
アイスホッケーのハーフタイムに観客がリンクに登場し
人間ボウリングとなって氷上をすべって用意された
でかいピンを倒してスポンサーから商品をもらったり、
よく言われることですが、観客を楽しませるちょっとした
趣向がアメリカのスタジアムは上手いです。
あとこれは日本でも少しずつ導入されているようですが、
NHL LAキングスも、
「お誕生日おめでとう」「結婚してくれ」などの
観客の個人メッセージをスタジアムの電光掲示板で
ハーフタイムに表示するサービスをやっています。
1メッセージ$50(6000円)ですが、
この収益はチームが運営する慈善団体への寄付になります。


ワールドカップが終わって、いろんなところの地方自治体が
建造したスタジアムの使い途がなくて
途方に暮れているようですね。
宮城スタジアムのように、
維持をあきらめて廃墟とするのが一番合理的だと
納得できるらしいほど、なにも考えずにつくった施設なら
まだ諦めが付くのですが、
新潟ビッグスワンのようにJ2アルビレックスの試合でも
常に3万5千人以上の観客が入るにもかかわらず、
年間の赤字が1億円でちゃうような施設だと、
諦めるに諦められないと思います。

こう並べてみると、アメリカのスタジアム文化って、
駐車場のサービスを向上させたり、
わざわざちゃんとしたレストランをつくったり、
観客の支出に期待する部分が結局大きいわけです。
ただそうやって、スタジアムの観客をどのように受け入れて
どのように楽しませるのかを突き詰めていくことで、
スタジアムでの観戦に高いお金を払っても
満足できるような文化が熟成してゆくのでしょう。

当り前の結論で恐縮ですが、
そのスタジアム文化の核になって、
ファンとスタジアムをひとつにしてゆくのは、
やっぱりそこで活躍する魅力的なチームの有無
ってことになります。
だから日本のワールドカップ使用済スタジアムの維持を
諦めるか諦めないのか、諦めないならどうすのかも、
そこでプレイするチームの有無で決定すれば
らくちんなのではないかと思いますけれども。

2003-01-04-SAT

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