翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第三十二回配信 もしものコーナー/ゴア編 Part5の1

最近 若干心境の変化があった様子のゴアさんです。
ひさびさにお届けします。
もしも、アル・ゴアが
いまだにしつこく日記をつけていたら…

9月11日
去年のこの日から今までずっと、
United We Stand (一致団結)というスローガンが
国旗と共にアメリカ中にあふれた。
第二次世界大戦へアメリカが参戦した後の
最初の独立記念日、1942年の7月4日にあわせて
ライフやサタデー・イブニング・ポストなんかの
たくさんの雑誌がこのスローガンを使った
キャンペーンを行った。
それぞれの雑誌の表紙に星条旗をつかい、
それと一緒にこのUnited We Standというスローガンを
掲げたのだ。
その当時のことを記憶している国民は
少なくなりつつあるけど、
星条旗とくっつくと、"戦争に協力しよう゛っていう
言外の意味があるスローガンだよねぇ。

ただ、今日ばかりは、
「一致団結しよう」という威勢のよさはおいといて、
1年前に何が起こったのかを静かに思い出し、
ひたすら言葉を失うような気持ちを再び感じている国民が
おおかったんじゃないかな。

ブッシュは今日1日で、NY、ワシントンDC、
ペンシルバニアと飛びまわった後、
夜、国民にむけて演説した。
今夜ばかりは彼の演説も、
犠牲者を悼み、テロに様々な形で巻き込まれた人達の
の英雄的な行為をたたえるとおりいっぺんの内容。
私は自分で演説の原稿を書くからわかるけど
今日ばかりは、誰が演説するにしても
ありきたりのこのことしかいえないよね。

     ああよかった大統領にならなくて。

9月12日
今日、ブッシュが国連で演説した。
国連よりの姿勢を示すために
ユネスコ復帰まで表明したけど、
一方で、イラクに対して国連がなにもできないなら
勝手に戦争するよ、って話だった。
しかしブッシュの「テロとの戦争」って、
なんかベトナム戦争のたちの悪い繰返しに見えてきたのは、
私だけ?

比べてみると、

1 前線なき戦争:
ベトナムは「前線なき戦争」(war without fronts)
と呼ばれたが、
今日のテロリストの攻撃にも前線はない。
戦場はアメリカの国土のどこか、そして
テロの恐怖と向き合いながら生活しなければならない
アメリカ人一人一人の心にある。最悪だよ。

2 サーチ&クリア:
ベトナム戦争時の軍事活動の中心は
索敵と殲滅(Search&Clear)。
戦車が入れず航空機の偵察も意味をなさない
深いジャングルに分散して潜むベトコンを
歩兵や特殊部隊が探し出して殲滅するという作戦の中で、
多くの米兵が犠牲になり、
また多くのベトナムの民間人の犠牲がでてしまった。
一方、アフガニスタンでタリバーン相手に今やってるのは
索敵索敵索敵索敵索敵…。
タリバーンを制圧したんだから、
テロの首謀者を捕まえなくちゃいけないのに
ビン・ラーディンは未だにつかまってない。
オマルなんか話題にすらならなくなった。
探しっぱなしかよ!
これじゃあ「終戦なき戦争」(war without ends)だよ。

3 ドミノ理論:
ベトナム戦争時の政治理論は、ドミノ倒し原則。
ベトナムの共産化を許せば、
近隣諸国が次々と共産化していってしまうから
食い止めないといけないっつー話。
アイゼンハワー大統領のときにでてきた理屈。1954年かな。
かたや「テロとの戦争」はドミノ並べだよね。
テロとの戦争を大義名分にまずタリバーンを倒して
アフガニスタン人民を解放し結果オーライ。
同じくテロとの戦争つーことでサダムフセインを倒して
イラク人民を圧政から解放し、結果オーライ…の予定。
…さらに北朝鮮の飢えた人々を解放して結果オーライ…。
とにかく結果オーライの繰り返しで、
理論にも原則にもなってないところがブッシュらしいとこ。
しかし、アフガニスタンだってまだまだ安定してないし、
イラクは、頼まれてもいないのに王政復古しないと
次の政権がつくれない可能性があるし、
北朝鮮がなくなった後にどうなるかなんて、
中国とロシアのお膝元だけに考えるのも恐ろしいね。
上手にたくさんドミノを並べていくって難しいんだよね。

4 本格的な派兵開始時の指導者:
当時、ホーチミンとジョン・F・ケネディ。
どちらも偉大な指導者だった。
今、サダム・フセインとジョージ・W.ブッシュ。
…どっちもどっちだ。

ベトナムはアメリカにとって悲劇だったけど、
「テロとの戦争」は茶番になってしまうかもしれない。
あくまでアメリカにとってはね。

まあ、ベトナム戦争の最中には徴兵逃れで
テキサス州軍にいたブッシュと違って、
ちゃんと志願して、ベトナムの「前線」に行ったつーのは
私のウリだから(そりゃ従軍記者だったけど)、
こんな縁起でもない比較は誰にもいえないんだけどさ。

今は、「テロとの戦争」のせいで
私達の政権のときにせっかく健全化した政府の財政が
悪化しないことを祈るばかりだね。
ベトナムのときは、戦費調達やら何やらで最終的には
ドル紙幣を印刷しすぎて金本位制の停止までいったからね。

私が大統領になってたら大変だっただろうね。

     ああよかった大統領にならなくて。

(いかりや長介の声)
…だめだこりゃ。

2002-10-21-MON

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