翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第二十四回配信 旗 その2 

9月11日のテロ攻撃の後、現在までずっと、
アメリカ中に星条旗があふれています。

最初にまず目だったのが
クルマのサイドウィンドウにフックを挟んで
ルーフ上にたてるタイプの小ぶりの星条旗。

このクルマに付けるタイプの旗は、
もともとノベルティグッズとして、
星条旗、海兵隊旗、さらにプエルトリコの旗、
なぜかユニオンジャック、ポーランドの国旗、そして
ゲイコミュニティのシンボルレインボーフラッグ等と共に
E‐ビジネスである会社が販売したりしていました。
値段はいっこ19.99ドル。
ただ、9月11日以前に 星条旗なり他の国旗なりを
つけて道を走っているクルマをみかけたことは
一度もありませんから、なにがしかのフェスティバルや
イベント用の需要しかなかったようです。

なにか一大事があったときに、
クルマに旗をたてて走り回るという流行は、
NBAのプレイオフ〜ファイナルに進出したチームの
地元民が最初にはじめたことのように思えます。
今年6月のNBAファイナルの最中、
ロサンゼルスのフリーウェイでは
非常にたくさんのファンがLAレイカーズの旗を
誇らしげにクルマにつけてを走り回っていました。
旗の値段はレイカーズ ファイナル優勝前が15ドル前後。
優勝後は5ドルくらいで投売りされてたようです。
ちなみに99−00年シーズンのファイナル時には
レイカーズの車載旗という商品は自体は存在したものの、
そんなに大流行はしていませんでしたから、
今年に入ってから定着した文化だと思います。

おそらくそんな下地があって、
9月11日以降、もともとはそんなに流通していなかった
車載星条旗をつけたクルマが全米にあふれました。
事件の直後にはこの旗、1本25ドルくらいで
販売されていた様です。
ちなみに現在では6.99ドルほどでどこの
ドラッグストアでも手に入る一般的な商品となっています。

そのほかにも、オフィスやいろんなお店、
レストラン、ショッピングモールが 
いまだに星条旗で埋め尽くされていますが、
その辺は日本でも報道されていたそのままです。
本当に最近は、スーパーの紙袋から、
クリーニング屋さんの洋服カバー、
ロデオドライブの高級宝石店のショーウィンドウまで、
そこらじゅう星条旗だらけです。

ちなみに良く見ると、市販されている車載タイプの小旗は、
素晴らしいことに、どれも メイド イン USAです。
それ以外のいろいろな市販星条旗のタグを注意深く見ると
繊維製品だけに台湾製だったり、中国製だったりしますが、
そこはみなささん、やむ無しと考えている様です。

ただ、みんながどんな思いで
星条旗を掲げているかというと、
それは、ひとそれぞれ実はばらばらのようです。
攻撃直後から平穏な生活が脅かされている
中東系の市民たちにとっては切実な厄除けでしょうし、
保守的の市民たちははここぞとばかりに
星条旗を掲げて愛国心を示しています。
在郷軍人会が強力な圧力団体として機能している
ことからもわかる様に、アメリカにおいて、
単純な保守層の人口というのはやはり多いのです。

また、連邦議員やさまざまなレベルの政治家が
「テロの犠牲者とその家族への連帯を示すために
星条旗を掲げよう」という呼びかけを行いましたが、
政治的な中間層は純粋にそういう気持ちで
星条旗を身の回りにおいています。
ただ今回違うのは、普段はなにかにつけて
政府に対して批判的なリベラル層の一部でさえ、
すがる様に星条旗を掲げ始めていることでしょうか。

社会の寛容さを隠れ蓑にしてテロ準備を進める卑怯さや、
当然のこととして存在する報道の自由を最大限に利用して
恐怖や疑心暗鬼を社会に植え付けよとする戦術によって、
リベラルな市民たちが真摯に実現しようとしてきた理想を、
テロリストたちは攻撃の手段にすらしたのです。
外国人すずきちがニューヨークで実感したのにも増して、
彼らにとって星条旗は、自由・民主主義・権利・寛容さ、
そして、それら全てを実現しようとする意志に裏書された、
「テロとは正反対のなにか」の象徴となってしまいました。

とにかく、アメリカは星条旗というわかりやすい
シンボルのもと一致団結したのです。


旗、といえば「ショー・ザ・フラッグ」と
アーミテージ国務次官が当時の柳井駐米大使に話したのが、
9月15日。
アメリカ中がまさに星条旗で埋め尽くされつつある
最中の出来事です。

これが「日の丸を見せて」と翻訳され、
"アメリカ様から自衛隊参加要求がきた"との報道になり、
一時はshow the flagというイディオムの英文解釈が
日本をあげての宿題になってしまいました。
ちょっと恥ずかしくありませんでしたか?

すずきちの解釈をいいます。
件の会談で、アーミテージ次官が、
「(テロとの戦いに)目に見える形での参加を」とも
発言したと報じている米国紙もあったことを考えると、
老獪なベーカー駐日大使が後で取り繕ったように
"立場をあきらかにしろ(旗幟鮮明に)"
というような意味で無かったことは明かです。
会談の場所は首都ワシントンの日本大使館。
一歩街に出れば、人々が星条旗を掲げ、
それぞれの立場でテロに立ち向かおうとしている中での、
"Japan must show the flag".
という発言だったのですから、
「日の丸を見せて」は文脈で考えたら誤訳ではありません。
(ただし「日の丸を〜」発言をもう一度英語に訳し戻したら、
別の表現になると思います。)

むしろ問題なのは英文解釈ではなく、
日本の記者さんたちの
日本語解釈のほうだったんじゃないでしょうか。

なんで「日の丸」と言った瞬間に
自衛隊という意味になるんでしょう?
日の丸は軍隊とか自衛隊とかしか象徴しないのでしょうか。

日の丸を掲げた民間機が、難民に救援物資をはこんだら、
「日の丸を見せ」たことにならないんでしょうか。

それぞれ同じように星条旗を掲げているようにみえても、
アメリカ人の間においてすら、
各人の立場によって星条旗の意味付けは多様です。

「軍隊・自衛隊」 だけじゃなく、もっと別の、
"テロ"と正反対の意味の多様な理想の目印としての
役割を日の丸に与えることを、
私達は随分とさぼってきちゃったのかもしれませんね。

2001-11-16-FRI

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