翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第二十一回配信  二十一世紀の未来

1999年の年末にちょっとだけ話題になったのですが、
2000年〜2009年までの10年間(Decade)
をどう呼ぶか、という問題がありました。

アメリカでは00'Sという表記だけは決まっています。
ただし読み方は、

オーズ
ダブルオーズ
ゼロズ

…などいろいろ案があるものの、
みんなが直感的に納得できる呼び方はありませんでした。
それよりもみんなミレニアムのお祭り気分と
Y2Kコンピュータバグ騒ぎに忙しく、
「そのうち決まるだろう」ということで議論が
お終いになってしまったようです。

考え方によっては2001年から2010年で00'Sを
区切ることもできますから2000年の暮は
この問題に決着をつけるチャンスでした。
ただ昨年末は昨年末で
大統領選挙のフロリダでの開票騒ぎもあり、
みんなうんざりしたり、へとへとになったりして、
そんなこと考えようともしなかったようです。

結果として、00'Sは読み方のない単語となってしまい、
TV・ラジオなどの放送媒体では
現在でもほとんど使われることがありません。
代わってもっぱら使われるのは
21世紀とか新世紀とかという区切りです。

ちなみに、1900年から1909年までのことを
なんと読んでいたのか興味深いところですが、
当時、現在ほどにはジャーナリズムが発達しておらず、
やっぱり先回の00'Sも名無しで終ったようです。

アメリカでラジオの定時放送が始まったのが
ちょうど1920年だそうですから、
10年区切りごとになにがしかの
色分けや思い入れを人々が持ち出したのはまさに
"咆哮する20年代"(Roaring Twenties)が、
最初かもしれませんね。

とにかく、みんなそれぞれに、
・・・60年代、70年代、80年代、90年代と
地道に、段階を踏んで、
年代ごとに思い出深い経験をしてきたはずです。

それなのによりによって「読み方がわからない」という
非常に消極的な理由で、
私たちはいきなり21世紀に放り込まれてしまいました。
でも、不思議なもので言葉がなくなると、
そんなもの、なかったかのような気になってしまいます。
だいたいにおいて、**年代という区切りは
後で振りかえってみてはじめて感慨深いものですしね。

ですから、すずきちも最近までは
ことさら痛痒を感じていなかったのですが、
最近さすがに変じゃないかと考えだしました。
子供のころ、「21世紀の未来」といえば、
男女ともセクシーな銀色のボディスーツを着用して、
あらゆる病気は地球上から根絶され、
都市にはコンピュータ制御のエアカーが行き交う…
というイメージでした。

ところが先週現在の21世紀といえば、
コンピュータまでウィルスに感染しやがります。
それも世界中で。

正直、21世紀にはがっかりです。

さらに、時代の区切りが急に100年単位になってしまって、
なんだかみんな浮き足立って、
やることが大雑把になってる気もします。

眉毛のお手入れが妙にゆきとどいたテロリスト一人と
弱い妖怪みたいなタリバーン政権に対応するのに 
しゃれにならない大部隊を投入したり、
その作戦にうっかり 「無限の正義」 なんて
傲慢極まりない名前をつけてしまい、
顰蹙を買って名前を変えさせられたり・・・
「新世紀の戦争」 などと力むから
こうなるんじゃないんでしょうか。

日本の浮き足立ち方はもっと酷いですよね。
旧「無限の正義」作戦に対して、
憲法論議も時限立法もすっとばして、
後方支援に日本のイージス艦をだすぞ、
といったんは決めちゃったうようですし。

かわぐちかいじのコミックス 『じぱんぐ』
では自衛隊の最新鋭のイージス艦が
第二次世界大戦真っ只中の太平洋へ
タイムスリップしてしまいます。
そして乗組員たちは自分たちが戦闘に加わることで
歴史が変わってしまうであろうことに恐れおののきながらも
戦争に巻きこまれていってしまいます。

一方、現実のイージス艦「こんごう」がインド洋に
派遣されるのなら、逆にこれは
未来へのタイムスリップですよね。
「こんごう」は90年代から21世紀の未来へ
いきなり放り込まれるのです。

そして、21世紀の未来の紛争地域インド洋で
日本のイージス艦がどんなことに巻きこまれるのかによって、
90年代的な法体系や憲法の有り方を
逆算して変えていこうという、
マンガのような実験が行われつつあるんだと思います。
『じぱんぐ』並にはらはらさせられることになりそうですね。


こうしてみると、
今からでも遅くないから英語でも日本語でも
00'S の呼び名をちゃんと決めて、10年区切りの
発想にいったん戻ってもいいと思いませんか。

2000年から2009年までを切り離し、
10年区切りで、ちょっとだけ地道に
いろんなことに対応して行ったらどうでしょう。
気が滅入るような、不安なニュースが
多い毎日にあって、それが結局、
子供の頃思い描いていた「21世紀の未来」への
近道のような気がしてきました。

2001-10-03-WED

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