翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 
第十九回配信
もしものコーナー/ゴア編Part4


9月11日のテロ事件の前後にかけて、
ゴアさんはどんな経験をしたでしょうか?
そしてゴアさんは現在のアメリカの立場を
どのように正当化するのでしょうか?
もしも、アル・ゴアが
まだまだしつこく日記をつけていたら…

9月7日(金)
シャンドラ・レヴィ失踪事件の報道も4ヶ月を越えて、
みんなほとほと飽きてきたところだけど、
まだ毎日やってる。(第十八回その1参照)

アメリカに他にニュースはないのか?

彼女を殺してようがいまいが関係ないから、
シャンドラと不倫してたコンディット議員は、
とっとと辞職すればいいんだよ。

ぼくが大統領になってたら、
またもやインターンに手を出したすけべおやじのせいで、
気まずい思いをしてたとこだよ。二回目だよ。
ああよかった大統領にならなくて。

9月12日(水)
おそろしく間の悪いことに、ウィーンにいる。
今日、米国時間の11日、ニューヨークとワシントンで
大規模テロが発生した。
インターネットの講演なんかしてる場合じゃないよ!
でも飛行機が全然飛んでないし、どうしたらいいんだ。

犯行声明がでていないのになぜわかるのか不思議だけど、
犯人はイスラム過激派らしい。
ということは、私が大統領だったら、
リーバーマン副大統領がテロの第一のターゲットに
なってた可能性も高いし、
絶対あいつらペンタゴンなんかじゃなく、
素直にホワイトハウスを狙ってたんだろうな。
くわばらくわばら。
やっぱり、ケツに0のつく年に
大統領になんかなるもんじゃないね。(第四回参照)
ああよかった大統領にならなくて。

9月14日(金)
なんとかワシントンにたどり着いて、
国立大聖堂での追悼式に参加した。
ジョージ・ブッシュとローラ・ブッシュに、
ジョージ・ブッシュ元大統領、さらに
カーター、フォードなど歴代の大統領も出席していた。

当然、ビル(・クリントン)も参加。
現職のニューヨーク州選出上院議員ヒラリーに
挙句、娘のチェルシーまで参加。
一家で目立ち過ぎだっつーの。
俺様がせっかく髭をたくわえて
セクシーにイメチェンしたのに目立たないだろっつーの。
席も一列目じゃなかったし。

愚痴はともかく、全米のいたるところで黙祷がささげられ、
NYのタイムズスクエアからLAのロデオドライブまで、
全米が星条旗でうめ尽くされている。
街の辻々には星条旗とキャンドルをたずさえた
市民があらわれ、道行くクルマは
おのおのクラクションを鳴らし連帯を表明した。

今は、アメリカがひとつであることを確認するときだ。

CNNは報復攻撃についての報道について、
「アメリカの新しい戦争(America's New War)」
と題してレポートしはじめたけれど、
まさに、テロリスト相手の戦いは新しい戦争になる。

アメリカ/NATOによるビン・ラーデン報復作戦、
それに対する再報復テロ、報復に対する報復…
これからはじまるテロリストとの戦争で私たちは、
ベトナムですら経験しなかった種類の困難を
経験するかもしれない。

日々の通勤通学、公共交通期間や公共施設の利用、
スタジアムでのスポーツ観戦、
手紙を開封するというだけの、日常的な行為…
テロの脅威のもとでは、国内での平凡な日常生活でさえ、
生命を左右するようなリスクをはらむことになる。

テロの実行犯達は合法的に米国に滞在し、
あるものは合法的にアメリカでパイロットの訓練を受け、
最後は合法的にハイジャックのための小型ナイフを
機内にもちこんだ。

今回のテロの実行犯達の一部の入国を、
FBIは明らかにつかんでいたし、
実行犯の大部分をその監視下においていたであろう
可能性も否定しない。
しかし、アメリカでは基本的には犯罪を犯さない限りは
誰も逮捕できない。

アメリカをアメリカたらしめている価値、
「自由」にただのりし、「多様性」を隠れ蓑にして
テロリスト達はテロ行為を行う。
だからこそ、テロは卑劣なのだ。

テロリストとの新しい戦争にとっての私たちの勝利とは、
テロリストたちを一掃することだけでなく、
テロの恐怖を乗り越えてなお、
自由で開かれた社会を維持してゆくことにある。
今回の新しい戦争は、
アメリカがアメリカでありつづけられるかどうか
をかけての戦いになる。

それを人々は直感的に感じているのだろう。
湾岸戦争の時には「油のために血を流すな」という
反戦デモがみられたけれど、
赤十字の献血窓口に長蛇の列ができたのが、
今回の戦争のはじまりだ。
自分たちの血を差し出すところから
国民が行動を起しているのだ。

しかし翻って考えるに、
在任中ビルはこっそりあいつを暗殺しようとして
失敗している。私が大統領になってたら、
「前政権で余計な暗殺なんか企てるから反撃されたんだ。
挙句の果てに失敗しやがって」
とか批判されてたんだろうな。
ああよかった大統領にならなくて。

9月18日(火)
1週間経った。開戦準備が進んでいる。
しかし、コリン・パウエルが自信たっぷりに
いろいろテレビで話すのを見ているだけで、
具体的な作戦なんかまったく話してないのに、
この人に任せとけば大丈夫なような
気がしてくるから、不思議だ。
湾岸戦争の際に国民に成功体験を植え付けたのは大きい。

湾岸戦争といえば、
タリバーンっていうのはサダム・フセインに比べたら
恐ろしくナイーブな相手だな。

ビン・ラーディンの引渡しをもとめられて、
馬鹿正直にパキスタン代表者へ引渡し条件を通告してきた。
ここで重要なのは彼らの条件の内容ではない。
引渡条件の提示により、アフガニスタンに彼がいて、
かつタリバーンが所在を知っていることを認めてしまった
ことの方が大きい。

例えば、これが仮にサダム・フセインだったら
「ビン・ラーディンなんて人、うちの国にはいませんよ。
 いたとしても隠れてて居場所もわかんないですし。
 それでもおたくの軍隊がうちの国にはいってくるなら
 そりゃ単なる侵略ですな(にやり)」
としらばっくれてたとこだろう。

そんなばればれの嘘でもイスラム世界での反米感情や、
テロリスト個人を「刑事犯」として
米国の法律で裁判にかけるべきとする、
通常の(だから本当は誰も反論できない)
法解釈をとる立場の人々を味方につけるには十分だ。

だいたい、タリバーンはアフガニスタン国内にいる
外国人の国外退去をすすめてるそうじゃないか。
フセインだったら速攻全員人質だよ。

なんかタリバーンて、よわっちい妖怪みたいだな。

いじめるのが虚しくなりそうだな。
今回の攻撃は、テロリスト個人を裁判にかける以上の
対応が必要だと思うけど、
弱いものいじめは好きじゃないよ。
ああよかった大統領にならなくて。

…だめだこりゃ(いかりやの声)

2001-09-20-THU

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