翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 
第十八回配信 
牛乳パックと『ラリー・キング・ライブ』 その1


2000年のアメリカにおける行方不明者は、
届け出ベースで876,213人だそうです。
うち、状況から自発的な家出でないと
判断されるのが31,539件。
また、失踪した人の身体が
危険な状態にあると考えられるケースが、
120,726件だそうです。

ちなみに日本で家出として
警察に届出のある件数が例年8万人から9万人弱。
統計の取り方が違うので正確な比較ができませんが、
日米の人口の差(米国の人口は日本の約2.3倍)を
考慮してもものすごくたくさんの人が
いなくなっちゃうのがアメリカです。

非営利団体NCMEC
National Center for Missing & 
Exploited Children 
(失踪および搾取された児童のための全国センター)
はこういった行方不明者のうち、
ことに子供達の捜索と発見に貢献してきました。

有名な牛乳パックに印刷された
人捜し広告を発明したのも実はNCMECです。
それに加えて最近は、
ダイレクトメールで毎週家庭に送られてくる
お買得割引クーポン券の裏や、
全米小売チェーン、ウォールマートの店頭、
問答無用に会社に送りつけられてくる人捜しファクスなど、
本当に至るところでNCMECの人捜し広告を見かけます。

NCMEによると、
こういった行方不明者の85%以上は子供であり、
子供だけで全米で毎日2100人もが
行方不明になっていると考えられるそうです。
この中には、離婚夫婦で親権を持っていない側の親が
子供を連れ去ってしまうケースも多いようですが一方で、
信じがたいことですが、よく言われるような
チャイルドポルノの犠牲にされる子どもたちも含まれます。

すずきちの日常生活で言うと、
割引クーポン券1枚で2人分、
会社に送りつけられてくるファクスでもう1人分の
人捜し広告を毎週必ず受け取ります。
アメリカ人らしくにっこり微笑んで写っている写真の
子供たちや大人が、今どこでどうしているのか、
彼らの家族はどんな思いで彼らの帰りを待っているのか、
とにかく3人分の境遇について、強制的に、毎週かかさず、
思いめぐらさせられることになります。

ちなみに、NCMECの広告にはいつも
"Have You Seen Me(Us)?"
"私(たち)を見かけたことはありますか?"
というキャッチフレーズが入っているのですが、
彼らはこのフレーズを商標として登録してしまっている
という念の入れ様です。
もちろん"Have You Seen Me?"グッズ販売で
一儲けということではなく、
行方不明者の家族の必死の思いがこもったこの言葉を
パロディやその他の便乗商法に利用させないための
対抗策だと思いますけれど。

このように非営利ベースで
非常に良く組織された全米規模の行方不明者捜しが
日々続けられている一方で、
行方不明事件が、普段、
TVのニュースで報道されることはあまりありません。
なにしろ自発的でない、事件性がある行方不明者だって
全米で毎日85人以上いる計算になるのです。


そんななかで、5月のはじめ
南カリフォルニアのローカルTVニュースが
女子大学院生シャンドラ・レヴィー(24)さんの
失踪を報道しました。
有名校南カリフォルニア大学の大学院生だった彼女は
首都ワシントンで政府の刑務所局でインターンとして
経験をつんでいましたが、5月の卒業式を控え
カリフォルニアの自宅に帰る予定でした。
ところが最後に目撃された4月30日を最後に、
消息が途絶えてしまったのです。

彼女が一人暮ししていたアパートには
運転免許証、クレジットカード、携帯電話など
外出のときに持ち歩くようなものがそっくり残され、
また荷物が詰まったスーツケース、コンピュータなども
残っていました。
室内に争った様子はなかったそうです。

ミステリアスではありますが、これだけでは何故、
この失踪事件だけがニュースになるのか
今一つ説明がつきません。
ローカルとはいえ、なにかの犯罪の被害者であることが
はっきりしない限りは、行方不明事件が
ニュースになどならないのが普通だからです。

下手をすると失踪数ヶ月後に牛乳パックに
彼女の顔写真がのるようなありふれた事件なのに、
アメリカのジャーナリズムも若い美人に弱いのか?
と勘ぐってしまいました。
唯一、「政府のインターン」という彼女の立場が
モニカ・ルインスキーを連想させる程度です。

そして失踪から2週間以上たった5月17日に、
ワシントンポスト紙が、
シャンドラが、彼女の地元カリフォルニア州選出の
民主党の下院議員ゲイリー・コンディットの
ワシントンの事務所を頻繁に訪れていたこと、さらに
コンディット議員が、彼女のことを親しい友人であると
話したことを報じました。

そして同じく17日にシャンドラの母親スーザンが、
CNNの人気トークショー『ラリー・キング・ライブ』に
出演し失踪事件に関して不安な心中を語り、
シャンドラ発見への協力を全米に呼びかけました。
ちなみにこの番組の最近のゲストは
ジャネット・ジャクソン、
ロジャー・クリントン
(クリントン大統領の異母兄弟)
ジュリー・ニクソン・アイゼンハワー
(ニクソン元大統領の娘)
ポール・マッカートニー・・・などです。
独特の切り口の「時の人」や
さまざまなスーパースターが登場するこの番組、
単なる行方不明者の家族が登場できたはずもありません。

この日やっと、シャンドラ失踪事件が、
「インターン」と「民主党」議員との恐らくは
「不倫」スキャンダルというモニカ・ルインスキーの大統領
スキャンダルのキーワードが全部そろった、
非常に興味深い事件であることが明らかになったのです。

(つづく)


お知らせ:
第十七回配信 で募集させていただいた
みなさまの 「LA対NY」

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大変ありがとうございます。
引き続き、
この二大都市の意外な違いを発見された方、
ロサンゼルスではこうだけどニューヨークではどうなの?
と疑問を持たれた方、またはその逆の疑問を持った方、
すずきちにメールをください。
もうちょっと集まったらご紹介させていただきたい
と思っています。
宛先:postman@1101.comです。

2001-07-16-MON

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