翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第十四回配信
乾坤一擲『パールハーバー』/
もしものコーナー ゴア編 Part3

今回はもしものコーナー特別編です。
もしもゴアが『パールハーバー』をみにいったら…

*映画の内容に関してはいわゆる"ネタばれ"
 してるところもありますから、
 映画をご覧になる予定の方はご注意を。

5月25日(金)
次の大統領選挙でもベン・アフリックには
応援してもらわなくちゃいけないし、
彼の主演映画『パールハーバー』を
妻のティッパーと今日さっそく観にいってきた。

大統領選挙が終わってから気分が落ち込んでたせいで、
体重が40ポンド(約18Kg)も増えちゃって、
おかげでTVのトークショーでネタにされたりして、
映画館で私に気づいた人の視線がお腹とかにいくのが
わかってちょっとやだったな。

とにかく『パールハーバー』だ。

フォックス製作の、真珠湾攻撃を描いた昔の映画
『トラ!トラ!トラ!』(1970)は、
それなりに史実に忠実に製作されたのだが、
当時の金額で2500万ドルかけて製作し
結局興行収入が3000万ドルしかいかなかったという
大失敗に終わっている。
聞いたこともないような日本の軍人が
いちいち実名で大量にでてきて、
字幕を読まなくちゃいけない
日本海軍のシーンが多くて、
うっとおしかったからなぁ、あの映画。

今回はディズニーが、
『アルマゲドン』のメガヒット・コンビ
プロデューサー ジェリー・ブラックハイマーと
監督 マイケル・ベイで製作した。
ただ製作費14000万ドル(約170億円)は、
ディズニーをもってしてもまさに"乾坤一擲"
という感じだっただろう。

基本的にはタイタニック系の
歴史的な大事件に翻弄され、立ち向かって行く、
親友パイロット二人と美しい看護婦の恋と友情の物語。

ただ、ティッパーも泣いてなかったし、
女性のリピート客が出るようなロマンスではない。
一方、戦争ものとしてもプライベート・ライアンのような
何がしかの問題意識を喚起するような話ではない。

戦闘アクションシーン、爆破シーン、ドッグファイト
なんかが非常に秀逸な
普通の超大作映画だ。
歴代興行収入記録を塗り替える部分は出てくるだろうが、
そんな情報は消費者向けの宣伝の一部でしかない。
むしろ戦没者記念日の連休明け、
火曜日29日のディズニーの株価に注目だろう。

ただアクションシーンも、
映画『マーズアタック』の火星人のUFOみたいに
ゼロ戦が空を埋め尽くし、そこから発射された
魚雷・爆雷攻撃で戦艦がぼこぼこ沈められていくあたりは
単純に迫力のある映像に対して驚嘆できるが、
病院に向かう看護婦さんたち(概ね美人)が機銃掃射され、
病院が爆撃され、赤十字のトラックが機銃掃射され、
水兵達がわらわら海に投げ出されている沈みかけた戦艦に
追い討ちをかけるように魚雷が命中し…
というのを延々みせられてげんなりしてしまった。


あと歴史的な事実の歪曲に関しては雑誌なんかでも
ずいぶん紹介されてたけど、
基本的な部分で脚色が加えられている。

フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領(FDR)が
真珠湾攻撃の第一報を知らせる書類を渡されて
動揺のあまり書類を取り落とすシーンがある。

ここで私だけ大笑いしてしまい、
他のお客さんから顰蹙を買ってしまった。
FDRは暗号解読で事前に情報をつかんでいたんだし、
書類を取り落とすなんて、
そんなべたべたな動揺するはずないっつーの。

当時の合衆国世論が参戦に否定的だったのは
映画でもかいつまんで描写されている通りだが、
その世論を一気に日本憎しへと転換させるきっかけとして
うまくFDRに利用されたのが
パールハーバーへの卑怯な攻撃(Sneak Attack)だった。

こないだ日記にも書いたけど
最後通牒をつきつけるのが攻撃の後になったという
日本の外交官による素晴らしいアシストもあり、
「日本は卑怯」というプロパガンダの客観的証拠すら
用意してもらえたのだ。

このプロパガンダの結果、
第二次世界大戦中の合衆国国民にとって
この卑怯な真珠湾攻撃を指揮した山本五十六は、
おそらくアドルフ・ヒトラーに次ぐ
悪者ボスキャラとして君臨しつづけた。

そんな山本五十六の最期は、
米国側の用意周到な待ち伏せ攻撃により
搭乗機を撃墜されたというもの。
また、山本五十六の故郷長岡も
彼の出身地であるというのが主な理由で
大戦末期には空襲の対象となっている。

ためしにYahoo.comでIsoroku Yamamoto
で検索するとヒットするサイトが619。
Hirohitoで検索してもサイトは6つだけ。
いまだに山本のボスキャラぶりは健在だ。

暗号がらみで言うと、
ダン・エイクロイドの海軍情報将校もなかなか痛い。
彼はなんと、日本側暗号の"不完全な"解読情報を
経験と勘により総合して、
日本軍がパールハーバーを攻撃する可能性が高いことを
上司に進言するが、一蹴されてしまう。
それが1941年11月29日。

そしてついに彼は、12月7日に完全な解読に成功、
その瞬間、彼の目に飛び込んでくるのは
日本側の最後通牒の暗号電文! 時既に遅し!
…というシーンだ。

ダン・エイクロイドの情報将校の優秀さを示す手がかりが
映画の中で一切でてこないという演出的な欠点があり、
歴史をわざわざ歪めた割には、
まったく盛り上がりに欠ける痛いシーンになってしまった。

実際問題としてアメリカは1940年頃には
日本の外務省の暗号解読に成功している。
当時の駐独大使大島浩はナチスの権力中枢に深く食い込み、
ナチスドイツの対ソ連侵攻計画、
フランスの西海岸線のナチス防衛線のようす、
連合国側が上陸してくる地点についてのドイツの疑心暗鬼
などなど非常に正確な情報を膨大に本国へ送付した。
そしてそれは逐一傍受・解読され、
もっとも信頼のおけるドイツ情報として
連合国の勝利に多大に貢献した。
ドイツの暗号解読にかんしては困難を極める中で、
大島の情報は極めて重要だった。
ナイス・アシスト!

そいうえば、第二次世界大戦時、
たくさんのユダヤ人の命を救った日本の外交官がいて、
彼についてのドキュメンタリー映画が
最近制作されたらしいんだけど、
最初に聞いたときは大島浩のストーリーかと
思ってしまった。結局違う人の話らしい。

よおく考えてみると、
第二次世界大戦前から大戦中を通じて、ずっとずっと、
日本外交官達はアメリカのアシストをしてくれていたのだ。
最近だって反米親中の田中外務大臣を
影になりひなたになって失脚させようとしているのが
日本の外務省・外交官達だ。
自国の外交官のまぬけさで卑怯者にされた
山本五十六の出身地長岡が
田中外務大臣の選挙区の中心であるのは偶然ではないのだ。

おかげで、アーミテージ国務副長官は
田中大臣には合えなかったけど、
小泉総理には会うことができた。
日米同盟を米英同盟並に強固にするのが
アーミテージ本人のアイディアらしいけど、
日本の外務省のアシストで田中外務大臣を無力化できたら、
彼のアイディアが現実のものとなる日も近いかもしれない。

…ただちょっと待て、
戦争が始まる前から終わった後まで
自分たちの暗号が解読されてることに気づかなかった
この間抜けどもと同盟なんか組んだら、
きっとナチスドイツと同じ目にあうぞ。
いいのか? アーミテージ。

そう言う意味じゃあ『パールハーバー』なんか
日本を賞賛してる映画だよ。
少なくとも映画の中では機密保持に成功しているんだから。

ただ実際問題として政府の、
特に外務省の体質がかわらない限り、
日本は、敵に回せば卑怯だし、
信頼して味方につけるには間抜け過ぎる相手だ。
対日政策って超難しいよな。
田中外務大臣、外務省官僚のみんなと刺し違えてくれると
アメリカとしては一番美味しいよな。

ああよかった大統領にならなくて。


…だめだこりゃ。(いかりや長介の声)

2001-05-27-SUN

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