翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第九回配信 鈴木一朗  その1

同じクラスや同じ職場に同じ姓の人間が
自分を含めて三人以上いる、しかも全員親戚じゃない…
あまりにありふれた名前、鈴木姓のひとは
人生のうちだいたい一度や二度はそんな状況に陥ります。
すずきちにもそういう経験がありました。

まさに鈴木一朗選手がオリックスでの登録名を
「イチロー」に変更したのも、
その当時、鈴木選手が
4名同時に在籍していたからだそうですね。

今シーズン入団のアメリカ・メジャーリーグ(MLB)の
シアトル・マリナーズでは幸いなことに
鈴木選手はイチロー一人だけのようですが、
名前はイチローを貫くようです。
ユニホームにも背番号51の上にICHIROとだけあります。
ただ、アメリカのテレビ・新聞ではシーズン開始当初、
Ichiro Suzukiもしくは単にSuzukiと
ごくごく普通の呼ばれ方をしていました。

MLBはチーム数が全部で30とあまりに多く、
アメリカには人気プロスポーツといっても他に
NHL・NBA・NFL等たくさんあります。
ですから各都市の放送局での日々のニュース番組では、
MLBなら地元ホームチームの試合内容と結果、
ホームチームの主要選手の個人成績、
ホームチームの地区順位とライバルチームの状況
くらいしか伝えません。
だからMLBのコーナーって30分のニュース番組の中で
ものの3分くらいでしょうか。

試合中継だって地上波の放送局で見ることができるのは、
プレーオフとかワールドシリーズとかを除けば、
地元チームの試合ばっかりです。

あとはESPNやFOXスポーツなどの
スポーツ専門ケーブル局が気紛れに選んだカードの
放送があるくらい。

先日の野茂の二度目のノーヒットノーランのような
大記録の達成や珍プレー好プレー的な映像でもない限り、
地元チーム以外の情報を得るには、
スポーツ専門ケーブル局のスポーツニュースをみるか、
インターネットでクリクリと地道に検索するか、
新聞のスポーツセクションの小さな記事や
小さな順位表などを根気良く追いかけることになります。

NHKが衛星放送でシアトル・マリナーズのホームゲーム
全てを放送するそうですが、
そうなるとシアトル以外に住む大部分の米国の住人よりも、
日本に住む人の方がシアトル・マリナーズの試合を
テレビで観戦するチャンスが多いことにすらなります。


そんなもともとの仕組みもあって、
シアトルのファンと日本のマスコミ以外の
大多数のMLBファンにとって、
日本の天才プレーヤー イチローは
普通のルーキーIchiro Suzukiとして
メジャーリーグでデビューしました。

すずきちとしても当然、
すずきイちローの活躍が気になります。
でもシアトルに住んでるわけじゃないし
開幕戦をどうやったら見れるかな、と思っていたところ
幸運なことにESPNでアスレチックス対マリーンズの
開幕戦の全米テレビ中継がありました。

"すずきイちロー"と書くとなんだか
二人羽織みたいですが、
開幕戦で彼が初ヒットを放ったとき、
イチローに二人羽織をしてもらって
自分がヒットを打ったような、
まったく他力本願の痛快さがありました。
試合は最後に佐々木が登場しセーブを記録、
期待通りの両日本人選手の活躍が
いよいよ痛快です。

こうなったら是非、球場で応援しないといけません。
アナハイムならば週末出向くことができるので、
アナハイム・エンジェルズ対シアトル・マリナーズ戦を
見に行くことにしました。

近所のレコード屋さんにある、
各種チケット販売チェーンのチケットマスターのブースへ、
エンジェルズ対マリナーズ戦のチケットを買うために
早速お出かけです。

すずきち 「MLBのチケットをお願いしたいんですが」
店員 「ドジャーズのはないよ。エンジェルズしかないよ」
「エンジェルズ戦が欲しいんです。
 マリナーズ戦のマリナーズベンチ側を…
 一塁側ですよね、その内野席をお願いします。
 35ドルですね」
「マリナーズのファンなの?」
「そうです。
  Ichiro Suzukiがはいりましたから」
「むーん…そう?(知らない様子)。
 でも今度はドジャーズにしなよ。
 ドジャースタジアムだったら同じ席が
 16ドルとかだよ。僕昨日も見てきたけど、
 いい試合だったよ。今年は強いよドジャーズ」


この店員さん、自分のとこでドジャーズのチケットを
売っていないのに、とり憑かれたような熱心さで
私をドジャーズ戦に誘います。

マリナーズとエンジェルズはアメリカン・リーグ、
ドジャーズはナショナル・リーグです。
仕事そっちのけで贔屓のチームの勧誘にはしるくらいの
熱心なMLBファンであっても、
違うリーグの選手となったとたんに、
ひとりのルーキーでしかないIchiro Suzukiのことなんか
本当に眼中にないんですね。

憧れのメジャーリーグに入団した鈴木一朗が
「イチロー」として活躍できるのか、
"Ichiro Suzuki” という普通の選手なのか、
球場でみるのが、いよいよ楽しみになってきました。

2001-04-20-FRI

BACK
戻る