翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第七回配信 緊急事態マニュアル


学校での避難訓練といえば、火事とか地震とかですよね。
ところが、例えばカリフォルニア州の教育行政当局は、
学校における乱射事件や、爆弾による脅迫などの
緊急事態に対応するための危機管理マニュアルを
すでに制定しています。

”爆弾による脅迫を受けた時には、
学校責任者は専用回線を使用して連絡をとること。
トランシーバーは使用しないこと。
電波が起爆装置を起動させることがある”

なんて、
いざとなったら役立ちそうなことが書いてあります。
勉強になります。
“いざ”となりたくないことこの上ないですけども。

しかし、なるほどカリフォルニアに限ってみても、
3月5日にはサンディエゴ近くのサンティー高校で
生徒による銃乱射事件が発生し
生徒が2人死亡し13人が負傷しました。
3月22日にもサンティーの近くのグラナイト高校で
乱射事件が発生し、犯人の少年を含む数名が
負傷しました。

アメリカの男子高校生の5人に1人は
過去一年間に最低一度は
武器を学校へ持っていったことがある、
という統計も最近報道されてました。

日本人の常識では…と言いたいところですが、
サンティーの事件では、
犯人の少年が犯行計画を友人たちに
事前に話していたそうですが、
だれも本気にしなかったそうです。
アメリカ人たちにとってすら、
実感を持って危険が理解できなくなるほどに、
銃や暴力が社会に浸透しているんですね。

銃に関していうと、なんとなく話をきいている限り、
私用の銃を所持しているアメリカ人に
アメリカで出遭う確率というのは、
何がしかの信仰を持っている日本人に
日本で出遭う確率と同じ位なんじゃないかと感じます。

個人的体験にもとづいて持っている人もいるし、
地域によっては全員が持っていて当然だし、
家庭にもともと備わっていることもあります。
所得程度や学歴に関連していそうで、
実は一切関連していません。
持っていることが何がしかの安心感につながります。
そして何よりも、持つこと自体は個人の権利です。

なんだか似ています。

ちなみに、カリフォルニア州では
32%の家庭が銃を所持している(98年)という話ですが、
これでも減っているらしいです。
日本で単一の宗教を信仰している方、つまり
お葬式は仏前、結婚式は神前、ついでに
デートで盛り上がるのはクリスマス…じゃない日本人
に出遭う確率より少し高い程度じゃないでしょうか。

日本で敬虔かつ健全な信仰を実践されている方には、
失礼な比較になってしまいましたね、ごめんなさい。

何が言いたいかというと、
アメリカでは、もともとは社会の中に
「健全な」暴力の居場所があったんじゃないか、
必要があれば実力を使って身を守るんだ
という気持ちを持っている人が
多いんじゃないかということなのです。

実際に銃を家に持ってる人に言わせると、
「悪者(Bad Guys)が家に押し入ってくることも
 あるだろうからね」
と”雨が降るかもしれないから傘をもっとく”くらいの
実践的な感覚でしれっと語る人もいます。

悪者と戦うかもしれない、というリアリティは、
宗主国イギリスに対して独立戦争を挑み独立を成し遂げ、
南北戦争で奴隷を解放し、
第一次世界大戦では
「全ての戦争を終わらせるための戦争」
を終わらせるために参戦し、
第二次世界大戦では民主主義のためにファシストと戦い、
冷戦でふたたび民主主義を勝利に導き、
湾岸戦争でも何がしかの正義を実現し…
というアメリカにおける教科書的な
歴史の理解とも通底しているかもしれません。

実は、銃を持つ権利を保証しているとされる
合衆国憲法修正第二条には、

" 規律ある民兵は、
 自由な国家の安全にとって必要であるから、
 人民が武器を保有しまた携帯する権利は、
これを侵してはならない。"

としか書いてありません。

これって素直に読むと“規律ある民兵”以外の人が
武器を持っていいのかどうか書いてないですよねぇ。
ちなみに訳は在日米国大使館が公表しているもので、
原文と比べてみても普通に訳してあると思います。

有名な圧力団体、全米ライフル協会に代表されるような、
銃規制に反対する人たちの議論も、
この憲法修正第二条を彼らなりに説明し、
“修正第二条には、国民が銃を持っていいと
本当は書いてあるんだよ“
という感じの英文解釈に費やされる場合が多いようです。
日本でいう”自衛隊は軍隊じゃない”という類の
痛いかんじの憲法論争がアメリカにも存在するんですね。

こんなふうに条文の字面があいまいでも、
アメリカでは国民が銃を持つ権利がある、
という解釈がまかりと通ってしまうところに
本音とすら呼べない、アメリカ人の銃に対する実感が
見えているような気がします。

雨傘理論で銃を持つ人が言う、
“悪者をやっつける必要性”というのは、
アメリカで生活していると、メディアにおける議論でも、
日常生活レベルでも意外に頻繁に出くわす考え方です。

平和な家庭に押入る強盗が個人にとっての悪者なら、
国際社会で言えば最近の悪者はサダム・フセインであり、
ミロシェビッチです。
アメリカ人は、何かの理由で、
わかりやすい悪者を常に必要としているのではないか、
とすら思います。

ただ、乱射事件対応マニュアルを学校が必要とするほど
なにかが本格的に狂ってきているのは、
ここ数年の現象です。

何が起こっているのか、もう少し調べてから
そのうち書くことにします。


号外!
シアトル・マリナーズ イチロー選手が、
いよいよメジャーリーグデビューを果たしました。
本拠地シアトルと日本での熱狂的な人気が
全米にどんどん飛び火していくように、
すずきちもすずきイちロー 選手の
活躍を応援していきたいと思います。
また、イチローにばかり気を取られていて、
申し訳ないことに全くノーマークだった
野茂投手も二回目のノーヒットノーラン達成です。
4月半ばにはシアトル・マリナーズ対
アナハイム・エンジェルズ戦を観戦する予定でいますし、
そのうちこの欄でもイチローについて応援したり、
考えたり、応援したりしてみたいと思っています。

2001-04-07-SAT

BACK
戻る