翻訳前のアメリカ。
そのあたりのこと、現地ではどんな感じ?

 

第六回配信  悪徳会長マクマホン

ここ数年安定して高視聴率を稼いでいるTV番組に
WWF(World Wrestling Federation)の
プロレス中継があります。
日本でもCS放送でみることができるので、
WWFのファンが増えているようですね。

屈強な男達の派手な空中戦と
けれんみたっぷりに繰り出される必殺技、
レスラー達のチャンピオンシップをかけた遺恨対決、
そして満場のアリーナでのマイクパフォーマンス、
などの古典的なプロレス興行の魅力が、
一応、基本としては、WWFにあると思います。
WWF人気No.1のスパースター、
ザ・ロックはそんな古典的プロレスラーの魅力の集大成、
という感じのカリスマです。

しかし、WWFの本当の凄さはそれだけではありません。

鍛えたカラダに、プロレスで闘えるように
特別な素材で豊胸したといわれるバストも凛々しい
女性レスラー、チャイナは
男性レスラーと激しいファイトを繰り広げます。
彼女の得意技はローブロー。
…互角以上のファイトになるのが想像できますね。

WWFのオーナー会長マクマホンは、
舞台裏でいつもしょーむない陰謀をめぐらせてますが、
陰謀なのに相談の様子が全部テレビで中継されます。
更にマクマホンの娘が反会長派レスラーと恋に落ちたり、
乱闘に巻き込まれて記憶喪失になったり、
マクマホンのドラ息子がリングにしゃしゃりでてきて、
なぜかレスラーと闘い逃げ帰ったりします。
毎回会長本人がリングに立って満場のブーイングの中、
レスラーでもない癖に
マイクパフォーマンスを行いますが、
展開によってはリングでぼこぼこにされ、
あろうことかおしっこを漏らしたりすらしたそうです。

そんな、まさになりふり構わぬ努力が功を奏し、
毎回の高視聴率はもちろん、
試合によっては、ボクシングのタイトルマッチなみに
PPV放送でもやってますから人気の程が伺えます。

チャイナは最近自伝を発売し、
プレイボーイでヌードも披露しました。

ザ・ロックにいたっては"The Mummy Returns"
(『ハムナプトラ』の続編。主演ブレンダン・フレイザー)
で俳優ドウェイン・ジョンソン(本名)として
映画デビューも控えています。(今年公開)
そればかりか、Mummyでロックが演ずるキャラクター、
スコーピオン・キングを主演に据えた新作
"Scorpion King"も企画がすすんでおり、
主演デビューもまじかです。


そんなWWFの人気に便乗して
MTVでは『セレブリティ・デスマッチ』
("Celebrity Deathmatch")という番組が
98年にはじまりました。
有名人(Celebrity)の似顔粘土人形たちが
プロレスのリング上で死闘を繰り広げるという
コマ撮り粘土アニメーションです。

今までの対戦を紹介すると、

アレサ・フランクリン対バーブラ・ストライサンドの
歌姫おばさん世界一対決

シルベスター・スタローン対
アーノルド・シュワルツェネッガーの
アクションスター対決

マライヤ・キャリー対ジム・キャリーの
キャリーつながり対決

グィネス・パルトロー対ウィノナ・ライダーの
女優No.1(でもちょっと地味)対決

トム・クルーズ/ニコール・キッドマン夫妻(当時)対
ブルース・ウィリス/デミ・ムーア夫妻(当時)の
ハリウッドおしどり夫婦(当時)対決

などがありました。

粘土だけあって、最初のニ〜三技でどちらかの
指や腕や脚が切り落とされ、目玉がえぐられ、
最終的にはどちらかが粉々の肉片になるまで闘います。
女性キャラクターの人形は押し並べて
全く似てないのですが、
女性同士の戦いになると、本当に最低の技も飛び出します。

詳細は…とてもすずきちには説明できません。

レフェリーも解説者も観客も全部粘土人形ですが、
対戦にあわせてさまざまな趣向が凝らされます。
クエンティン・タランティーノ対スパイク・リーの
“独立系映画のキングは俺様だ対決”では、
特別に覆面レフェリーが登場。
試合終盤で暴かれたレフェリーの正体は、
大方の予想通り ウディ・アレン!

観客席にいた奥さん(例の元養女)から
「負けたら今夜えっちなしよ!」と声がかかった途端、
ケンカ強そうなタランティーノとスパイク・リーを
一瞬のうちに一網打尽にして、
レフェリーなのに
ウディ・アレンが勝者になってしまいます。

WWFとセレブリティ・デスマッチに
共通するのは非常に暴力的なみせものを
際立ったキャラクターの魅力や、
わざと鼻につくようにしてあるいろんなまがいものや
(粘土、TV中継される陰謀、整形おっぱい…)、
そして、こまりものの筋書・脚本・演出で
オブラートに包んでいるところです。
暴力を楽しんでいるという罪悪感を
観客や視聴者に抱かせないように工夫しているわけですね。


明日3月25日にはアメリカ映画界一年間の総決算、
アカデミー賞の授賞式があります。
既にゴールデングローブを受賞し、
作品賞はじめ12部門にノミネートされた
『グラディエーター』が今年は大本命です。
古代ローマの剣闘士の血みどろの復讐劇を
もの凄い予算と最新の技術、そして大胆な脚本で
製作したこの映画、
粘土アニメを100億円かけて本気で実写化しただけ、
WWF悪徳会長のかわりをローマ皇帝がつとめてるだけ、
という感もなきにしもあらずですが、
アカデミー会員として投票する
アメリカ映画人たちの判断はどう出るでしょうか。

アカデミー賞の結果がでた後で、
この映画についてもう少し考えてみることにします。

2001-03-24-SAT

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