ほぼ日刊イトイ新聞 フィンランドのおじさんになる方法。

第2回 夏のフィンランドへようこそ 森下圭子

ある日カフェの外にテーブルが並ぶ。
まだまだ寒くて外でゆっくりするには辛い時期、
それでも外に座り、冷たい風の中で
コーヒーなどいただきながら寛ぐ人たち。
「あ、夏なのかな」
こうして、というかそんな風に私の夏ははじまります。
少し強引だけれど、
でも待って待って待ちわびた夏を迎えるおじさんが、
やせ我慢しながらも夏の風物詩である
カフェテラスを堪能しているのをもって
夏がはじまりです。

ヘルシンキの公園という公園には
市の職員たちが色とりどりのお花を
花壇に植えていきます。
日本だったら数ヶ月かけて咲くような花々が
一気に開花していきます。
木々の葉も毎日まいにち
びっくりするくらいに葉を大きくし、
色濃くして育っていきます。
そして‥‥ふと気づくと、
あんなにどっぷりとひたっていた闇がちな冬、
体をこわばらせていた寒さと暗さの中で
何ヶ月も暮らしていた冬のことを
きれいさっぱり忘れているのです。

フィンランドの人たちって
夏と冬で髪の色が違うんですって。
そうそう、
「よし、夏だ」な頃(つまりまだ寒い時分です)のこと。
湖で泳いで、「冬の毛を洗い流さなくちゃ」なんて
フィンランドの人たちはいいます。
ムーミンのようです。
冬の間にうっすらと寒さから身を守る毛が
目に見えないけれどあるんですよ、きっと。
それを水温7℃ほどだったりの湖で流すのです。
夏を迎えるには、きれいさっぱり心身ともに一新!
くらいでいかないといけないのかもしれません。

夏‥‥その変化が誰の目にも明らかなほど、
日毎に大きくすくすく育つ自然。
人々の表情も冬とは比べ物にならないくらいに豊かです。
太陽がでてるだけで、嬉しくて楽しくて。
公園で読書したり日光浴する人々、
海辺の岩場で海を眺めているうちに
ついつい服を脱いで泳ぎだす人々
(パンツ・財布放置‥‥なんと安全な)、
海を眺めていると、あちこちから
カヌーだとかボートやヨットが行き来しています。
小さな島で下りてバーベキューしたりするのでしょうか。

森の中も賑やかです。
森に隠れて見えませんが、
湖畔に建つあちこちの夏小屋で忙しくしているようです。
汲み取り便所を自分で汲み取って夏に備えたり、
小屋は凍てついた冬の間に痛んだところがないか、
雪どけあたりから少しずつ準備していきます。
湖からあげておいた桟橋をまた湖に戻してあげたり、
今年の夏はどこにハンモックをつるそうかなんて
周辺を散策してみたり。
そんな折に見かける鹿やきつねもまた元気なようすです。

もう今では使われないかもしれませんが
「きゃぴきゃぴ」って言葉がありますよね。
夏がやってくると、フィンランドのおじさんたちに
この言葉を使いたくなってしまうのです。
ボートから陸へあがる時のおじさんのジャンプ、
バーベキューしようとビール片手で
炭火になるのを待つ間の佇まい、
走った勢いで尻から湖に飛び込むようす、
薪を割るとき。
おじさんにまでこの言葉がしっくりくるような光景‥‥
もうフィンランド全体がきゃぴきゃぴしてるわけです。
みんなの笑顔が美しく、
それぞれの個性的なお顔がとても愛おしく感じられて、
自然も動物も人もみんな一緒に
夏を謳歌しまくろうという意気込み!
なにもかもが眩しいっ。

すみません、冬に書いているので、若干言い過ぎかも。
とにかく夏のフィンランドはとってもいいのです。
ぜひぜひ見ていただきたい、
体験していただきたいものなのです。
夏のフィンランドへようこそ!

2009-02-02-MON
Morishita

とじる

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