深大寺そばのこと。

深大寺(じんだいじ)は東京の西部、
調布市にある天台宗のお寺です。
創建733年、東京では浅草寺(せんそうじ)に次ぐ古刹。

深大寺周辺は国分寺崖線(がいせん)のすぐ下に位置する
湧き水が豊かなところで、
朝霞がたち、昼と夜の温度差が大きい、やせた土地で、
米の生産に向かないけれど、
そばの栽培には適していました。
豊富な湧き水は水車の動力となり製粉の力に、
そしてそば打ち、釜ゆで、晒し水にと使われました。
ふるくはわさび田もあったことから、
深大寺周辺は江戸時代から
関東では有数の「そばの産地」になったのです。

(深大寺のそばが有名になった理由には諸説あり、
三代将軍徳川家光が鷹狩の途中立ち寄った際、
深大寺の僧が打ったそばの味を気に入り、
献上されるようになったのが
全国に名を轟かせたきっかけとも、
深大寺境内でつくったそばが上野寛永寺の門主
第五世公弁法親王からの賞賛を得たのが契機とも、
農家から深大寺に寄進されたそば粉を
参拝した人に供したのが広まったゆえ、ともいわれます。)

それでも江戸の前・中期までは、
一般庶民には縁遠かった深大寺のそば。
文化文政年間になり武蔵野を散策する文人墨客に愛され、
ごく一部の上層階級のみのものから、
庶民へと広まっていきました。
文久年間(1861~64)に
深大寺の門前に最初のそば屋
「嶋田屋」が開店してから、
そば屋が増えた深大寺周辺。

家光の時代から400年余経った今では、
周辺に「深大寺そば」の看板をかかげた
20数軒のそば屋があり、
深大寺への参拝の行き帰りに
打ちたて・茹でたてのそばを食べるのが
観光のたのしみになっているほどです。