変えないつもりでつくったものを、 さらに見直して、ここにきました。 結論の微調整、3.7ミリ方眼。

まず、「方眼」の話をさせてください。
ほぼ日手帳2010のページにひかれたガイドライン、
マス目、グリッド、それが方眼です。

ちょっと地味かもしれませんが、
方眼は、毎日書き込むページの
印象と使い勝手を決定づける、
たいへん重要な要素です。
ですから、デザインの発表よりも先に、
「ほぼ日手帳2010」の方眼の話から
お伝えしようと思います。

去年の手帳、ほぼ日手帳2009において、
私たちはグラフィックデザイナーの
佐藤卓さんにご協力をいただき、
それまであまり疑問を抱かず踏襲してきた
手帳の各デザインを徹底的に見直しました。

その結果、当初4ミリ四方だった方眼を、
「3.45ミリ」に変更しました。
手帳によりたくさんの文字を書けるように、
そして、時間軸の下に余白スペースを設けるために
卓さんが試行錯誤して、導いた数値でした。

「4ミリ方眼」から「3.45ミリ」へ。
わずか0.55ミリの変化とはいえ、
それまでずっと(具体的には2003年度版から)
変わらなかった方眼の大きさが小さくなったのですから
違和感を感じる人がきっといらっしゃるだろう。
もちろん、それは予想されたことでした。
けれども、その最初の違和感を超えた先に、
いままで以上の使いやすさがあるはず‥‥。

そう考えての選択でしたが、
実際にはどうだったのでしょう?

私たちは今年の2月に、恒例となっている
「ほぼ日手帳アンケート」を実施しました。
すると、小さくなった方眼について、
このようなアンケート結果が出たのです。

Q 4ミリから3.45ミリへと変更になった方眼。   第一印象はいかがでしたか?  「ちょっと小さい」‥‥‥‥‥‥36% ※赤系で表示 「ちょうどいい」‥‥‥‥‥‥‥28% ※青系で表示 「とくに何も思わなかった」‥‥17% ※黄系で表示 「書き込みやすそう」‥‥‥‥‥5% ※青系で表示 「書き込みづらそう」‥‥‥‥‥5% ※赤系で表示 「すごく小さい」‥‥‥‥‥‥‥4% ※赤系で表示 「その他」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5% ※黄系で表示   Q おつかいになってみて、この方眼のサイズはどうですか?  「ちょうどいい」‥‥‥‥‥‥‥36% ※青系で表示 「ちょっと小さい」‥‥‥‥‥‥28% ※赤系で表示 「とくに何も思わない」‥‥‥‥11% ※黄系で表示 「書き込みやすい」‥‥‥‥‥‥7% ※青系で表示 「書き込みづらい」‥‥‥‥‥‥7% ※赤系で表示 「すごく小さい」‥‥‥‥‥‥‥2% ※赤系で表示 「その他」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9% ※黄系で表示

<まとめ・3.45ミリ方眼はどうでした?>●第一印象では‥‥。   否定的な回答‥‥‥‥45% ※赤系で表示  肯定的な回答‥‥‥‥33% ※青系で表示  中立・その他‥‥‥‥22% ※黄系で表示  ●つかってみての感想は‥‥。   肯定的な回答‥‥‥‥43% ※青系で表示  否定的な回答‥‥‥‥37% ※赤系で表示  中立・その他‥‥‥‥20% ※黄系で表示

つまり、簡単にいうと、
「最初は小さいかなと思ったけど、
 つかってみたらちょうどよかった」
という人が多かったわけです。
けれども、差は、思ったよりもわずかです。
圧倒的な支持を得た、とは、いえません。

ほぼ日手帳2010を製作するにあたり、
まず直面した問題が、
「小さくした方眼を踏襲するかどうか」でした。
もちろん、一度決めたサイズを
再び変更することのリスクもふくめて、です。

ご存じのとおり、ほぼ日手帳は、
ユーザーの方々の声を反映して
これまで成長してきました。
その原則はいまでも変わりません。
私たちはまず、ユーザーの方の
生の声を聞いてみたいと思いました。

そこで、ユーザーの方を何人かお招きし、
佐藤卓さんと糸井重里が聞き手に回る
「ほぼ日手帳2009方眼座談会」を開催したのです。
結果、実際に手帳をつかっているユーザーの方から、
貴重なご意見をいただくことができました。

やはり、小さく感じてしまいます。
書くときにも違和感がありますが、
意外に、読むときもつらいんです。
なかなか目に入ってこないんですよ。
(イラストレーター兼主婦)
いままではちょっとしたメモでも
マス目に沿って書いていたんですけど、
今年は殴り書きですね。
あと、漢字を略して
書くようになりました。
(製作関係)
いままではビッチリ
書きすぎてたんです。
今年は小さくなったことで、
その「マス目の呪縛」みたいな
ものから開放されて、
かえって伸び伸び書ける
気がしたんです。
でも、よくよく考えると
書く量が減ったような気もします。
(国際協力関係)
カズンと通常版を併用して使っていて、
カズンと比べると、通常版に書くときは
チョコチョコ細かく書いてしまいます。
(雑貨店バイヤー)
小さいという印象はあまりないですね。
4ミリだった時代のを拝見したときに、
「大きかったな」とは思いました。
ただ、私が知る限りで、
小数点第2位までキッチリ計っている
手帳の方眼というのは初めて見ましたね。
(「All About」ステーショナリーガイド)

「ほぼ日手帳2009方眼座談会」は こちらからお読みいただけます。

座談会で生の声を聞いて、
私たちはますます悩みました。
実際につかっている方の声を聞いて
糸井重里と、佐藤卓さんは、
こんなふうに発言しました。

4ミリに戻すのは簡単なことだし、
戻さないっていうのも簡単なこと。
そのどっちでもない方向だってある。
でも、けっきょく、どれを選んでも誰かが
「それは違う」って言い出しちゃうんです。
突き詰めていく問題でもあるんだけど、
追い詰めちゃいけない気がするんですよ。




 
永久にこのままでいいっていう
デザインはないんです。
人の価値観も変わるし、技術も変わる。
インクだって、紙だって
変わるかもしれないわけです。
だから、いろいろなご意見をうかがいながら
調整するべきところを毎年微調整をしつつ
つくっていくんでしょうね。


そして、さまざま意見や考えを、
それぞれの中で咀嚼する時間を置いて、
佐藤卓さんと糸井は再び、会って話しました。
今度は、ふたりで、互いの結論を持ち寄って。

ふたりの答えは、
驚いたことに、ミリ単位で一致したのです。
お伝えいたしましょう。

ほぼ日手帳2010の方眼は
3.7ミリです。

もし変えるんだったら、
「あ、気づきましたか」というような
気づく人は気づくみたいな
変えかたじゃないといけない気がするんです。
だから、ガラっと4ミリに
戻すつもりはないんです。
じゃあ、どうするのか?
「え? 変えたんですか? 
 気づきませんでした」
と言われるような大きさって、なんだろう。
そこをずっと考えていたんですが、
ぼくが「このくらいかな」って感じたのが、
「3.7ミリ」っていうサイズなんです。



 
多くの人の意見を聞いて、
それらがちょうど交差する点を
探していったものって
やっぱりものすごく残るものなんですよね。
実際につかってもらった人の意見を聞いて
その両端から中間へたどりつく。
そういったプロセスこそが
多くの人を満足させる
ものなのかもしれません。
こういうやりとりって、
ひとつのプロダクトの行く末として
すばらしいと思うんですよ。
デザインって、なにか世の中に隠れている
数式を発見することなんだなって
実感させられます。


ほぼ日手帳2010の方眼に関する 佐藤卓さんと糸井重里の対談は こちらからお読みいただけます。

ほぼ日手帳2010の
1日ページの方眼は、3.7ミリ。
去年よりも0.25ミリ大きく、
一昨年までよりも、0.3ミリ小さいサイズです。

なお、ほぼ日手帳2010の
「月間カレンダー」のページに関しては
昨年と同じ、3.45ミリ方眼がつかわれます。
これは、7日間を見開きの2ページで
見渡せるように構成するとき、
3.45ミリ方眼がもっともきれいに収まるためです。
 

▲クリックすると拡大します。

最後に、3.7ミリ方眼を
いち早く体験していただくために、
「ほぼ日手帳2010」の1日ページを
pdfファイルにしてみました。
もしよろしければ、私たちの
「結論の微調整、3.7ミリ」を体験してみてください。

3.7ミリ方眼のサンプルをダウンロードする

以上、地味だけど、大切な、
方眼についてのお知らせでした。
さぁ、明日は、いよいよ、デザインの発表です!


2009-08-18-TUE


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