路線図をカプセルに詰めた男。

お使いの路線に間違いがないか
読者の方に厳しい目で見ていただく
「ご近所の目チェック」をへて、
ことしも
「ほぼ日の路線図2019」ができあがりました!
この路線図の完成を記念して、
2018年初頭、路線図界の話題をさらった
「東京地下鉄立体路線図 東京メトロ編」をつくった
株式会社バンダイ、ベンダー事業部の
松原さんと大塚さんに
お話をうかがいに行きました。

——
ほぼ日では毎年、
オリジナルの路線図を作っているんです。
松原
おお、すごい!
(開いて)
これはテンションがあがるなあ。
大塚
九州の路線図もすごいですね。
松原
JRも私鉄も、ぜんぶ入っているんですね。
ぜんぶ入っている路線図って、
意外とないですよねえ。
——
はい。
読者の方に
「ご近所の路線に変化はないですか?」と
呼びかけて、毎年ブラッシュアップしています。
松原
ちょうどあさって、関西に出張に行くので、
使わせていただきます。
——
ありがとうございます。
路線図の修正を進めているなかで、
ガシャポンの
「東京地下鉄立体路線図 東京メトロ編」
のことを知りまして、
ぜひお話をうかがえたらと。
大塚
はい。このガシャポンは、
今年の1月下旬に発売させていただきました。
——
すごい反響だったそうですね。
松原
そうなんです。
ガシャポンって受注をとって、
それをもとにつくる数を決めるんですね。
でも「路線図〜」は変化球すぎて、
最初の受注がそんなにとれなかった。
だからあまりたくさんの場所で売れず、
都市伝説のようになってしまって。
大塚
今まで、ありそうで
なかったものだったのかなあって。
——
たしかに、路線のカラーごとに
色分けされた、チューブというか
曲がった棒というか‥‥。
一つひとつのパーツだけ見ると、
失礼ながら、何がなんだかわからないですよね。
組み立てて、「ここがこの駅」と
想像してはじめて、路線図に見えてくる。
松原
自分がつくりたかったものを、
つくっただけなんです。
——
松原さんはガシャポンの開発を
担当されているんですか?
松原
はい。じつは私はガシャポンの企画開発チームの
責任者をしています。
管理職なので、通常は商品をもたないんです。
でも、どうしても‥‥やりたくて。
——
口調から、思いがにじみ出ていますね(笑)。
松原
10年ほど前、
「キャンディ事業部」という
食玩の企画開発チームにいまして、
この路線図は、当時考えていた企画なんです。
若いときの企画を、経験値と役職を手に入れたいま、
ようやく実現できたわけです(笑)。
——
経験値と役職!
逆にいえば、昔だと実現できなかった?
松原
バンダイはキャラクター商品が中心ですので、
「これは売れないんじゃない?」という企画は
どうしても通りにくいんですね。
でもガシャポンというジャンル自体が、
競合他社さんを含めて非常に盛り上がっていまして。
「いまだったらいけるんじゃないか」と。
——
時代が追いついたわけですね。
松原
はい。時代と役職が追いつきました。
——
もともと、路線図や電車がお好きだったんですか?
松原
男の子なので、やっぱり好きでしたね。
食玩の企画開発をやっていたときも、
鉄道系のものはやりたくてやっていました。
当時は、ブレーキやマスコン(主幹制御器)が使えて、
4つ合体させると運転席が再現できるという
食玩をつくったりしていました。
これも、そこまで売れなかったんですが、
業界人の記憶には残る商品だったと自負しています。
ーー
今回の路線図もそうですが、
松原さんは記憶に残る商品を得意とされているんですね。
「〜路線図」のガシャポンで
いちばん実現したかったポイントはどこでしょう?
松原
じつは、いちばん実現したかったことは
まだ実現できていないんです。
——
まだ?
松原
はい。1月に販売したのは東京メトロ編でしたが、
最初にこの商品を企画したきっかけは、
都営大江戸線ができるまでの苦労を
ニュースで見たことだったんです。
飯田橋駅あたりのわずかな隙間を、
針の穴を通すようにしてつくったときいて、
「なんてロマンチックなんだ!」と思ったんです。
『黒部の太陽』のような
昭和の日本をつくった人たちのドラマが
もともと好きなのですが、
平成に誕生した東京の地下鉄も
それと同じじゃないか!と。
——
なるほど、たしかに。
何もないところに鉄道を切り開くのとは
また違った難しさを乗り越えて、
新しい地下鉄が通っているわけですね。
松原
そうなんです。
実際に地下鉄どうしがクロスしたところとか、
立体で見てみたいよな、と調べはじめたんですが、
一つひとつの駅の深さの資料はあっても、
全体の高低差を俯瞰で見られるような
データがなかったんです。
それをどうしても見たいと思ってしまって。
——
じゃあ、駅ごとのデータをもとに、
地下鉄全体の高低差のデータを、
独自でつくったわけですね?
松原
はい。
だから、どういう答えが出るのかわからないまま
数値データだけをもとに図面をつくりました。
そしたらおもしろいCGができたので、
「これはいいな」と。
もちろんできあがったものに
多少のデフォルメはかけていますけれど。
そこはロマンだと思っていただければ!
——
この立体路線図は、高低差がある程度
現実に忠実であると同時に、
組み合わせた状態で
自立するものでなくてはいけないんですよね?
松原
はい。そして何よりも、
「カプセルにはいるもの」でなければならない。
ぼくは最初、地下鉄の線も描かれた地図を
A3くらいの大きさで出力して、
それぞれの路線の長さにあわせて
ストローを切り刻み、
カプセルに入れて試していました。
——
そんなアナログなやり方で!
松原
しかも300円におさめないといけないので、
金型にも工夫が必要でした。
高いものをつくろうと思えば
いくらでもリアルにつくれるんですが、
やはりガシャポンなので。
——
値段と、サイズと、形状のせめぎあい。
松原
設計の方にはすごくがんばっていただきました。
本制作の前に
かたちの確認のために
ひととおりパーツをつくったんですね。
それが、全路線無色透明だったんです。
どのパーツがどの路線のものかわからず、
地獄のようでした‥‥。
——
色がついている状態でも
どれとどれをつなぐのか
説明書を見なければわからないこのパーツが、
同じ色で9路線分‥‥。
松原
休み明けの鉄道イベントに出展するため、
会社のお盆休み中に、
協力メーカーさんの事務所に行って
その無色のパーツに色をぬりながら
5時間くらいかけて組み立てたんですよ。
説明書をつくる前だったので
どれとどれがつながるのかわからないですし、
はめ合わせも商品ほどかっちりとしていないので、
すぐばらばらになってしまう。
仕方なく、ひとつずつつなげては
練り消しゴムで間を埋めていきました。
去年の夏のことは、忘れられません。
——
そんな苦労が。
松原
そうやって組み立てたサンプルをもって、
「国際鉄道模型コンベンション」という
鉄道模型のイベントに出展したんです。
僕がブースに立っていたんですが、
コアな鉄道ファンの方がノッてくれたので、
ちょっと自信がつきました。
——
そのイベントは、かなり本格的な
模型が集まるようなものなんですか?
松原
そうです。
皆さんがリアルな鉄道模型を
ガーッと作っている傍らで、
これを展示していて。
「誰が買うんだよ!」っていう
おじちゃんとかもいたんですが(笑)、
すごいねと言ってくれた方もいたので。
——
組み合わさった模型を見ていると、
高低差を維持するための
支柱もすごいですよね。
松原
今回の支柱にはこだわりがあります。
4パーツの基本構造で、
13とおりの高さをつくれる。
同じパーツですべての路線に対応できて、
コストダウンを実現できたものなんです。
——
じゃあどの路線も、
入っている支柱はすべて同じものなんですね!
松原
マニアックですが、
ものづくりに携わっている方には
「おお」と思ってもらえるのではないかと。
実際には支柱は2本あれば支えられるんですが、
複数の路線を組み合わせたときに
「ここもう少し支えたいな」という部分が
必ずでてくるので、
3本入れてあります。
——
そんな気遣いまで‥‥。
松原さんのなかでは、
第二弾として、都営地下鉄をめざして
いるわけですか?
松原
そうですね。
東京メトロ同様、都営地下鉄だと
販売箇所が関東メインになってしまうので、
「どう売れるかわからん」ということで、
なかなか第二弾が難しいですね。
設計はもう終わっています。
設計の段階で、東京メトロと都営地下鉄、
13路線一度に組められるようにしていますんで、
あとは商品化するだけ。
——
ぜひ、実現してほしいです。
松原
もともと、長く勝負する商品だと思っていますので。
東京オリンピックのときに
海外の方におみやげとして買っていただきたい。
こんなにも地下に穴を掘っている国、
ほかにないと思うんですよ。
東京の地下鉄は、日本の技術の粋だと思っています。
大塚
横からみると本当にロマンがあるんですよねえ。
——
お話をうかがっていると、
最初は無機質に見えたこの立体路線図に
だんだん愛着がわいてきました。
最初に「時代と役職が追いついた」というお話が
ありましたが、
それにしたってバンダイのガシャポンのなかでは
異色中の異色だったと思います。
どうして実現できたんでしょう?
松原
もちろん、反対の声も出ましたよ。
大塚
実現は簡単ではなかったですよね。
松原
数が売れる商品ではないとわかっていたので、
自販機と一緒に駅に置くといった
複合的な商談を試したりもしていたんです。
それもなかなかうまくいかなかった。
でも、昨年4月に上司が変わって、
「もっと面白いものいっぱいやろうぜ」
と言い出したんで、「チャンス!」と思って。
全員
(笑)
松原
4月に新しい上司が来て、
5月には提案したんですね。
6月には商品化が決定していました。
——
すごい!
松原
「面白いことをやろうぜコンペ」
みたいな会議があって、
全員が企画を出したんですけど、
その中で最初に商品化したのがこれです。
——
さすが、10年間温めていただけはありますね。
松原
そういう裏技も使いながら通したので、
絶対に実績を出してやろうと、
先ほど言った鉄道イベントにも
ひっそり出展していました。
——
ひっそり、ですか?
松原
自分の商品のために
若い人に「ちょっと参加してくれ」
とは言えないので‥‥。
他の人たちはキャラクターもので
大砲をばんばんぶっ放しているなか、
僕の商品は豆鉄砲みたいなものですから。

でも、どうせ中間管理職として
いろんな責任をとらされるのなら、
やりたいことをやりながら
働いた方がいいですよ。
世の40代の皆さんに、
それだけは伝えたいです。
——
立体路線図のお話からはじまって、
さいごに働く40代へのメッセージが聞けるとは
思ってもみませんでした(笑)。
松原
だって、中間管理職って、
下には突き上げられ、上には抑えられ。
だからこそ、たまにはやりたいことをやるべきです!
——
やりたいことをやった結果
立体路線図が生まれたと思うと、説得力があります。
ありがとうございました!

(おわります)

東京地下鉄立体路線図、完成!

上記の取材から約4カ月。
「都営地下鉄4路線を加えた
コンプリートセットができました!」と
連絡をいただきました。

「とうとう東京地下鉄の真の姿が完成しました!」と
模型を見せてくれた松原さん
(去年に引き続き、今年のお盆休みも5時間かけて
模型を組み立てたそうです)。
今回は13路線全てがセットになった
「フルコンプリートセット」としての販売だそう。
「ガシャポンでなくなったかわりに、
碁盤の目方式の台座と継ぎ目のない透明な支柱で、
格段に組み立てやすくなりました!」
と感慨深げに話してくれました。

東京地下鉄立体路線図 フルコンプリートセット 7,722円(送料・手数料別) プレミアムバンダイのwebサイトにて
11/25まで予約受付中。

ほぼ日の路線図2019

ことしもたくさんの「ご近所の目チェック」を
ありがとうございました。
ほぼ日の路線図2019での修正箇所は
下記の様になりました。

路線図2019での修正箇所
修正箇所 路線 内容
全体 全体 「至」の字を調整
東京 東京メトロ千代田線 新御茶ノ水と御茶ノ水をダンベルでつなぐ
二重橋前駅を二重橋前〈丸の内〉に変更
都電荒川線 都電荒川線を東京さくらトラム(都電荒川線)の表記に
小田急多摩線 多摩センター駅の位置調整
JR武蔵野線 西武新宿線、多摩湖線、拝島線、国分寺線との交差を現実に即して修正
名古屋 名鉄名古屋本線 「名鉄名古屋本線」の字の位置調整
二ツ杁駅と新川橋駅の駅名位置調整
名鉄豊田線 愛知環状鉄道との交差を現実に即して修正
名鉄瀬戸線 矢田駅の位置調整
豊橋鉄道市内線 札木駅の位置調整
地下鉄名城線 地下鉄名城線とゆとりーとラインの砂田橋駅をダンベルでつなぐ
地下鉄東山線 八田駅ー高畑駅間の陸地部分調整
名鉄名古屋本線との交差を現実に即して修正
樽見鉄道 糸貫駅の位置調整
近鉄鈴鹿線 伊勢鉄道との交差を現実に即して修正
近鉄名古屋線 路線の位置を調整
JR関西本線との交差を現実に即して修正
JR東海道本線 笠寺駅の位置調整
JR東海道新幹線 JR東海道本線との交差を現実に即して修正
JR中央本線 瑞浪駅の駅名位置調整
名鉄瀬戸線との交差を現実に即して修正
JR高山本線 坂祝駅の位置調整
JR関西本線 近鉄名古屋本線との交差を現実に即して修正
長島駅の位置調整
近鉄名古屋線および三岐鉄道北勢線との交差を現実に即して修正
大阪 谷町線 駒川中野駅の位置調整
阪神なんば線 桜川駅、汐見橋駅の位置調整
阪急京都線 南方駅の位置調整
近鉄大阪線 俊徳道駅の位置調整
近鉄御所線 近鉄御所駅の位置調整
尺土駅の位置調整
伊賀鉄道伊賀線 新駅、四十九駅を追加
JR奈良線 六地蔵駅の位置調整
JR大阪環状線 天王寺駅の位置調整
JR京都線 新駅、JR総持寺駅を追加
JR草津線 油日駅を追加
JR関西本線 新堂駅を追加
広島 JR可部線 下祇園駅の駅名漢字を修正
福岡 南阿蘇鉄道 地震による不通区間を反映
長崎電気軌道 13の駅名変更を反映
JR鹿児島本線 宇土駅の位置調整。

レイアウトの都合上、
反映できないものもありましたが、
たくさんのご指摘のおかげで、
無事完成させることができました!
路線図の詳細ページはこちら

「ご近所の目チェック」に
参加くださったみなさま、
ほんとうにありがとうございました!

(路線図チーム一同)