南青山の城ができるまで

シンクー
今日は「髪ならAMATA」の
秘密を知りたいと思って、うかがいました。
そもそも美香さんが髪を仕事にしよう
と思われたきっかけは、なんだったんでしょう?
美香
小学生の頃から、髪にはお金をかけていました。
「ウエラ」(ドイツのヘアケアブランド)なんかも、
まだみんなが使ってないときに買ったり。
コテもいち早く手に入れて、巻いてみたりね。
シンクー
美香さんの美しい髪は、
ナチュラルに、直毛ですか?
美香
そうです。
髪も好き。メーキャップも好き。
とにかく、きれいになることに
興味津々な女の子でしたね。
社会人になってからは特に、
髪にかけるお金のウエイトが大きくなって。
シンクー
ファッションではなく。
美香
ええ。パーマもかけたし、
カラーもしたし、トリートメントもしたし、
サロンのシャンプーも買うしで、
1回で5万円ぐらい使うんです。
たとえお給料を圧迫しても、
髪のケアは惜しみたくなかった。
シンクー
いいお客様ですね。
それが、お店を経営する側に回って。
美香
90年代後半のカリスマ美容師ブームより前に、
雑誌などで有名サロンの特集が
たくさん組まれた時代がありました。
載っているお店に行ってみるのが、
大好きだったんです。
シンクー
ええ。
美香
そのときに疑問に思っていたのは、
ヘアサロンに滞在してるときは、
あれやこれやしてくださるんだけど、
終わったら、さっとコートをかけられて、
「ありがとうございましたー!」って
送り出されてしまうんです。
パウダールームをお借りしても、
一等地の素敵なサロンなのに、
100円ショップのソープディスペンサーが
置かれていたりしてね。
「もうちょっと、こうしたら」っていう
欲求が、自分の中に出てきてしまって。
私がお店を作ったら、すごいことに
なるんじゃないかと思ったんですね。
シンクー
お客様としての経験が、生かされている。
美香
そうです。
でもね、19年も経営していれば、
当然、挫折もあります。
「こんな売り上げで、南青山でやっていける?」
って思うときもありました、正直。
でも、どん底まで行ったら、
上がるしかないですよね。
シンクー
なるほど。
美香
ご先祖から代々美容を営んでいる方とは違って、
新参者がポンッと出てきたわけですから。
私、お店を出すんだったら、
絶対に南青山と決めていたんです。
自分の城はひとつでいいから、
支店も作っていません。
だからこそ、濃厚にできたんだと思います。
経営って、やっぱり、
儲けなきゃいけないでしょう?

シンクー
そうですね。
美香
細く長く安定して稼ぐっていうのが、
じつは一番難しいですよ。
譲れない部分があればあるほど、
売り上げは一気には上がらないものなんです。
その代わり、大きく下がることもない。
シンクー
譲れないものが、お客様を引きつける。
美香
そうです。その積み重ねが、
日々のアップデートと
新陳代謝につながっている。
シンクー
詳しく聞かせていただきたいです。
美香
ヘアトリートメントひとつとっても、
同じ商品を扱っているサロンは他にもあります。
ところが、お客様は、
うちの施術が一番好きって言ってくださる。
それは、業者の方が教えてくれる内容を、
もっと突き詰めて、細分化して、
スタッフみんなが自分の頭で、
自然に、理論的に構築できるように、
徹底的に教え込むんです。
そうすることで、
トリートメントに関する知識から、
ひとつひとつの所作にいたるまで、
思いっきり濃厚になるんです。
AMATA風の、ちょっと変わった
トレーニングですよね。
シンクー
スタッフに授けるためには、
美香さんご自身も、
何かトレーニングを受けるんですか。
美香
経営者はライブだと私は思ってるんです。
だから、とにかく止まっちゃダメ。
シンクー
いろんな場所に行って、動いて。
美香
そうです。何かを知りたいと思ったら、
まず自分で見る。触る。
そして、ストレスを溜めないこと。

シンクー
なるほど。
美香
日々の小さなストレスはありますよ、私も。
ただ、大きなストレスを溜めないんです。
経営者は絶対にタフでいなきゃいけない。
そのうえで、視覚とか嗅覚とか空気感とか、
いろんなものにアンテナを張るんです。
そういう経験が全部、
「AMATAでこういうことをやってみたい」とか、
「AMATAだったら違う風にできる」とか、
自分のなかで結びついちゃうんです。
それが、ご質問の、
トレーニングということになるのかな。
シンクー
お店に入って来たときに、
みなさんの挨拶がすごく気持ちいいです。
美香
本当? 
そう言っていただけると、嬉しいです。

(続きます)

2021-03-30-TUE

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