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── この作品を最初に見たとき、
無着色の木でできている
というところに、
まず驚きました。
藤本 大学では木工科を専攻していたのですが、
いろんな木を使うなかで
いわゆる木のイメージとは全く異なる、
黄色い木と出会いまして。
── それがこの作品で使われている、
「ペクイア」という木ですね。
藤本 はい。
ミカン科の木で
ブラジルやら南米のほうの木です。
── その黄色い色から、
バナナを作ろうと思われたのですか?
藤本 この木を活かしたおもしろい表現って
なんだろうと考えたんですね。
それで、初めは日用品とか
いろいろ作ったんですけど
どうも形の印象ばかりで
木の色への感動が得られませんでした。
── 色の面白さを伝えきれなかった。
藤本 そうですね。
そして大学を卒業して
仕事をしている時に
作品を制作、展示する機会を得まして、
でも機械も何もないし、
手で削る、彫るぐらいしかない
ということで、
ペクイアの木を削ってみたら
ふと思いついたのが
バナナだったんです。
それで、まずは本物のバナナを
買いに行きまして。
── 作品のモデルですものね。
藤本 理想のバナナを探しに
近所のスーパーへ行きまして。
売り場で、あれこれと
バナナを並べ替えたりして、
ひたすらじっくり
バナナを観察しまくりました。
その日は何も買わずに帰りました。
ピンとくるバナナに出会うまで、
それを2日か3日続けました。
── ピンとくるバナナの決め手は
何だったんですか?
藤本 何でしょうねえ。
房についているバナナ1本1本の、
先っぽの形が違っていて、
全体的に表情が豊かだったんだと
思います。
それから、木の板から削りだすとき
あまりバナナの形が曲がっていると
再現しづらいので
まっすぐめで、かつ若めですね。
熟していると、
すぐ悪くなっちゃいますから。
── なるほど。
藤本 それで、買ってきたバナナを
房から1本ずつもいで
1本1本の形を再現しようと
木を削り始めたわけです。
── 1本1本をありのまま、
忠実に再現したんですか?
藤本 そうじゃないと
バナナになりませんから。
── バナナの1本1本は
そんなにも、形が違うものなんですか?
藤本 基本的には五角形なんですけど、
上バナナと下バナナでは、違いますね。
── 上バナナと下バナナ?
藤本 房になっているバナナの
上に乗ってるほうが、上バナナで、
下のバナナに接する
底の面が尖っているんです。
下バナナは、反対に、
上バナナに接する上面が少し尖っています。
上下で重なったときに
がっちり支え合う形になるといいますか。
── その違いは、知らなかったです。
手作業でそこまで
再現しているわけですか。
藤本 その違いを再現するために、
バナナを一体何本買ったんだ
っていうくらい、買いましたね。

「糸鋸で木を切り抜いたら、
 上用バナナと下用バナナに分け、
 それぞれ大まかな形を彫ります。」
それから丸みをつけたり、研磨をしたりして、
少しずつディテールを仕上げていくそう。
── それとバナナ独特の
表面にある茶色い斑点模様。
スイートスポットと
呼ばれるものですね。
これもしっかり表現されています。
藤本 これも、バナナを1本1本を見ながら、
木をところどころ焦がして
茶色くしています。

バードカービング(木彫りの鳥づくり)用の電熱ペンで、
バナナに焼きを入れ斑点模様をつける作業。
── 茶色の焼きを入れると、
ぐっと本物のバナナに近づきますね。
なんといっても、この再現力が
藤本さんの作品の魅力だと思います。
藤本 中途半端なバナナだと
自分で使ってみたいと思えなかったんです。
自分も欲しいなって思うものは何か。
そこから始めたんですよね。
── ご自身が使いたいもの。
それで今回の作品は
実用的なアクセサリーに
されたわけですね。
藤本 大きすぎても身につけづらいので、
このぐらいのサイズのものにしました。
── 男の人でも女の人でも、
似合いそうですね。

使い込むうちに、バナナは次第に茶色みを増します。
それもまた、本物のバナナさながらです。


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