2021年の「海大臣」。

「もしもし? 相沢です。
いま、九州におります。
うれしくて早くお知らせしようと思いまして‥‥。
ご安心ください、今年も、海大臣、
おいしいものが揃いますよ!」

林屋海苔店の相沢裕一さんから
そんな連絡があったのは、
ことしの初め、まだ寒い時期のことでした。
入札で海苔の漁協を訪れ、仕事を終えて、
「よしっ!」と、
最初に「ほぼ日」に連絡をくださったのだそうです。

ああ、よかった。
このところ「海苔の不漁」なんていうことも
ささやかれていましたから、心配をしていたんです。
でも、もう大丈夫。
おいしい海苔、ちゃんと確保! です。

今年の海大臣は、ぜんぶで11種類。
林屋海苔店の倉庫で焼き入れをおこない、
いま、みなさまのところへの
出荷を待っているところです。

自然が味方した。

海苔は、海の「農作物」。
海苔をつくる「農場」となる海だけのことじゃなく、
周辺の環境も、その生育におおきな影響をおよぼします。
もちろん気温──、水温は、
海苔の生育そのものにかかわってきますが、
たとえば海に流れてくる川の水質やミネラル分は
海苔の味に関係するのですね。
その川は、周辺の山々、木々、そこに降り注ぐ雨や太陽、
そして人為的な環境も影響します。
環境が変化をすれば、海苔の味も変わってしまう。
だから海苔の生産者のみなさんは、
つねに環境に目をくばり、身体の感覚と対話をしながら
海苔づくりを行なっています。
なかでも大事なのは「いつ網の張り込みをするか」
「日々、どんなふうに監理をするか」
「いつ、網を引き上げるか」。
こういう大事なことは、
潮目のカレンダーと、全体的な天候・海況を見て、
漁協で相談のうえ決めているのだそうです。

海大臣のふるさとである有明海の
佐賀・福岡エリアでは、
昨年12月の某日に予定していた張り込みを
「2日」遅らせたことが、
今年の海苔のおいしさにつながりました。
それから、ちょうどいいタイミングで海水温が下がり、
海苔の生育状況がよくなっていったのです。
そして、ほんとうにやわらかい最初のうち、
相沢さんいわく「最高のタイミング」で収穫をした、
幾人もの意気込みのある生産者の尽力で、
今年のおいしい海苔が揃いました。

おいしい海苔をつくる努力。

海苔をつくるのは生産者、
それを買い付けるのが相沢さんのような海苔の問屋さん。
「海大臣」──そもそも林屋海苔店──にかんしては、
相沢さんは現地の生産者のみなさんとの関わりを
大事にしています。
海大臣の場合、「こんな味わいの海苔をつくってください」
ということを、現地に通って伝えているんです。
ことし、海大臣として採用した海苔のなかには、
その期待にこたえようと、数軒の生産者が協業し、
おいしい海苔をめざしてつくったものも混じっています。

でも、そういうおいしい海苔って
「うんとたくさん」採れるわけではないので、
ことしも海大臣は数量限定の入荷です。
入札できた分量のざっくり半分を「夏」に、
残りは焼き加工をせずに、
とくべつな冷蔵庫で眠らせておき、
「冬」になったらあらためて焼き加工をして
この「ほぼ日」で販売を行ないます。
「うちはこのくらいの量、食べるから」と、
ざっくり考えていただいて、そのぶんの数量を
ご注文くださいね。

ことしの海大臣は、粒ぞろい。

ことしの海大臣の特徴をひとことで言うと、
「粒ぞろい」。
年によっては、とびぬけた個性の強いものがあったり、
全体的におだやかだったりしたものですが、
今年の海苔は甲乙つけがたい「どれもおいしい」味わい。
そしてもうひとつの特徴が、
「ごはんで化ける」ということが、
共通する個性かもしれません。
「海苔にごはんが合うのは当たり前ですよ!」
‥‥そう、たしかにそうなのですけれど、
今年の海大臣はまた格段とすごいのです。
そのままで(何もつけずに)食べてもおいしいのが
海大臣らしさ、ですが、
選考会で「すめし」と合わせてみたときの、
みんなが口ぐちに「おいしい!」と言った、
あの「びっくり」は、例年を超えるものでした。
ごはんと合わせることで、審査の点数も上がっていく、
なんていうこともありました。
「ごはんに負ける」海苔はなく、
「ごはんを打ち負かす」わけでもなく、
お互いを補って高め合うような海苔なんです。
(そこで、選考委員でもあるフードスタイリストの
飯島奈美さんには、「ごはん」を使った海大臣のレシピを
たくさん考えてもらいました。
いずれも「ごはんをもりもり」だけじゃない、
「ちょっとのごはんでもおいしく食べられる」レシピです。
ぜひそちらのページもごらんくださいね。)