「海大臣」のふるさと、有明海。

▲摘み取りはこんなふうに行われます。動画です。
有明海での海苔の生産、入札などのようすを
みじかいムービーにまとめました。 編集 宮地慶

東北から九州まで、太平洋側の湾内にひろがる
日本の海苔の生産地。
なかでも福岡と佐賀・熊本にまたがる有明海は、
上質な海苔が採れる名産地として知られています。
有明海は海水中に栄養分が豊富で、
干満の差が大きいことから、
干潮時に太陽がたっぷり当たり、
おいしい海苔が育ちます。
「海大臣」は、そんな有明海に面した
「皿垣」(さらかき)漁業協同組合から、
福岡県の入札会に出品された海苔から選んでいます。
皿垣は、柳川市のほぼ南端、
矢部川と塩塚川に挟まれた田園地帯に位置し、
ここの海苔生産家のほとんどは、
農業との兼業で生活をしています。
海苔には「等級」があり、
(それは市販されるときには明記されないのですが)
皿垣漁協だけでも、100近い等級づけがされています。
一般的な海苔の等級づけは、
色のよしあしや、艶など、
“見た目優先”で決められるのですが、
皿垣漁協はちがいます。
なにしろここは、専門家が食べてみて、
味をみて等級を決める「食味審査」を
全国で初めて行なった漁協。
そのなかから選んだ「海大臣」は、
福岡全体の海苔のなかでも
最高級ランクに入る海苔のひとつです。
海苔は、毎年4月から育成が始まります。
牡蛎の殻をつかって培養を始め、
夏の終り頃に、海苔のタネを網に定着させる
「採苗」(さいびょう)を行ないます。
その後、海に支柱を立てるか、
浮き流しで網を海中に広げて、
25枚から30枚かさねて「タネ網」を育てます。
この時期を「育苗」(いくびょう)といいます。
その後、重ねて張られていた網を減らし、1枚にして、
「単張り」と呼ばれる本格的な育成に入ります。
減らした網は冷凍され、
順番に育成されるのを待ちます。
同じ生産組合で、ほとんど同じような海で育っていても、
採苗、育苗、単張り、そして収穫の時期が
ほんのすこし異なることで、海苔の味は、変化します。
また、網がすぐ隣同士であっても、
水温、塩分、海流、栄養分の分布などの「海況」は、
場所によってほんのすこしずつ異なるため、
それも、味に変化をもたらします。
年末年始を育成にあて、
摘み取りは、年が明けてから行ないました。
海況がいちばん整った時期に育てた皿垣の海苔ですが、
それでも、生産者による育て方のちがいや、
ほんのわずかな場所のちがいによって、
それぞれが個性をもつ、
それぞれにおいしい海苔に仕上がりました。