Miknits Vintage Pattern WorksMiknits Vintage Pattern Works

ニットデザイナーの三國万里子さんが、夏に登場です。
ニットだけでなく、実はソーイングも得意な三國さん。
イギリスに買い付けに行ったときにみつけた
ヴィンテージワンピースをヒントに、
涼しげなサマードレスのパターンと生地をつくりました。
気軽に洋服づくりにチャレンジしてもらえるよう、
あまり裁縫をしたことがない方にも
縫いやすいアレンジになっています。

プリント生地はオリジナル。
三國さんの相棒「編み針」をモチーフに、
ソーイングのお店CHECK & STRIPEさん、
イラストレーターの山本祐布子さんとご一緒に、
上品で愛らしい生地をつくりました。
「いますぐ着たい!」という方には、
完成品のサマードレスをお届けします。

また、サマードレスに合わせたサマーニットカーディガンを
三國さんがデザインしてくれました。
冷房のきいた場所でサッと羽織れて、
軽くて、着心地のいいサマーニット。
ボタン専門店COーさんセレクトの貝ボタンがアクセントです。
モダンな色展開で、サマードレスやワンピースはもちろん、
Tシャツやキャミソールにも合わせやすい一着です。

夏に思いきり着たくなる、
自分のためのお洋服。
どんなものになったのか、
つくり手のみなさんにお話をうかがいました。

06 ちいさなボタンの世界。 COーさん

東神田にあるヴィンテージボタン専門店「COー」。
ヨーロッパを中心に、世界各地で買い付けたボタンを取り揃えている。
お話を伺ったのは、買い付け担当の小坂直子さんです。

──
サマーニットカーディガンのアクセントになっている、
貝ボタンは「COー」さんのものです。
もともと三國さんが通われていたお店で、
長くMiknitsでご一緒しています。

小坂
「つぎはどんな作品なんだろう?」と
たのしみにしているので、
今回もご一緒できてうれしかったです。

三國さんは他にはない作品を
作ってらっしゃるじゃないですか。
そこにボタンをつけてもらえることは光栄ですし、
おもしろいのは、
思いもよらないボタンを選ばれることもあるので、
それが自分にも刺激になっています。
どんなボタンを選ばれるのかも、
いつも、とってもたのしみにしています。
──
三國さんならではのセンスで、
たった一つのボタンを選ばれていますよね。
小坂
そうですね。
やっぱり感性が全然違うなと思いますし、
驚きがあるんですよね。

『うれしいセーター』のとき、
たぶん、宮沢りえさんのポンチョを
編んでいるときに来てくださったんです。
詳しい人でないとわからないと思うんですけど、
そこで選ばれたボタンが、
エリザベス女王の戴冠式の記念ボタンが
ついているんです。

──
ええ!そうなんですか。
小坂
そういうところがね、
ちょっと、にくいなと思って(笑)。
ほかのボタンもいろいろ買ってくださったけど、
これにしたんだなと思いました。
ボタンをどんな風に使うのか
たのしみでいられるのは、
買い付けしている身として、うれしいです。
──
以前、チョッキ用のボタンをさがしたときには
デッドストックの、紳士物のズボン用ボタンを
採用されたこともありました。
それが、チョッキというアイテムに
ぴったり合っていて。
アイディアが新鮮ですよね。

小坂
そうなんですよ。
だから、私から「こういうのどうですか?」
と提案したいとはあまり思わないです。
自由に選んでほしい。
──
カーディガンのボタンについては、
「貝ボタンで」と三國さんが指定して、
小坂さんが探してきてくださいました。
貝ボタンはボタンの中でも、
伝統的な物というイメージがあります。
小坂
古くからある、定番の天然素材ですね。
歴史としてはすごく長いのですが、
プラスチックのボタンが登場したことで、
スタンダードが変わっていった感じはあります。

今回選んだボタンは、
巻貝の高瀬貝をくり抜いてつくられたものです。
高瀬貝は貝ボタンの中でも
よく使われている天然素材ですが、
今回みつけたボタンは通常のものよりも、
鮮やかなパール色がたのしめるのが特徴ですね。

──
私たちがイメージしていた貝ボタンと、
ちょっと違うなと思いました。
光沢が強くて、華やかで、
スタイリッシュで。
小坂
輝きが違いますよね。
色味もおしゃれな感じなので、
普通の貝ボタンとは違う印象を受けると思います。
──
お洋服につけると、
どんな風に印象が変わるものですか?
小坂
貝ボタンは上品なイメージですが、
これは輝きが強いので
洋服が華やかな印象になると思います。
ちょっと高そうなお洋服にみえますね。

昔からつくられているものですが、
とっても、手間ひまかけてつくられていて。
製作工程が多いんです。
──
小さくて、形もシンプルなので、
工程が多いとは想像していなかったです。
小坂
どの天然素材も、
いくつもいくつも工程を経て、できあがります。
手作業の工程も多く、
貝殻のどの場所を材料として使うかによっても
光沢の違いが出てくるので、
職人技の域なんですね。
──
ボタンは小さいけれど存在感があるので、
お洋服にどんなものをつけようか
悩んでしまいます。
手芸をはじめるにあたって、
ボタンの選び方のコツを教えていただけますか?

小坂
もう、絶対に、つくった作品を
お店に持ってきてほしいです。
そして、ボタンの実物を作品に合わせてほしい。
──
「何ミリのボタン」という、
規定に合わせるだけではなくて。
小坂
サイズもそうですし、
色がね、みんなやっぱり無難に、
同系色のボタンを選ばれます。
それはもちろん外さない選び方ですけど、
ボタンを作品に当ててみると、
思いもよらないものが合ったりするんです。

それに、同系色の中でも
いろんなトーンがあります。
白色でもクリームがかっていたり、
ゴールドでも抑えめだったり。
微妙なニュアンスの違いは
実物を見ないとわかりませんし、
編んだものと合わせてみて
予想と違う素敵なボタンをみつけたときのよろこびは、
手づくりだから実感できますよね。
だから、作品を持ってきて、
合わせるのがおすすめです。
──
お家でボタンのサイズを測って、
「よし、このサイズのこんな色を探すぞ」と
決め込んで、手芸屋さんに行っていました。
ボタンがひとつとれてしまったときは、
似たようなものを探しに。
小坂
その光景、よく見ます(笑)。
似たようなボタンでも、
やっぱり全く同じものではないから
「とれちゃったんだね」って感じになるんです。
──
たしかに、余計目立ちますね。
小坂
わかっちゃいますよね。
もっと「わたしはこのボタンを選んだぞ」
という気持ちがこもったものを選んで、
つけてほしいなと思います。

でも、三國さんの作品を
編んでいらっしゃる方々は熱量が高くて、
作品を持ってきて、
ボタンを探してくださる方が多いです。
いろんなボタンを作品に合わせて選ばれていますね。
だから、私はみなさんがつくった作品を、
誰よりも早く、みているんじゃないかな。
──
やっと編み終わって、
あともうすこしで完成、というところだから、
みなさんたのしんで選んでいそうですね。
小坂
そうなんです。
手編みだから、多少ボタンホールの大きさは
変わってくるんでしょうが、
編みかたのレシピに「何センチ」と目安が書いてあっても、
大きいサイズのボタンが通ることもあるんです。
だから、意外な組み合わせを見つけることができて、
あの人の作品にしか合わないボタンっていうのがある。
それが、いいんですよね。
──
お店に来れば、
ご相談にも乗っていただけるものですか?
小坂
もちろん。
作品に合わせてボタンをご紹介します!

(おわります。)

2020-07-14-TUE
スタイリング|岡尾美代子
撮影|清水奈緒(イメージ写真)、
沖田悟(商品写真)
ヘアメイク|茅根裕己(Cirque)
モデル|岩崎咲(身長・154cm)
(étrenne)