Miknits GO GO! 今年も、三國万里子さんの編みもののお店、はじまります。Miknits GO GO! 今年も、三國万里子さんの編みもののお店、はじまります。

まだ、めぐり会えていない人がたくさんいるはず。
編みもの仲間と出会う旅へ、
Miknitsは出てみることにしました。
フランスやスウェーデンでみつけたニットをヒントに
三國万里子さんがデザインした編みものキットのほかに、
はじめてのかたもチャレンジしやすいキット、
じまんの糸にふれていただける毛糸の見本帳など
たのしみかたが増えました。
世界に飛び出した三國さんのエッセンスが、
たっぷりとつまったMiknits 2020を
ひと足先にご紹介します。

05

みんなが「うつくしい」と思うニット。
Miknits2020 mizudori のお話

昨年スウェーデンで出会った
ボーヒュースニットをヒントにデザイン。
オリジナルのアンゴラ糸を贅沢に使ったアンゴラセーター
「mizudori」が編みものキットに登場です。

とってもうつくしいです‥‥!
三國さんがずっとあこがれていた
ボーヒュースニットから、
こんな素敵なアンゴラセーターができてうれしいです。

まさか、アンゴラセーターのキットをつくれると
思っていませんでした。

アンゴラセーターがうまれたきっかけは、
昨年買い付けで訪れたスウェーデンでみた
「ボーヒュースニット」ですよね。
三國さんが、本でみかけたことはあるものの
現物を目にできず「やっと出会えた」ニットです。

▲ボーヒューススティックニングのデザイナーをつとめた、Kerstinさん。
 アトリエの壁には、デザイン案のスワッチがいっぱい。

そうですね。
ボーヒュースニットは、
スウェーデンのボーヒュース県に誕生した会社
「ボーヒューススティックニング」によって、
1930年代から1960年代まで編まれていました。

歴史的なことをお話しすると、
もともと石切りが主な産業だったのですが
恐慌によって貧困に苦しむ家庭が増えてきた。
県知事の夫人であったエマさんが、
仕事に就いていなかった女性たちのために
仕事をつくろうと考えたときに、
誰もができる「編みもの」に目をつけました。

エマさんは、もともとウィーン出身のアーティストでした。
豊かな環境で育って、
うつくしいものに目が利いたんですね。
彼女は、こだわってつくったアンゴラ糸を
うつくしい色で染め、
引き抜いてきた優秀な若いデザイナーによって
最高級の「ボーヒュースニット」を生み出します。
会社を設立し、
女優のイングリッド・バーグマン、グレース・ケリーなど
うつくしい女性に広告塔になってもらい、
国内外のデパートで販売され、
世界的なニットメーカーにまでなりました。
しかし、機械化の波に押されて、
ボーヒュースニットは30年ほどで廃れてしまいます。

▲ボーヒューススティックニングのセーターをまとったグレース・ケリー。
 当時の資料がKerstinさんの手元に残っていました。

ボーヒュースの博物館には、当時のニットが
たくさん収蔵されていました。
どの作品も、素晴らしかったです。

▲博物館で、たいせつに所蔵されているセーター。
 保管庫にお邪魔し、特別に見せていただきました。

とにかく手が込んでいて、
誰もつくれないようなデザインを追求していた。
それで「多色の編み込みで、裏目を駆使しながらつくる」
という、編み手にとってなかなかハードなことをされて
うつくしいニットを生み出していました。
アンゴラのふわふわな風合いに色と色が混じり合って、
幻感が出ているんですよね。
何ていうんだろう、
煙るようなうつくしさがあるんですよね。

当時は、みんなのあこがれの
セーターだったとうかがいました。
王室のかたやセレブリティしか着られないような、
高価な品だったと。

その頃の平均的な月収くらいということなので、
今の価格にすると、1着40万円近くするはずです。
なかなかお目にかかれないものでした。

三國さんが現物を見られて、
「デザイナーのトライアンドエラーの数がすごい」と
感嘆されていましたよね。

スワッチという編み地見本をたくさん見せていただいて、
どこでくじけて、どこでよろこびを見出したか、
スワッチから伝わってきたんですよ。

いまのファッションは流行っているものをつくるけれど、
ボーヒューススティックニングは、
誰もつくったことのないもので、かつ、
みんなが「ああ、うつくしい」と思えるものをつくった。
奇跡のメーカーだと思います。

奇抜なわけではなく、
着る人のうれしさをわかっていましたよね。

ふだんから着られるけど、
恐れずにアートであろうともした。
みんなが暮らしていけるだけの収入を得ながら
理想を落とさずにものづくりを続けた、
気高い人たちだと思います。

その、ボーヒュースニットをヒントに、
Miknitsでもアンゴラ糸をつくりました。
これも、随分とトライアンドエラーを繰り返しました。

霧のように、アンゴラの糸がきれいに立ち上がるよう
改良を重ねましたね。

編んでいくと、色が重なって、混じって、
煙るような感じになります。
色が濁らないようにだけデザインを気をつければ、
あとは、もう、夢の中にたたずむ感じというのかな。
じぶんで編みながら、
どうしてこの色使いができたんだろうと、
とぼけたことを言ってしまう感じです。

とってもきれいな色だと思います。
無意識にこの色は、生まれていったのですか?

そうですね。言語化するのが難しいのですが、
色というのは、人の暮らしに
溶け込んでいるものだと思うんですね。
赤なら情熱や警戒、緑ならさわやかなイメージ。
そうしたイメージを借りながら
色の重なりをつなげていくのは、
物語を編んでいるような心地になりました。

デザインでいうと、
編み込みは表目だけで編むのが一般的だと思うので、
ボーヒュースニットにならって
裏目が入っているのも新鮮です。

裏目をどんな風に出すかによって、
パッと見たときの色の混ざりかたが全然違うんです。
デザインするときの醍醐味でもありました。

細い糸なので、見た目よりもずっと軽いですよね。

軽くて贅沢なセーターだと思います。
実は、名前も決めているんです。
つくりながら鳥の図鑑をずーっと眺めていて
「mizudori」という名前にしました。
鳥ってみんな、いいセーターを着ているでしょ?

たしかに、いい色味の羽をまとった鳥さん、多いです。

水鳥のような色をちりばめて、
人間の女性に合うニットになりました。
スキニージーンズに合わせるのもかわいいし、
わたしなら膝丈のタイトスカートに合わせたいです。

アンゴラ糸は今年の新作糸です。
編んだことのない糸を編むのは、
きっとたのしいですよね。

はい、編んでいてたのしかったです。
糸も極細で、針も1号、2号という
だいぶ細い針なので時間はかかりますが、
長く編めるのもいいものだ、と
たのしみながらトライしてほしいです。
編んだ人だけが見られる、
いい景色が待っていますよ。

(つづきます。)

2020-08-23-SUN
スタイリング|岡尾美代子
撮影|松原博子、清水奈緒(イメージ写真)、
沖田悟(商品写真)

ヘアメイク|茅根裕己(Cirque)

モデル|Marta L.(身長・172cm)
(wizardmodels)