やの・よしのり

1973年 東京都生まれ。
1999年 スウェーデンの手工芸学校・カペラガーデンに短期留学。
2000年 木工造形家の指導のもと制作を始める。
2003年 福岡県糸島市に仕事場を構える。


2013年のインタビュー(その1)スウェーデンの学校へ。


大学は商学部でした。
卒業したとき、これから何をしようか漠然としていて、
はっきりするまでは、と思って、
リュックを背負って、いろいろなところを回りました。
もともと、自然が好きで、
山や海に行くのが好きだったこともあって、
その旅でネイティブアメリカンの考え方に出会って
共感を持ったんです。



環太平洋のモンゴロイドの人たちの
美術や工芸品を扱う福岡の会社を知り、
その会社は、海外からアーティストを呼んだり、
文化活動も積極的にやっていて、
給料をもらうため、というよりも
ライフワークにしたいと思い、就職しました。



そこで、スウェーデン人の
エコジャーナリストと知り合いました。
15、6年くらい前のことで、
まだ、環境意識とかエコという言葉が、
いまほど言われてない時期です。
僕はちょうどその頃、環境芸術というか、
生活と一体化した美術をめざしたい
という理想がありました。
若いこともあって、青臭かったですねえ。
木を削ってオブジェをつくったりしてました。



あるとき、そのスウェーデン人の友達から、
「スウェーデンのエコヴィレッジの人が来日して、
 講演をするから、運転手をしてくれ」
とたのまれました。
運転しながら、その人たちに、
「こういう思いがあるのだけど、
 この先、どうしていいかわからない」って、
自分が何をしたいかを話してたんですね。

すると、スウェーデンに帰った彼らから、
「ピッタリの場所がこっちにあるぞ」
と連絡があったんです。
「もう予約した。手続きはほとんどやってある。
 断るなら、自分で断りなさい。
 でも、たぶん、
 お前がやりたいと思うことはそこにしかない」って。



そこまで言われたから、
「じゃあ、行く」って決めまして。
仕事を辞めて行ったら、そこは家具の学校でした。
スウェーデンの家具の父と呼ばれる
カール・マルムステン氏が創立した
カペラゴーデンという学校です。
森の中にあって、そこでは、
まず、立ってる木を自分たちで切って、板にして、
なるべく機械を使わずに、のみで彫ったりして、
シンプルにシンプルに、家具をつくる。
生活と密着したものづくりを基本理念にしていました。



僕が行ったのは、3ヵ月間のショートコースで、
おじちゃんとかおばちゃんとか、
いろいろな人が来ていました。
スウェーデンの人は、こういうスクールに入るのも、
バケーションの一環っていう感じなんですね。
だから、あまり堅苦しくなくて。
木工のほかにも、陶芸のクラスとか、
テキスタイルとか、いろいろありましたね。

そこで、いい友達がいっぱいできました。
コースが終わるとき、
僕はマイスターの資格を取る本科に入り直そうと
ビザの関係で一度日本に帰って、
面接試験のためにまたスウェーデンに行きました。



面接で、担当者から、
「本当に、家具がしたいの?」って質問されて、
僕、答えられませんでした。
そのときになってはじめて、
ああ、僕は、ただ、学校が好き、
ここの環境や友達が好きだったのか、
と気づいたんです。
そこで面接の途中で「帰ります」って言って、
帰って来たんですよ(笑)。



とはいえ、帰国はしたけれど、
すぐには仕事なんかできないわけですね。

(次回につづきます)

2013-07-25-THU


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