三重県伊賀市
1944年生まれ。
江戸時代から続く伊賀「土楽」の7代目当主。
2008年 「ほぼ日」とコラボした土鍋
「ベアシリーズ」の原型を制作。
著作に『土楽食楽』『土楽花楽』(文化出版局)他。
参考ページ:
「うちの土鍋の宇宙。」
白洲正子『日本のたくみ』より
『樋口可南子のものものがたり』より
土楽の公式サイトはこちら。







この蹴ろくろのいいところは、余韻です。
力を使ってないわけでしょ。
惰性で回ってるわけです。
ゆっくりで、早くつくる。


▲電動ろくろではなく、
自分の足で蹴ってまわす「蹴ろくろ」を使います。


高台をね、比較的こうして高くすると、
持ったときに熱くないでしょう。
お茶漬けっていうのは、
ちょっとごはんがあって、お茶をたっぷり。
だから大きめがいい。
まわりがそんなに熱くならないほうがいい。
熱いと、お茶わんを口につけられない。
そういう条件がね、
ごはん茶わんをつくるときに体に入ってるんです。


▲片手で、のびのびと、すぅーっと引きます。

守ったら、ダメなんですよ。
こういう形がいいと一度いいとなると、
まあみんなが評判とるでしょ。
でも、それを守ったら、
もう自分の二番煎じになるから。
それは勢いがなくなる。


▲これは昨年の野焼きのようすです。


▲燃えさかる炎のなかには、何百ものうつわと‥‥。


▲赤いような、時には、白光のような色を放つ陶仏が。
よろしければ「福森さんの野焼き」もごらんください。

円も道歩も同じことを言ってましたか。
それが基本だからね、私のところの。
みんなね、外の形をつくろうと思う。
こう見て、この形がいいという。
違うんよ。
形をつくろうと思っちゃいけません。
ろくろを回していて、
中が、こうゆったりぐわーっとひけたら、
外もきれいになってるのよ、自然に。



私のうつわを色っぽいと糸井さんがおっしゃった?
ああ、色っぽいんだろうね、本人が。あはははははっ。
何も考えてないよ。
何も考えてない。
もう少し開いたものとか、
ちょっと締まったものを、というのは思うけど、
他は何にも考えてません。
お茶漬けしたら、というのも、
つくる前に、自分の体に入ったものだから。
「お茶漬け、これはお茶漬けにいいように」って、
考えてつくってたらもうダメです。

形じゃないの、場面。
場面っていうのは、たとえばごはんを食べる場面、
お酒を飲む場面、お茶を飲む場面っていうのが、
そのお客様が来た場合もあるし、
毎日飲む場合もあるし、
そういう場面っちゅうのがあるわけでしょう。
だけど、それにぴったりと生理的にこう、
何ていうか、合ううつわっていうのは、
それはすべてそれが満足せんと合わないわけ。
作り手個人が出てたら、うるさくてもう合わない。


▲福森さんがよく言われること。
「器は前に出ず、後ろに下がらず。
使えば料理とともに引き立てあう。」


だけど、こっちがね、
夢がこう‥‥夢っていうか、
個をなくすというの。
自分が“大きく”なかったら、
皆さんに行き渡らないのよ。
大きいほど行き渡るから。
自分=個性、と思ってたら、
皆さんが、絶対、毎日使うのに、飽きちゃうから。

個をなくすとね、
人のことも関係ないし、自分も捨てられるし。
個も、他も、自他も、因果も、
相対も、なんにもないところを。


▲今回、出品するごはん茶わん。
この時点では、福森さんはまだどういう化粧をするか、
どういう釉薬をかけるか決めてません。

これにこの後、何やるか? ははははっ。
わかんないですよ、そりゃあもう。
釉薬は灰を主体にした薬をかけようとは思ってて。
あとは、刷毛目をやってもええかなとか、
まあいろいろ。
もう日々変わると思っといてもいいくらいやからね。


▲後日、できあがった灰釉刷毛目飯椀がこちら。

いい陶器っちゅうのはつかまえどころがないのよ。
「こっちつかまえた」と思ったら、
どっかまた逃げられたような気がするし。
自分でつくっても
「いいのができた」なんて思わんですよ。
沈黙するのよ、うつわが。
うつわが沈黙して
使い手のもとで、勝手に育っていくのよ。
はっはっはっ。それはいいうつわ。
自分がこうだと思ってるよりも、
ずーっとよくなっていくんよ。

そういうふうに、私は思ってるんだけどね。
こっちの予想のようにできたらおもしろくないね。
私から離れたとたんに、
違う道を進むんよ。はははっ。
それがおもしろいんよ。
この年になったら、ずい分それが
「はあっ、おもしろいもんだな」と。



「いい」というのはね、
まあ何でもそうだけど、悪いのでもいいのでも、
全部、一時間とか一分ずつでも動いてるわけ。
だから、みんなね、西洋的に考えると、
ここで切って、これがいいか悪いかを
みんなで議論するわけよ。
東洋的に考えたら、
全部これは移り変わってるのよ、もう絶えず。
あいつの思想が嫌いだと、こう思うでしょ。
ほたら、たとえばそれが
恋愛関係になったらみんなよくなる。
そうでしょ?
はははっ。だから、みな、動いてんのよ。
諸行無常という、そういうもんなんだ。

2011-02-25-FRI


期間:2月25日(金)~3月9日(水)
場所:QUICO
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-16-15
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