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今回の、ヌーヴォーの作品、
４作品を拝見したのですが、
ある意味でおどろきました。
とてもシンプルで、かわいい作品に。
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| タカモリ |
はい。びっくりされるかな、
とは思ったんですけど、
今の気持ちに素直につくったら、
こういうかたちになりました。
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どのようなテーマで
つくられた４作品なのでしょう。
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| タカモリ |
それが、
「これがテーマです」と言えることばが
まだ見つかっていないんです。
でも、「どういう気持ちでつくったか」
については、とてもはっきりしているんです。
ちょうどいい言葉が
見つかればと思っているんですけど。
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そのお気持ちの部分から聞かせてください。
今回はどういったことを思いながら？
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| タカモリ |
何て言うんでしょう、
「相手が先にある」というか。
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「相手」というのは、
あみぐるみを受け取る人のことですね。
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| タカモリ |
そうです。
実は、この作品たちをつくる前に、
ものすごくおいしい料理を
いただく機会がありまして。
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ご飯を。
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| タカモリ |
はい、ご馳走になったんです。
それが本当においしかったんですね。
もう、自然に笑っちゃうくらいおいしくて、
料理でこんなに
人を喜ばせることができるなんて、
うらやましいなぁとも思いました。
それで、
これをあみぐるみに置き換えたら
どういうことになるだろうって考えたんです。
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| タカモリ |
その方の料理には、「おもいやり」とか
「やさしさ」とか「親切」がありました。
だからそういう意味で、とても食べやすいんです。
この「食べやすい」っていうのを、
あみぐるみに置き換えると？
「愛しやすい」とか「かわいがりやすい」
っていうことなのかな？ と。
じゃああみぐるみにとって
「愛しやすい」ってどういうことなんだろう？
と考えました。
作家として、受け手のかたに、
「こう来たか！」と、
驚かせたい気持ちは、いつも、あるんです。
けれども、今回、そういう
「私の感性」みたいなものは
ちょっと横に置いて、受け取る人が、
「かわいい！」という気持ちを注ぎ込める
あみぐるみをつくろうと思いました。
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なるほど。「相手が先にある」というのは、
そういう意味なんですね。
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| タカモリ |
はい。
ちょっと変なたとえなんですけど、
たとえば、病気のおばあちゃんがいるとします。
そのおばあちゃんが、
「子どものときに持っていた、
こんな感じのクマのぬいぐるみが懐かしい」
みたいなことを言って、
その話を聞いた私が
忠実にそれをつくったとしたならば、
そこには私の「我」を入れないで
おばあちゃんへの気持ちだけでつくれるな、
と思ったんです。
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| ── |
なるほど、わかります。
受け取る人の気持ちを考えてつくる。
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| タカモリ |
あ、でも、それは
いつも思っていることではあるんですよ。
今までつくったあみぐるみはぜんぶ、
受け取る人のことを考えてつくっています。
ただ今回のように、
ここまで強く「相手の気持ち“だけ”」を
考えてつくったことはなかったんです。
──ちなみに、
うちに姪っ子が遊びに来たときにですね。
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| ── |
はい、姪っ子さんが。
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| タカモリ |
私はいつも完成したヌーヴォーを
部屋に置いておくんですよ。
姪っ子は、いままでは、遊びにきても、
それを見ているだけだったんです。
でも今回はじめて、
「さわってもいい？」って。
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| ── |
あぁ、そうですか！
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| タカモリ |
だから私としては大成功なんです（笑）。
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| ── |
そういう「相手が先にある」気持ちは、
テーマとして
どういうことばがぴったりくるのでしょうね。
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| タカモリ |
それが見つからなくて‥‥。
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| ── |
‥‥あの、たとえばですけど、
お母さんが自分の子どもに
ごはんをつくってあげるのは
そうだったりしますよね。
子どものことだけを考えて。
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| タカモリ |
そうですね‥‥。
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| ── |
うーん、でもまだしっくりきませんね。
さらに無垢な愛情というか。
もっと「我」のない関係がいいですよね。
愛情だけを強く強く、
ただ受け取ってもらいたい気持ち‥‥。
タカモリさんから姪っ子さんに向ける気持ちも
それに近い気がします。
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| タカモリ |
はい。
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| ── |
そこをつきつめていくと‥‥
もしかしたら、おばあちゃん？
おばあちゃんから孫へ。
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| タカモリ |
あぁ、はい！
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| ── |
そっちのほうが‥‥。
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| タカモリ |
そうですね、近いですね。
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| ── |
そういえば、最初のヌーヴォーに
「おばあちゃんからの贈り物」
というのがありました。
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| タカモリ |
クマのクラウド。
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| ── |
お話をうかがっていて、
クマのクラウドを最初に見たときの
感覚を思い出しました。
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| タカモリ |
ちょっと似ているのかもしれないですね。
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| ── |
「おばあちゃんからの贈り物」
というテーマはどうでしょう？
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| タカモリ |
いいかもしれません。
でも、そうなると、
おばあちゃんっていうのは、私？（笑）
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| ── |
いやいや、そうではなくて（笑）。
タカモリさんは、
「おばあちゃん」というイメージを持って
つくってはいなかったけれど、
最終的に振り返ってみたら
相手のことを思う気持ちの部分が
「おばあちゃんから」という感覚に
とても似ていたということです。
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| タカモリ |
気持ちの部分ですね。
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| ── |
はい。
あくまでも気持ちの部分で。
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| タカモリ |
わかりました。
じゃあ、それでいかせてください。
「おばあちゃんからの贈り物」で。
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よかったです。
テーマが決まりました。
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| タカモリ |
あとで考えたことばになりますけど、
そうですね、ぴったりだと思います。
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| ── |
ということは、
クラシックの展示作品も、
そのテーマで選んでいただきたいのですが、
それは可能でしょうか。
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| タカモリ |
もちろん、できます。
クラシックをつくるときも
「私の感覚」は今回のヌーヴォーに比べれば
たくさん入っているんですけど、
そんな中でも自分を控えめにしてつくったもの、
「おばあちゃんからの贈り物」という言葉が
スッと馴染みそうなものを選んでみます。
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| ── |
ありがとうございます、楽しみにしています。
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| タカモリ |
それから新作のテディベアも。
今回は２体つくりました。
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そちらも楽しみです。
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| タカモリ |
最後に、いいでしょうか？
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はい、もちろんです。
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| タカモリ |
繰り返しになりますが、
今回は受け取る人のことだけを考えて
つくってみました。
それはとても楽しかったですし、
成功したんじゃないかなって思っています。
でも、作家と呼ばれる人たちが
自分らしい作品をつくることは、
当たり前ですが、すごく大事なことです。
私も自分らしさを出していくのが大好きなので、
いつもはどんどんそこを追求していますし、
これからもそうすると思うんです。
だから今回のようなことはたぶん、
ずっとは続かないだろうなと思います。
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| ── |
つまり、今回だけかもしれないんですね。
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| タカモリ |
そうですね、
この気持はきっと持ち続けると思いますが、
そっと胸の中にです。
次はまたいろいろやりたくなると思うので。
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はい。というわけで、
2009年10月会場のテーマは、
「おばあちゃんからの贈り物」。
シンプルなヌーヴォーが並ぶ
貴重な展示会になります。
タカモリさん、楽しみにしています。
ありがとうございました。
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| タカモリ |
ありがとうございました。
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