タカモリ・トモコさんは、
「ほぼ日」での展示会の準備をするたびに、
毎回すこしずつ異なったきもちで
あみぐるみ制作に取り組むのだそうです。
その「きもち」の部分を、
きちんとうかがっておこうと思いました。

今回の展示会のテーマはなんなのか、
どんな思いを込めて数体の新作を編み進めたのか。
会場のオープンに先がけて、
作家のこころの様々な変化を
タカモリさんみずからの言葉でお伝えしてまいります。



── 前回の9月会場から
それほど時間が経っていないのですが、
いかがでした?
今回の11月会場は全体的にどのような気持ちで
作品に取り組まれたのでしょう。
タカモリ そうですね、時間があいてなかったので、
ヌーヴォーについては
前回の流れを維持してつくることができました。
── やはり、好きなように、自由に。
タカモリ はい。
── 前回にひとつ、
ターニングポイントがありましたよね。
タカモリ あのときに気づいて向かった流れ、そのままで。
ですから、なんていうんでしょう‥‥
ことばは悪いかもしれないんですけど、
すごくラクな気持ちでつくれたんです。
── ああ、それはすてきですね。
「こうしなければ」という気持ちは
一切なしで。
タカモリ ええ、なのでお詫びをしたほうがいいかな、
と思ったのはテディベアのことなんです。
── 前回、仏像を彫るようにつくり続けると
おっしゃっていたテディベアですね。
タカモリ 11月会場では、それをつくらなかったので。
テディベアは「いつでも戻れる場所」って
思っているんですね。
今回、そこに戻ろうと思わなかったんです。
── そこに戻る必要がないくらい
のびのびと取り組めた状態だったんですね。
タカモリ でも次回はつくりたいと思います、
そういう気持ちとは別に、
やっぱりテディベアはつくり続けたいので。
── わかりました。
たのしみにしています。
タカモリ はい。
── で、今回の11月会場も、
前回に続いて大きなテーマがあります、
「うさぎ特集」という。
タカモリ 「クマ特集」をとてもよろこんでいただいたので
同じように人気のあるうさぎもと思いまして。
── うさぎのあみぐるみは人気があるんですね。
タカモリ ええ、それはあみぐるみだけの話じゃなくて
日本のぬいぐるみ業界はそうなんだそうです。
クマとうさぎ。
クマが圧倒的に人気があって、次にうさぎ。
── へえ〜、そうなんですか。
それはどうしてでしょうね?
タカモリ うーん、どうしてでしょう。
── ‥‥もしかしたら、飼えない動物は人気がある?
タカモリ それはあるかもしれません。
クマは家で一緒に暮らせませんので。
うさぎも‥‥飼っているかたもいますけど、
イヌやネコほど一般的ではないですよね。
コミュニケーションがむずかしいっていう
印象もありますし。
でも好きな人は何匹‥‥じゃなくて何羽も
飼ってたりしますよね。
── タカモリさんご自身はどうなんですか?
うさぎは。
タカモリ すごく好きです。
鳥獣戯画が好きで、
あれのうさぎモチーフとか、
「ふしぎの国のアリス」のうさぎとか、
「いなばのしろうさぎ」ですとか、
ああいうイメージにはすごい惹かれるんです。
── ええと、それはいわゆる、
ファンシーなうさぎではあまりなくて。
タカモリ そうですね、私が好きなのは
かわいすぎるうさぎじゃないんだと思います。
あの、うさぎの、ちょっとずる賢い感じが、
カワイイと感じるんです。
── ああ、はい、わかります、
ちょっとずるいイメージ(笑)。
タカモリ ね(笑)。
それが「悪い」まではいかないずるさというか。
なんか、そこがかわいらしくて。
── 弱い生き物ですから、ずる賢くならないと。
本人は精いっぱいやってるわけですからね。
タカモリ そう(笑)、そういうかわいさです。
── 前回の流れで取り組まれたということですが、
なにか、わずかな変化というのは?
タカモリ そうですね‥‥ヌーヴォーはつくっていて
なつかしい感じもしました。
── なつかしい。
タカモリ 最初につくったモモちゃんを
思いだしたりして。
── ああ、ヌーヴォーに取り組みはじめて
ぼちぼち1年ですから、
その中でも初心に戻るような感覚があったと。
タカモリ ええ。あとは、そう、
好きなものを組み合わせるというか、
なんとなくかわいくて買っちゃう物って
あるんですけど、
それはたとえばリボンですとか
チロリアンテープだとか。
これまではそういう物とあみぐるみを
あまりくっつけて考えてなかったんです。
でも、前回のヌーヴォーで布をつかったように、
自分の好きな物をもっとあみぐるみに
くっつけちゃってもいいのかなあ、と。
── 11月会場にもそういう作品が。
タカモリ はい、チロリアンテープを
からだに巻いたものをつくりました。
── それはたのしみです。
タカモリ 素材については
これからいろいろ試したいと思ってます。
── なるほど、いろいろ‥‥。
でも、鉄とかブリキとかまでは
いくらなんでもいきませんよね(笑)。
タカモリ 鉄(笑)。
── タカモリさんにとって
ここまではオッケーと思える
素材の領域っていうのはあるんでしょうか。
タカモリ ‥‥どうでしょう、
あの、やっぱりあみぐるみには、
「触った感じ」っていうのがあるんですね。
── ああ。
タカモリ そこは私の作品の強みだと思っています。
触ることが大切な表現って、
ほかにあまりないと思うので。
── 作品の味わいかたの要素に
「手触り」が加わっている。
タカモリ そう、手触りが加わる。
あみぐるみっていうのは、
そこがたぶんすごく
ポップアートなんじゃないかなあ?
って思ってるんです、自分では。
自分の家に置けて、それで触れるっていう。
── なるほど、手触り。
たしかにタカモリさんはあみぐるみに入れる
綿の量もすごく気にしてらっしゃいます。
タカモリ なので、素材選びには気を使います。
いい毛糸をつかいたい。
‥‥とはいっても、
「鉄はダメ」とは思いたくないんですよ。
── え? あ、そうなんですか。
タカモリ どんな素材にも「もしかしたら」っていう
可能性は残しておきたいです。
── なるほど‥‥。
ありがとうございました。
11月会場の「うさぎ特集」、
展示をたのしみにしています。
タカモリ すみません、最後にもうひとつ。
今回はクリスマス前の展示になるので、
ちょっとだけそのことも意識してみました。
── クリスマスっぽい作品も?
タカモリ はい、それだけはうさぎじゃないんですけど。
── わかりました。
それは11月会場が開催されてからの
おたのしみということで。
「うさぎ特集」+クリスマスななにか、
たのしみにしています。


2008-11-07-FRI


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN