5DW メンズショップ イシカワ
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これが最後の
「ULTRA HEAVY」?


もうお目にかかることはないかもと思われていた
「ULTRA HEAVY」の新しいTシャツが3型登場します。



ひとつは、
「ULTRA HEAVY」のメンバーであり
アートディレクターのジェリー鵜飼(うかい)さんが
手がける「三人寄れば文殊の知恵」Tシャツ。



もうひとつは、
同じく「ULTRA HEAVY」の一員で
アーティストの神山隆二(かみやま・りゅうじ)さんによる
車のグラフィックTシャツ。



3つ目は、
グラフィックデザイナー立沢トオルさんが
自身のブランド「Bonzaipaint」(バンザイペイント)で
2000年代につくっていたグラフィックが、
店長・石川顕さんへ“流出”、
「ULTRA HEAVY」仕様とした
タイポグラフィーTシャツです。



今回は、石川さんがやりたいこと、思いついたことを
長く一緒に形にしてきたという立沢さんに、
これらのTシャツのことから、
石川さんとのちょっとシニカルなものづくりのスタンスまで、
たっぷりお聞きしちゃいました。



「ULTRA HEAVY」ファンのみなさまも、
はじめてのかたがたもぜひ。
思い思いの
「ULTRA HEAVY」。
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――
そもそも「ULTRA HEAVY」って
立沢さんが使っていた言葉なんですよね?
立沢
そうですね、僕から石川さんに“流出”したものです。
「たっちゃん、もうつくらないなら僕にちょうだい」
と言われてTシャツのデザインを渡したりするうちに、
こういった“流出プレイ”が定着していきました(笑)。
「Bonzaipaint」でつくってきたTシャツって
基本は1回しか売らないものですから。
今回のこのTシャツも
「たっちゃん、ちょっと“流出”してもらっていい?」
という号令のもと、
過去のグラフィックから15型くらいを提出していたもので、
その中から選ばれ、つくられたのだと思います。
「Bonzaipaint」では、真ん中の黒い四角の部分に
「ULTRA HEAVY」の文字は入ってなくて、
石川さんに“流出”してから「ULTRA HEAVY」と
入ったわけです。
――
入っている英語は何か意図があるんですか?
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立沢
夏目漱石の『草枕』の冒頭の一節です。
「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」の
最初の部分と最後の部分の英訳ですね。
――
なるほど、知的ですね。
立沢
この有名な冒頭のあとに、芸術家の役割について、
「あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、
人の心を豊かにするが故に尊い」と。
つづいて、具体的に何ひとつ表現をせずとも、
「おのが住む世を、かく観じ得て、(中略)
清くうららかに収め得れば足る」
と芸術家の幸福について述べています。
さらに、「喜びの深きとき憂いいよいよ深く、
楽みの大いなるほど苦しみも大きい」と
画家である主人公の考えを展開したのち、
小説に入っていく。
なかなか難しい言葉が遠慮なくつづきますが、
『草枕』は道教や禅の教えが
通奏低音になっていった小説で、
漱石はそれを非人情と呼んでいるのが面白い。
明治期の向こう見ずな欧米化への急激な方向転換、
日露戦中に書かれた文明批評的とも
前衛芸術的だとも思える短編小説。
こういう文豪になる前の過激な漱石が僕は好きだし、
もちろん石川さんも好きでした。
だから、石川さんも「いいね!」となったのですが、
石川さんがいいねというものって
だいたい売れないものが多いんですよね。
――
こんな素敵な話が隠されていたとは。
話を聞くと、かなり胸に響いてきますけどね。
立沢
いつでも僕らは「じゃなくて」のほうを選びます。
だから、シニカルな漱石が好きなんです。
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――
今回の「ULTRA HEAVY」のTシャツが
できた経緯って?
立沢
それがわからないんですよ、
僕が旗振り役ではないですしね。
鵜飼くんでもなさそうな。
でも、聞くところによると、最後かもと。
――
最後は残念すぎますね。
よきタイミングがあることを願っています。
立沢
僕はもちろん「ULTRA HEAVY」の一員ではないですが、
「ULTRA HEAVY」って
石川さんが中心というわけではなくて、
それぞれ勝手にやっているというイメージです。
とても不思議な関係の3人ですよね。
石川さんと僕は似ていて、ハプニングが好き。
予定調和は壊したい人。
でも、石川さんの近年の「ほぼ日」との取り組みは、
昔に戻ったような感じがしましたけどね。
――
どういったところが昔に戻ったと
感じたのでしょうか?
立沢
「ほぼ日」という土俵でさまざまなつくり手と
自由にオーガニックに手を組んで
ものづくりをしていくやり方は
マガジンハウスでメディアの仕事をしながら
発展途上の人たちをたくさん見つけて
紹介していた感じに近いのかなと。
それを石川さんの第1期とすると、
第2期はディレクターとしてものをつくっていく時代。
そのピークが「ULTRA HEAVY」。
1期、2期をへて、
第3期がほぼ日の「5DW」。
すごく楽しそうにやっていたし、
今後も有名無名問わず、
いろいろなつくり手を見つけてくるんだろうなと思って
ワクワクしていました。
――
石川さんが「ほぼ日」と一緒にやると聞いたときは
どうでしたか?
立沢
体制とかマスみたいなものが苦手な人でしたけど、
60歳を超えて大人になって、
石川さんが持っていなかった能力の方々と組むことで、
さらに可能性が広がることに気づいたんだと思います。
――
ちなみに、今回の「ULTRA HEAVY」の
ジェリーさんと神山さんのTシャツを見て
どう考察しますか?
立沢
鵜飼くんのTシャツは
鵜飼くんっぽくなくてとても意外でした。
情が厚く、気持ちの入る人ですから
「三人寄れば文殊の知恵」(ウルトラヘビー)と
ストレートにきましたよね。
ふだんであればやらなさそうなデザインなので、
ひとつの区切りとしての表現なのかなと感じました。
一方で、神山くんのTシャツは、
いい意味で最初から最後まで変わらない
神山くんらしさがあるのかなと。
ほんと昔から変わらないですよね。
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――
この車のグラフィックは、
はじめて神山さんと石川さんが
虎ノ門の「キュレーターズキューブ」で
エキシビションを行ったときに展示した
作品をモチーフにしたそうです。
想像するほどに、
それぞれの石川さんへの思いが詰まった
Tシャツなのだろうなって思います。
おふたりにはどんなつもりでつくったのか
聞いてみたいんですけどね。
立沢
鵜飼くんも神山くんも
照れて教えてくれなさそうですよね。
そういうのは照れくさいものですから。
でも、しっかり理由はあるんだと思いますよ。
まあ、石川さんも僕もずっと
「Tシャツはコミュニケーション」だと言っていますから
その受け取り方もみなさん自由なのだと思います。
2025-07-14-MON
(おわります)
「ULTRA HEAVY」の
Tシャツ3型は
5DW+ WEBショップにて
2025年7月15日(火)午前11時 発売!
[STAFF]

企画・プロデュース:石川顕

スタイリング:野崎未菜美

ヘアメイク:勝健太郎

モデル:沖ちづる(168cm)、佐藤岳(182cm)

撮影:吉嗣裕馬

文:小笠原民織