「トモタケ」がつくる
カメのクッションは
たぶんアートです。
今週、「5DWメンズショップイシカワ」で登場するのは、
「トモタケ」のカメのクッションです。
「トモタケ」は、
朝武雅裕さんと朝武広子さん夫婦による創作ユニット。
このクッションは、リクガメの赤ちゃんがモデルとなっていて、
手染めの泥染めと手刺繍が施され、
1点1点、時間をかけて丁寧につくられています。
勝手な想像だったのですが、
クッションって
簡単につくられていそうなイメージでしたが、
その作業工程を聞いていくほどに、
まったくそうではないのがよくわかりました。
そして、今回は特別に、
赤い刺繍で「5DW」と入れてもらいました。
実は、この「トモタケ」のカメ、
店長の石川顕さんが一緒に暮らしている
グラちゃんという名前のリクガメが
モチーフなんじゃないかということを
石川さんがよく言っていたのです。
そこのところも
「トモタケ」の朝武雅裕さんと朝武広子さんに
よくよく聞いてみたいと思います。
- ――
- 石川店長がよく、
「このカメはうちのグラちゃんかな?」って
おっしゃられていたのですが。
- 朝武雅裕
(以下、
朝武(雅))
- そうですね、
昔から石川さんにはグラちゃんの話を伺っていて、
リクガメってどんなのだろう?
って調べていたんですよね。
石川さんのインスタを拝見して、あらためて
リクガメは染めで表現できそうだと思い、
つくってみたのがはじまりです。
2015年くらいだったと思います。
でも、石川家のグラちゃんもそうですけど、
リクガメって結構大きくなるようでしたので、
赤ちゃん時代のサイズをつくることにしました。
- 朝武広子
(以下、
朝武(広))
- ですので、間違いなく
このリクガメのヒントは石川さん家のグラちゃんです。
- ――
- このカメは動物シリーズのひとつですが、
動物シリーズっていつからどのように
はじまったんですか?
- 朝武(雅)
- 最初は2007年だったと思うのですが、
マレーグマをモチーフにした横向きのくまや、
うさぎからつくりはじめました。
くまはくまでも、今の縦型の月の輪ぐまではないんです。
- 朝武(広)
- 新しく1年に1体できるかどうかですが、
動物たちも年々増えていっているんですよ。
- ――
- 素材やつくり方もお聞きしたいのですが、
実際に触ってみると、
ただの布ではないことだけはわかりました。
- 朝武(雅)
- 素材はパイル地を使っています。
染め自体は型を使った染めものになるのですが、
パイルのような起毛のものにも
泥を塗り込めば染まっていくので、
我流ではあるんですけど、
泥染めという手法ではじめていきました。
- 朝武(広)
- 布は布でもパイル地を染めるというのは
あまり聞かない話だと思いますが、
それが逆にいいなと思えたんです。
- 朝武(雅)
- 最初の頃は泥染めのバッグをつくったりしていましたね。
和物の暖簾を友人関係で頼んでいただいたので、
ベージュの生地に、山や川を炭のように染めてみたり。
妻がもう少し作品に展開していったらと
アドバイスをくれ、
奄美大島やアフリカの伝統的な泥染めの技法をヒントに
応用していきました。
奄美やアフリカの土などはそうなのですが、
鉄分が入っている泥は染まりやすいんです。
僕の場合はそういった土が身近にないので、
染色用の鉄剤を保湿力の高い土に混ぜて使っています。
泥は鉄分を布に付着させるための糊みたいなもので、
そうすることで、にじまずに染まっていくんです。
- ――
- そういった技法はどのように身につけたんですか?
- 朝武(雅)
- もう全部、我流です。
なにしろ、型もクリアファイルを切って使っています。
もちろんカメの甲羅の型もクリアファイルですよ。
こんな道具を使っている染色家は
あり得ないとは思いますが(笑)。
下染めには、
五倍子(*)から抽出されたタンニンを用い、
鉄分を含ませた泥を使って、
型や指で生地に塗り込みます。
五倍子のタンニンで下染めした布は、
時間が経っていくと飴色になりますし、
鉄分で黒く染まったところは、
ブラウンっぽく変化していくんです。
(*)ふし。染色、薬用などに使われるヌルデの木にできた虫瘤。
- ――
- おふたりの役割分担って
あるんですか?
- 朝武(広)
- 夫が泥染めで、私が刺繍の担当です。
- ――
- 刺繍はフリースタイル?
- 朝武(広)
- ものによって入れる場所は決めています。
そもそも、チェーンステッチのやり方は
夫に教えてもらったのですが、
刺繍で表情を出す際は、
なるべく少ない手数で
表現できるように心がけていますね。
どこにどんな刺繍を入れていくと
動物たちが生き生きとしてくるかって。
- ――
- このカメは、
目の下の刺繍の入り方がすごいなと。
これがあるのとないのとでは
まったく表情が変わってきそうですよね。
- 朝武(広)
- そうなんですよ。
あと、前足の鱗の刺繍もいいアクセントに
なっているのかなって思っています。
甲羅の下のフチの刺繍もそうですが、
染めで表現できない細かいところは
刺繍で入れるようにしています。
- 朝武(雅)
- 染めでやりすぎると
やや民藝色が出すぎてしまうので、
バランスを大事にしています。
そこらへんのさじ加減は
いつも妻と話し合いながらやっています。
2024-11-29-FRI
(つづきます)
「5DW」のロゴが刺繍された
「トモタケ」のカメのクッションが、
5DW WEBショップにて
2024年12月3日(火)午前11時発売!
[STAFF]
企画・プロデュース:石川顕
文:小笠原民織