器にもまな板にもなる、
小さなカッティングボード。
小さなカッティングボード。
- ――
- 小ぶりなカッティングボードって
キッチンで意外と使いやすくて好きなんですけど、
今回はなぜカッティングボードだったのでしょうか?
石川さんとどんなお話をされていたのか、
お聞かせいただけたら嬉しいです。
- 盛永
- 石川さんから「端材を使って何かつくれる?」って
ふわっとお話はもらっていたんですけど、
具体的には何をつくるかまでは決められていなかったんです。
でも、僕が勝手に何かつくるのも違うと思うし、
10年くらい前に一度、
石川さんからお願いされてつくったものを思い出して、
昨日サンプルを制作してみました。
- ――
- 昨日ですか!
そのときの石川さんからは
どういったご依頼だったのですか?
- 盛永
- モデルのKIKIさんがいつも山で使っているという
カッティングボードがあって、
その画像とサイズ感が送られてきて、
「これに似たやつをつくってくれればいいんだけど」
というリクエストがあったので、
画像を見ながら線を引いてつくったんです。
- ――
- そんな経緯があったとは。
でも、これっていつもの盛永さんの
ウッドターニングという技法とは違うつくり方ですよね?
- 盛永
- ウッドターニングって、
機械で木を回転させながら刃物を当てて削る手法なので、
その場合は、ボウル状のものとか、スツールとか、
壺や器みたいなものをつくるときにやっています。
今回は、だいたい真っ直ぐな板を製材して、
その型板に線を引いて、
ルーターという機械を使ってカットしていき、
何枚かつくるのであれば同じ形に揃えて、
最後に研磨していくという工程です。
僕はこの研磨の工程が好きで、
今回はメープル材という硬い木を使っているんですけど、
硬い木は磨けば磨くほどピカピカに光ってくるんです。
- ――
- ほんと美しい仕上がりですよね。
今回のカッティングボードで使われている
真っ直ぐな板がウッドターニングのときの端材なんですか?
- 盛永
- これはウッドターニングのときの端材ではなくて、
まとめて材料の原木を注文したときにまじっている
あまり使い道がない幅が狭いものなどを使っています。
ふだんは小さなものはつくらないので、
けっこうこの手の板は残ってしまっているんですよね。
- ――
- こういった余った木や端材は、
今回のカッティングボード以外だと
どのように使われるんですか?
- 盛永
- 細かい木屑は畑にまいたり、
カブトムシを育てている方が持っていったり。
薪ストーブを持っている方が燃料用として持ち帰ったり。
みなさん喜んでもらっていってくれますね。
- ――
- ところで最近の盛永さんは
どういった作品をつくっているんですか?
- 盛永
- 少し大きいものが増えていて、
彫刻っぽいものが多いですかね。
スツールなどの家具もそうですが、
オブジェのようなものもつくっています。
- ――
- キャリアについて教えてください。
どんな経緯で木工作家になられたのか、
どこで石川さんと出会われたのか。
- 盛永
- 最初は家具をつくる工場で職人として働いていました。
そこから独立して「Crate」という工房を立ち上げたのですが、今年で19年目になります。
その働いていた家具工場が、石川さんが仲のよかった
「ランドスケーププロダクツ」の家具をつくる工場で、
そこで石川さんとは出会いました。
- ――
- そうだったんですね。
- 盛永
- 石川さんが来ていたのがたぶん20年くらい前で、
別に石川さんはそのときも何をしているわけでは
なかったんですけど、
仕事風景を眺めたり、
工場の横にテントを張ったりして、
お茶を淹れてくれたりしていました。
- ――
- えー。なんだかとっても石川さんっぽいですね。
- 盛永
- テント張ってましたからね。
僕は7年くらいその工場で働いて、
独立したときも最初は同じように家具をつくろうと
考えていたんですけど、
そういう仕事はなかなかなかったですし、
テーブルとか収納とか大きなものをつくっても、
運ぶのに人手がいるので、
それだったら、ひとりで手に抱えられるようなもので、
流通させやすいものをつくろうと考え直して、
木の器などをつくりはじめるようになったんです。
- ――
- それで、ウッドターニングをはじめるんですね。
- 盛永
- そうですね。
最初はまだウッドターニングの技術は持っていなかったので、
YouTubeでアメリカの人がつくっているものを見つけて、
その技法や道具を学びました。
- ――
- 完全独学ですね。
- 盛永
- だから、いまだに
間違っているやり方もあるかもですね(笑)。
独立してから2年後くらいに
ウッドターニングをやり出しました。
それからは、毎年毎年、
新しいものをつくれるようにチャレンジしています。
これまでいろいろなものをつくってきましたが、
結局自分ができることと、
お客さんが望んでくれるものが
いまも残っていっている感じですね。
- ――
- ちなみに、ウッドターニングでつくるものって
図面ってあるんですか?
- 盛永
- ないんですよね。
家具をつくっていたときはもちろんあったんですけど、
いまはミリ単位の世界からは解き放たれています。
つくりながら考えたくて。
アメリカの彫刻家、アルマ・アレンさんの工房で
修業させてもらったのも、その手法や思考といったところで
いい影響を受けました。
- ――
- 盛永さんの作品って、いい意味で土着感がありますよね。
美しくて、ピカピカなんだけど、ワイルドというか。
- 盛永
- 木が腐っていたり、穴が開いていたりしていますからね。
工房の近くに丸太が買えるところがあるのですが、
キレイな丸太は市場に出回るので、
僕はそうじゃないものを選んで、
それを材料として使っています。
半分は狙ってやっていますが、
全部使わないともったいないですしね。
スポルテッドウッドというのですが、
立ち枯れした木の内部に菌が入り込んで、
黒い筋状の模様や色の変化を生み出すんです。
自然が生み出す1点ものの芸術的な模様ですね。
- ――
- 今回はなんでメープル材を使ったのですか?
- 盛永
- 余っていたというのもあるのですが、
硬い木が好きなんですよね。
磨くとピカピカ、ツルツルになるので。
- ――
- この小さなサイズ感が
ほんとキッチンで使いやすそうで。
- 盛永
- 石川さんから聞いていたのは、
KIKIさんがキャンプで使っているということでしたので、
持ち運びも便利な小さいサイズだったんだと思います。
KIKIさんみたいにオピネルのナイフで調理したり、
これをそのままお皿にしたりとか。
- ――
- ちょっとしたものを切るときに使いたくなっちゃいますね。
食材を直にのせたりするので、
なんとなく気になったのですが、
使っていった際のお手入れ方法ってあるんですか?
- 盛永
- もうほとんど何もしなくていいと思いますが、
ツヤがなくなってきたらオリーブオイルを塗って、
から拭きしてあげるといいかなって思います。
- ――
- なんだか育っていく感じですね。
自分専用に育てる楽しみがありそうですね。
- 盛永
- そうですね。
ただ、僕がつくるものって、
用途を気にしたものがあまりなくて。
使う場面を意識してつくってはいないというか。
棚の上に置いてキレイなものとか、
器でもいままで見たこともないような変な形のものとか。
- ――
- そうしたら、今回のこのカッティングボードは
まな板という用途があるから、ちょっと珍しいですね。
- 盛永
- 珍しいと思います。
- ――
- ここに穴が開いているのは、
何かに掛けるときのものですか?
- 盛永
- 掛けてもいいと思いますし、
たぶん、指を入れると持ちやすいんでしょうね。
お皿として使う際も持ちやすい。
たぶん、というのも、これほんとKIKIさんが
持っていたものをそのままつくっていますから(笑)。
- ――
- とにかく、すべすべしていて、
触っているだけで気持ちいいですね。
- 盛永
- ものすごい研磨していますから。
最後に、5DWのロゴマークと、
内田洋一朗さんに製作してもらった自分の名前のロゴを
レーザー彫刻で入れさせてもらっています。
ほんとはなくてもいいかなって思っているんですけどね。
- ――
- いやいやいや、絶対入れてください。
2026-04-13-MON
(おわります)
