いい音は空気を洗う。
加藤晴之さんの紙筒スピーカー物語。

まいどまいど。
通天閣あかりです。

少しご無沙汰しておりました。
そうこうしているうちに
もうすぐ2002年が来ますやんか!
しかも私も、もうすぐ三十路やし!
20代最後のライフワークですから、
「加藤さんのスピーカー」の真実を
みなさんにお伝えしていく声にも
力が入るというものです。

今日は嬉しいメールが届いていたので
まずはご紹介です!

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こんばんは。
金魚を見ながら、仕事をしながら、いい音を聴いてます!
や〜っと「紙筒スピーカー」が届きました!
本文中に感じられた自信と確信が実感できました。
確かに今まで聴いていたCDの奥の奥まで聴こえています。
GONTITIの「Guitars」がもうすぐ終わりそうです。
次はHelen Merrill with Clifford Brownを
聴いてみようと思います。
そして本日のシメは矢野顕子さんにしましょうか。
頭は冴えてきたのですが、つい聴き入ってしまい、
仕事が進まないです。
本当にいいものを作って、
売り出してくれたと感謝してしまいます。
どうもありがとうございました。

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こちらこそありがとうございます!
届きましたか!
いつの間にか11月ですもんね。
こちらこそ喜んでいただいて嬉しいです。
これからもスピーカーから流れるいい音で
リズミカルにお仕事がはかどりますように。
家に帰るのが楽しみになりますように。

いよいよ、加藤さんとdarlingの話も
佳境を迎えてきました。
加藤さんが、あのスピーカーで
一番伝えたかったことは、これでした。

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♯15 加藤さんとdarlingが話す その3

・貿易港になりたい

糸井 ぼくが今、自分がやってることを
   人に説明するときに
   「まかないめし」って言って
   例えば、作家が原稿を書く、
   大勢に向って研ぎ澄まされた発言をする、
   っていうことの他に、
   それが終わってから
   楽屋で、「あれはね」って
   言葉はぞんざいなんだけども、
   それこそがほしかったっていう言葉を
   ポロポロっともらうときがあって、
   そういう言葉は商品になるメディアには
   なかなか載らないんですね。

   それを拾い集めて
   「まかないめし」っていう言い方で
   僕はメディアを埋めていこう
   っていう風に思ったんです。
   
   それは今の空気に合ってるらしくって
   みんなに喜んで食べていただいてるんですが
   そういうのと同じように
   流れとして毎日できることを大事にする、
   そんな気分の中で、このスピーカーも
   できていっていったんじゃないか
   という気がします。

加藤 そうですね。自分の心の中では。
   もうひとつは、蕎麦の仕事も
   相当ハードだったんですが
   あれを糸井さん「ケ」
   とおっしゃったんですけども、
   あれ実は正確にきちっと
   蕎麦を提供しようと思うと、
   「ケ」じゃないんですよ。
   どう考えても晴れなんですよ。
   
   「ケ」だと蕎麦の実をわって、
   炊いちゃえば、そのままごはんとして
   食べられるわけですよ。
   それを石臼で粉にしますよね、
   粉にして粉とお湯で
   そばがきができるんですよね。
   あれも「ケ」だと思うんです。
   だけどそれを蕎麦にして切って
   びしーっと切って
   茹で加減がアルデンテ、ってやりますと、
   相当これが「ハレ」になってきちゃうんです。

糸井 同じことを毎日やれるはずがない
   ってことですよね。

加藤 蕎麦の仕事を毎日やってて
   正直キツイなと思いました。(笑)

糸井 それはきっとおにぎりでも、
   スーパーおにぎりを
   毎日人に食べさせたいと思ったら、
   「ケ」ではないものになりますよね。
   だから誰でも再現可能ですよ
   っていう形式はとってるけど
   実は一つのことを
   本気で追及していくってことは
   そんなに長いことできるようなものでは
   ないでしょうね。
   
   スピーカーはひとつの仕組みを
   作ってしまったら、
   再現性が高いじゃないですか、
   それは蕎麦を打ってるときよりは
   自分の手じゃないところでも
   作れるっていう意味では
   少し肩の荷がおりるっていうか。

加藤 そうですね。
   そういう意味では
   僕じゃなくても同じ図面で
   同じ音ができてくるっていうのは
   ありますよね。

糸井 今までの道筋は大体わかったんですけど、
   加藤さんがスピーカーを作るにあたって、
   何が一番大事だと思ってるかが
   核になると思うんです。
   
加藤 ええ。

糸井 「加藤さんのスピーカー」って
   勝手に呼んでますけど
   加藤さんがこのスピーカーで
   おやりになっているのは
   何を作ることだったんですか、
   「音像」と言えばいいんですか。
   
加藤 あの、すごくそれは総合的なことなんですよ。
   これっていうことは
   なかなか言いにくいんですけども、
   まずパッと音が出た時に
   自分が俯瞰して音が聴ける状態、
   糸井さんが最初におっしゃったように、
   音が出たときに音を分析するんじゃなくて、
   音楽が「きて」ほしい。
   
   どんなミュージシャンでもいいんですけど、
   こいつはこれがやりたかったのか、
   こういうことが言いたかったのか
   っていうのが
   まず伝わってきてほしいんです。
   
   上を見ればきりがない。
   上を見るっていうのは、
   眼鏡をかけて虫眼鏡を使って
   っていう細かいところに
   コストをはらうっていうものだと
   思うんですが、
   そういったところは
   このスピーカーでは、あるところで
   とめちゃってます。

糸井 ああ!

加藤 それはある程度以上のことをすると、
   とたんにコストがかかってきますから、
   コストを度外視してやるってことは
   得手ではないっていうか
   心の中でやりたくない。
   大変だし、めんどくさい。
   そうじゃないところで
   やりたい人が何を言わんとしてる、
   何を伝えようとしているってことが
   分かる音を作りたいっていうのがありました。
   
糸井 つまり、音楽の主役である音楽家たちが
   人々に何を伝えたいかっていうのを、
   そのまま伝えられたら一番いいなっていう、
   そこに近づけるためには
   どうしたらいいかっていうのが
   加藤さんのコンセプトっていうことですか。

加藤 「そのまま」っていうと・・・
   ちょっと違うんですが、
   「そのまま」だと
   原音に忠実な音ってことになりますよね。

   CD1枚にしても
   バンドのボーカルがマイクに向って歌う
   その時のマイクの種類は何を使うかとか、
   ここのマイクからあちらにいく
   スピーカーのケーブルは何を使うとか、
   ミキサーはどこのメーカーを使ってるとか、
   間に色んな機器が入りますよね。
   それで当然、生音とは違った状態っていうのが
   そこで生まれますよね。
   さらに今度はミキサーの人が
   音づくりをしますよね。

糸井 味付けですよね。

加藤 そうです。味付けを。
   それでできあがってきたCDというのは、
   もはや原音ではないですよね。
   それを今度はCDを買って家で聴こうと、
   アンプでスピーカーでCDプレーヤーで
   ってまた違った機器が間に入って、
   情報操作というかまた色付けされますよね。
   色眼鏡が何枚か通るんですよね。
   そういうことがあっても、
   いや、勿論あるに違いないんだけど
   なんか聴いたことあるなとか思うんですよね。

糸井 はああ。

加藤 ほんとのストラティバリを
   数カ月前、至近距離で
   聴く機会がありまして
   千載一遇のチャンスなんで
   聴きに行ったんですが、
   いつもCDで聴いている音とは
   全然違いましたね。

糸井 ぜんぜん、ですか。

加藤 原音再生っていうのは
   至難だとぼくは思ってます。
   
糸井 しかも原音再生っていうのが
   近似値的に原音と
   ほとんど見分けがつかないよ、
   ってとこを追及しても
   それはある種の
   リアリズムの究極みたいなところで
   面白くはないですよね。

加藤 そうですね。
   
糸井 僕、なんでそんなこと言ったかっていうと、
   僕らがやってるメディア的な仕事って
   できるだけ自分の色をつけずに、
   その人なり、その商品なりを
   伝えたいわけですよね。
   で、その人っていうものが
   本当にそのまんまで人の前に表れたら、
   いいのかって言ったら、よくはないんですよ。
   
   ノイズの多いのが人間で、
   ノイズの一部分っていうのを
   敢えて聴かせることによって、
   その人が浮かびあがってきたり、
   その人のある部分っていうのを
   嘘をつかずに誇張するといいますか、
   笑顔がとってもいい人だったら、
   やっぱり笑い顔を見せてあげたいなとか、
   僕らのコミュニケーションの仕事としては
   やるわけですよね。
   
   だけどまんま出せちゃったときには、
   ぼくはもう、いらないといいますか
   僕でなくても、プロデュースできちゃったり、
   コミュニケーションの役割は
   果たせちゃったりするんだけど、
   そのかわり、あちこちが
   摩擦だらけになっちゃうんじゃないかと思う。
   
   それをいいところといいところを
   お互いが出せるように
   出会ってくれる場所に僕はいたい。
   貿易港にいたいんです。
   
   で、そのことで
   「あなたがいてくれたからだよ」
   って言われるんじゃなくて、
   忘れられちゃうのが一番いいわけですね。
   「糸井さんがいてくれたおかげで
   この人とこの人の出会いは
   とってもよかった」っていうのは、
   完成品としては弱い気がする。
   
   「糸井いたんだな、そう言えば」
   って言われたり
   コミュニケーションを仲立ちするのが
   この仕事の最高の形態だと思うんですね。
   で、しかもどこでもそれができればいいし、
   ぼくじゃない他の人が
   その役割をできたらもっといいし、
   みんながそのいいところを
   伸ばせるような形で出会っていくことが、
   世の中の循環をよくするみたいな、
   そういう役割を果たせたらなって
   思うんですけども、
   今のスピーカーの話聴いてたら思ったんですよ。
   まんまだからいいじゃないかっていうのは、
   あまりにも残酷ですよね。
   世界に対して。

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対談中、立ち上がって加藤さんの説明を聞くみなさん。

加藤さんがスピーカーで表現したかったことと
darlingが目指すコミュニケーションの形は
いみじくも同じ方を向いていたんですね。

音楽をあきらめていたはずのdarlingが
数あるスピーカーの中から
加藤さんのスピーカーに共感して
もう一度、音楽を聴き始めた謎が解けました。

私もがんばって、いつか港になりたいと、
ちょっと真面目に思ったのでした。

ほな。



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お問い合わせは、
0120-701-567(カタログハウス商品ご説明課)
お申し込みは、
0120-164-164(カタログハウス受注センター)
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2001-11-16-FRI


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